木枯らしに揺れるテツノオサラ《甲》
長月瓦礫
木枯らしに揺れるテツノオサラ
金属でできた河童ががしゃがしゃと音を立てながら、祭りが終わった通りを歩いている。この河童は電力の供給源である皿をたたき割られてしまい、非常に困っていた。
屋台の売り物だった河童は、祭りの後、皿を割った犯人を捜すべくあたりをさまよっていた。
「何だコイツ」
自分がどこにいるのか、河童は分からない。冷たい木枯らしを一身に受け、電源が切れるまで歩き続けるだけだ。
少年の足元にぶつかり、手足をじたばたして、その場に倒れる。
「ボクはテツノオサラだヨ」
「ただのおもちゃじゃん。何でこんなところに」
「テツノオサラ、テツノオサラ……」
「とりあえず、お祭りの人に見せればいいのかな」
少年は河童を持ち上げ、お祭りを仕切っている大人がいるテントへ向かった。
先ほど、祭りを終了する宣言を出し、それぞれ片づけを始めていた。
「すみません、なんか変なのが落ちてました」
おもちゃをテーブルの上にのせる。
仰向けになり、がしゃがしゃをせわしなく手足を動かす。
大人たちはそれぞれ怪訝そうな顔で見る。
「テーツノーオーサラー」
「……どこから拾ってきたんだ?」
「ボクはテツノオサラだヨ。オサラがワれて、チカラがデないヨ」
「お前、自分で割ってたじゃないか。
自分の皿は何よりも硬いって言ってさ。俺たちは止めたのに」
「何でそんなことしたんですか?」
「知らね。だって、テツノオサラだし。
うるさいから、電池抜いとくな」
叩き割られた皿は直されることなく、河童をひっくり返して背中を開けた。
ドライバーでふたを開け、単三電池を6本抜いた。
テツノオサラはぴたりを動きを止めた。
「もう遅いから気をつけて帰ってね」
「はーい」
少年は手を振って帰路についた。
テツノオサラは何の役にも立てず、ゴミ箱に捨てられた。
木枯らしに揺れるテツノオサラ《甲》 長月瓦礫 @debrisbottle00
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