第7話
訓練場の中心でアスモデウスこと光明院飛鳥とメスオスガキこと十文字律が向かい合う。
彼らを囲うように生徒たちは興味深そうに彼らを見つめる。
アスモデウスの得物は杖で、メスオスガキは槍を気だるげに抱えている。
「ブラック先生、ご照覧あれ!」
アスモデウスは意気込みは十分なようで、杖をブンブン振り回している。
え? さすがにまさか杖でぶん殴ったりしないよね?
「さっさと始めようよ~」
対照的にメスオスガキはこの待ち時間がだるいのか、さっさと試合の開始を所望しているようだ。
全く……なんでこんなことになったのかと思うが、まぁ仕方ない。
「盟約は危ないと判断すれば我輩が止める。ただそれだけだ」
二人はルールを理解したのか頷き、武器を構える。
「それでは始めるが良い」
開始の合図と共に、先手を取ったのアスモデウスだった。
スロウを掛けようと詠唱と共に後ろへ下がる。接近戦相手に距離を取るのは正しい判断だ。
だが放たれた魔法は、メスオスガキの華麗なステップにより躱される。
「この程度なのかな?」
余裕そうにどこか揶揄うようにメスオスガキは笑う。
「くっ……この!」
アスモデウスはなんとか当てようと魔法を放つが、ダンスを踊るようにメスオスガキはそれらをことごとく避ける。
流石に何度も連発して魔力が尽きたのか攻撃の手は止まり、アスモデウスは肩で息をする。
「ダンスも飽きちゃったし、もういいや」
メスオスガキは一度も使用していなかった槍を構えると、それを勢いよく……投げた。
「え?」
槍使いが槍を投げるとは思っていなかったのだろう。アスモデウスは目を開き驚愕する。驚きのあまり硬直しており、その槍はまっすぐアスモデウスの胸を目掛けて突き進む。
バシッ
そのまま胸に突き刺さるかと思った槍を俺は間に割って入り掴んで止めた。
槍を掴んだままメスオスガキに目線を向ける。
「……危ないと思うが?」
俺が止めに入らなかったら、このまま突き刺さっていたように思える。
だが、メスオスガキは余裕の表情を見せて、何かつぶやいたかと思うと俺が掴んでいた槍が光とともに消え、メスオスガキの左手に光と共に槍が現れる。
「便利な能力だな。そして、結構訓練を積んでいるようだな」
メスオスガキは勝ち誇ったように笑みを浮かべる。
「まぁ両親がA級攻略者だからね~」
なるほど。スキルの使い方や身のこなしも入学したての素人とは思えなかった。事前に訓練を積んでいたという事か。道理で余裕なわけだ。
「申し訳ありません……ブラック先生」
後ろ振り返れば、床に座り込んだアスモデウスが涙を浮かべていた。
まぁ仕方ないさ。実際あの若さにしては相当なもんだし、この前スキルの使い方を覚えたばかりのアスモデウスには荷が重い相手だ。
「相手が強かったそれだけのことだ。気にするな……そして」
俺はメスオスガキに向き直る。
「本当は我輩との模擬戦を望んでいるのだろう?」
第一声も俺の強さを確認するために揶揄っているようなものだったしな。
「わかる~? ぜひ、ご指導をお願いしたいな~?」
一つ溜息が漏れ出る。まぁ……調子に乗るだけの実力があるのは認めるさ。
「……いいだろう。我輩に挑戦することを認めよう」
だが、その実力も年代の中で優れているというだけだ。
「ワカラセてやろう。かかってくるが良い」
ダンジョン攻略者学校の仮面教師 灰紡流 @highvall
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ダンジョン攻略者学校の仮面教師の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます