第7話 消失

 ある朝起きるとリラリルが消失していた。両親に聞いても「誰それ」と返事が返ってきた。


 勿論、それはクラス内でも同じことであった。担任も生徒、幼馴染の由紀美さえ知らないと言う。


 私だけがリラリルの事を覚えているのだ。大混乱の中で私は電車に乗り海を目指した。


 人魚姫の様に泡と消えたか。それとも地獄に落ちたか。


 ただ海が見たくなった。


 そして、海に着くと誰も居なかった。一時間ほどボッーと、眺めていた。いつまでもここに居ても仕方ない。私は駅に向かい帰路に着く。


 不意にズボンのポケットの中にリラリルがはめていた指輪を見つける。


 何故、こんな所に……。


 死して遺品を残したのか?


 私は指輪を大事に持ち自宅の神社の境内に着く。


 すると……。


 御神木に雷が落ちる。リラリルか!?


 私は御神木に近づくと。やはり、リラリルであった。


「何故、突然消えて、戻ってきた?」

「あ、資格試験の為に天界に行ってきた」


はい?


「理由は簡単、僕は天使見習でクビになっただろ、そこで資格が有ればこの世界でも、神術が使えるのだよ」


 ほー自分の昼行灯さがわかったか。


「それで、その神術はどのようなモノか?」


 私の問にリラリルはグーを握り苦しそうにしている。これは凄そうだぞ。


 リラリルはグーを私の手に近づけると……。


『ポン』


一凛の花が咲き。私の手の花から国旗が飛び出してスルスルと伸びていく。


 カ◯オストロの名シーンだろ。


「僕に出来ることはこれくらい……」

「これで終わりか?」

「贅沢だな、姫様と心が通う神術だ」


 国旗が出るだけの神術か……期待した私がアホであった。


「ところで、この指輪はお前のか?」


 私はポケットから指輪を取り出す。


「ぽ!それは運命の人に授けられる指輪……三崎好きだ!」


 はい?


 ヤンデレがデレたで良いのか?


「ゴロニャン、頭をポンポンして……」


 イヤ、しかし、決め台詞が『正当防衛だ!ナイフで突き刺すぞ!』のリラリルだ。

ここはナイフと交換で行こう。


「指輪をはめてやるから、ナイフを渡せ」

「はい、御主人様」


 あああ!!!、性格が変わっている。そうか、国旗の出る神術を使った、その関係かもしれない。


 流石、カ◯オストロの名シーンだ、それなりの御加護が有るのだな。


「藁人形で三崎を呪うのも止めるから、頭をポンポンして……」


 ま、ヤンデレだしな。私は諦めた気持ちで、渋々、リラリルの頭をポンポンする。


「あぁ!快感~!ささ、指輪を僕の指に……」


 イヤ、マテ、まだ、戻れる。このまま、指輪をはめたら何が終わる気がする。


 リラリルは確かに可愛いしヤンデレが治るなら結婚しても……。


「三崎ちゃん、その女から離れて!」


 私が悩んでいると由紀美が現れる。これは絶対、リラリルを浄化しに来たに違いない。


「えーい、この邪魔者め!」


 リラリルは美由紀に近づき、グーで苦しそうになる。


『ポン』


 由紀美の手に一凛の花が咲き国旗がスルスル。ホントにそれだけの神術かと呆れるのであった。


「三崎ちゃん!好きよ!」


 あが……由紀美がデレた。


 頬を赤くしている美由紀はそわそわとしていて、私にベタ惚れの雰囲気であった。


 これが伝説のモテ期か……仕方ない、二人共、私のむねにダイブするといい。


『どっちか決めて!』と二人の左ストレートが私の腹にクリティカルヒットする。


 我が人生に悔い無し、と意識が消えて行く。


『完』

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天使をクビになって天上界から追放された少女を拾ったらヤンデレだった。 霜花 桔梗 @myosotis2

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