第41話 NEXT STAGE

 帰り道、夜の食材を買って帰ろうとスーパーに寄った時、スヴェさんが突然言い始めた。


「恭一郎、そろそろ妾達の関係もNEXT STAGEに行くべきじゃと思う」


 なんかそこだけネイティブだから、本当に外国人留学生みたいだ。


「妾と恭一郎、いつも帰り道はtogetherしておるだろう?」


 一気に胡散臭くなったな。


「うん、まあ、そうだけど」

「で、思ったのじゃよ……そろそろ妾もcookingを学ぶべきではないか? と」

「……料理したいの?」

「うむ、やってみたい」


 うーん、目がキラキラしてるな。

 これは断るの難儀だぞ、たぶん。


「じゃあやってみよう、か」

「うむ!」

「まずは初心者向けの奴からにしよう」


 という訳で、スーパーのレトルトコーナーに。

 今日は村の会合でじーちゃんもいないし、簡単な物で良いだろう。

 

「ここが初心者向けコーナーだよ」

「ふむ」

「と言っても、めちゃくちゃ美味しいから。日本の企業の力、スヴェさんも感じるが良い!」

「フッフッフ、良かろう。妾が判定してやろう」


 誰でも美味いと言えばコレ、麻婆春雨だ。

 次にメーカーサイトをスマホでチェック。

 オススメレシピと共に、材料も分かるからね。

 よし、この野菜たっぷりレシピにしよう。

 野菜は……だいたいあるな。

 なら、豚バラだけ買えばオッケーだ。


 家につき、まずは米を精米。

 既に精米したものもあるが、時間に余裕がある時は精米し、洗い、水に浸しておく。

 という事で、精米が終わった米を用意。


「じゃあスヴェさん、米を洗おう」

「うむ」

「最初の水は入れて、すぐに捨てて」

「む、こうか?」

「オッケオッケ……あ、米粒落ちたから拾って」

「む、わざわざ拾うのか?」

「じーちゃんが一粒一粒、愛情を込めてるからね」

「ふっ、ならば拾わねばな」

「そしたらまた水入れて、軽くかき混ぜて捨てて」

「相分かった。おっとまた米が逃げようとしておるな、ハッハッハ、魔王からは逃げられんぞ!」


 平和な逃亡劇だな。


「じゃあ、水を捨てた状態で素早く米をかき混ぜて」

「いつも恭一郎がやっているのを見ておるからな! とりゃああああっ!」

「よし、水を何度か入れ替えて!」

「うむ!」

「綺麗になったら、また水を捨ててかき混ぜて!」

「とりゃああああ!」

「んで、また水を綺麗になるまで入れ替えて!」

「出来たぞ!」

「よし、じゃあこのザルに入れて水気を切ってから、また水を計って入れる」


 俺はいつも、ばーちゃんに習ったこの二回研ぎだ。


「じゃあ、次は一時間後ね」

「むむ、今作りたいのじゃが」

「水を含ませてからね」


◆◇◆◇◆◇◆


「恭一郎! もうよかろう!」

「うん、そろそろ良いかな」


 台所に戻り、準備できた米を土鍋に入れる。


「じゃあスヴェさん、火を点けて」

「これを捻るんじゃな?」


 カチカチ、ボッ!


「そしたら、強めの中火に……あ、俺がやるから火の大きさ覚えといて」


 米炊きの準備が終わり、次は麻婆春雨だ。


「じゃあこれ、包丁」

「ふふ、良い鋼を使っておるな」

「じゃあ豚肉と、キャベツを切ろう」

「おお、スパッと切れるな」


 意外? にもスヴェさんの手際は良かった。

 あとはレシピ通りの順番に炒め、水を入れ、水気を飛ばす。


 たったこれだけでぇー?


 麻婆春雨と炊き立てご飯の完成だ!

 配膳が終わり、あとは食べるだけだ。


「では、食すとしよう」


 スヴェさんが恐る恐る、麻婆春雨を口に運ぶ。


「う、美味い! 美味いぞ恭一郎!」

「フッフッフ、でしょ?」

「うむ、ツルンとした食感が野菜や肉と相まって、米が進む味じゃ。これ、妾が作ったのかぁ」


 スヴェさんは春雨、米の順番で次々口に運ぶ。

 心なしか何時もよりそのペースは早い。

 二人して、あっという間に完食した。


「フッフッフ、とうとう妾もNEXT STAGEへと昇ってしまったな」


 スヴェさんは美味しい食事以上の満足感を得たようだ。

 良かったね。


「では、次はあれじゃな」

「何?」

「もちろん……寿司じゃ!」

「それはまだだいぶ早い」


 

 

―――――――――――――

あとがき


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台風の夜に「田んぼが心配だから見に行く」と出掛けたじーちゃんが『魔王』と名乗る女の子を拾って来た~「食事なんて栄養を摂取するための手段に過ぎぬ」だそうです~ 長谷川凸蔵@『俺追』コミカライズ連載中 @Totsuzou

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