第3話 上野界隅より 3

自分の幼いころから実母に育てて


もらえなかったことが起因しているものか、




上野公園や地下道やガードしたなどに

散在している母子の連れをみると、

何故か惹かれるものがあって、




食料や食券やパンの耳など配り歩いたものである。




そんな仕種(しぐて)に

同調してくれる女の子2人いて、




それぞれが自分のこと以上に

今で言うボランティア・サービスの活動を

していたのかもしれない。







上野の闇市には、


食べ物の種類は多くはないが、




白米(銀しゃり)、麦飯(麦(ばく)しゃり)、うどん(長しゃり)




があって、いつも、この銀しゃりが食べられたのは




やくざの世界に、子どもではあるが、

仮に籍を置いたからであろう。









高架下(ガード下)は、

死人の山になることがしばしばで、

故人になると着ているものは、

すべて剥ぎ取られて裸で積まれている。




そこにいる人たちは、




誰もが恐しいとは思わないだけの




悲惨な目にあっているので驚かないのである。







上野駅は、今でも、

故郷へ向かう東京の玄関であるが、




東北人にとっての上野は、




東京で働くための出発点でもあり

盆や正月に故郷へ帰る北帰行の基点でもある。




列車が到着すると、




「上野・上野・・・・」




のコールに東北人の心を奮い立たせたる響きがあり、

この東京で、頑張ろうという決意する場所でもある。




後に集団就職の青少年少女が




素朴な世界から、希望のへ

ただし誘惑の雑踏する場所へ




乗り込んで来ている。




これからの若人によって

日本は復帰したと思うから






上野駅のドラマを語らずに、


東京の戦後を


語ることはできないと言っても過言ではない。

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祖父物語、遺したもの  みき爺 @mamoru0816

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