第3話 上野界隅より 3
自分の幼いころから実母に育てて
もらえなかったことが起因しているものか、
上野公園や地下道やガードしたなどに
散在している母子の連れをみると、
何故か惹かれるものがあって、
食料や食券やパンの耳など配り歩いたものである。
そんな仕種(しぐて)に
同調してくれる女の子2人いて、
それぞれが自分のこと以上に
今で言うボランティア・サービスの活動を
していたのかもしれない。
◇
上野の闇市には、
食べ物の種類は多くはないが、
白米(銀しゃり)、麦飯(麦(ばく)しゃり)、うどん(長しゃり)
があって、いつも、この銀しゃりが食べられたのは
やくざの世界に、子どもではあるが、
仮に籍を置いたからであろう。
◇
高架下(ガード下)は、
死人の山になることがしばしばで、
故人になると着ているものは、
すべて剥ぎ取られて裸で積まれている。
そこにいる人たちは、
誰もが恐しいとは思わないだけの
悲惨な目にあっているので驚かないのである。
◇
上野駅は、今でも、
故郷へ向かう東京の玄関であるが、
東北人にとっての上野は、
東京で働くための出発点でもあり
盆や正月に故郷へ帰る北帰行の基点でもある。
列車が到着すると、
「上野・上野・・・・」
のコールに東北人の心を奮い立たせたる響きがあり、
この東京で、頑張ろうという決意する場所でもある。
後に集団就職の青少年少女が
素朴な世界から、希望のへ
ただし誘惑の雑踏する場所へ
乗り込んで来ている。
これからの若人によって
日本は復帰したと思うから
上野駅のドラマを語らずに、
東京の戦後を
語ることはできないと言っても過言ではない。
祖父物語、遺したもの みき爺 @mamoru0816
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