押収した手記Aの1

青山喜太

反乱の兆候あり粛清済み

 白がくる、俺の青を汚す、あの白が。

 いつの頃だろうか、あの青に救われたのは。

 いつの頃だろうか、あの青が見えなくなったのは。


 昔、俺は青の下にいた。見上げればいつもそこにあり、青は俺を受け止めてくれていた。


 だがある日、俺は気がついた。

 青が白く汚れていくのを。


 あの美しかった青がどんどんと白く塗り替えられていった。


 俺は困惑した、それは俺の同胞がやったことだったからだ。


 やがて塗りつぶされた青は白い粉を降らせるようになった。


 それは名前のない冷たくそして、醜いものだった。


 同胞が言った。


「これで皆んな平等だ!」


 何を言っているかわからなかった、俺の青はどこに行ったのだ。

 あの美しい青は。


 何かがおかしかった。


 やがて同胞は冷たい粉を防ぐものを配り始めた。


 カサなどというらしい。

 このカサを上に向かって広げれば白い粉を防げるのだという。


 同胞は俺のそばにもやってきた。


「君も持つといい、この傘はこれから始まる平等なる世界の象徴となるのだから」


 俺は聞いた。


「……あの青を塗りつぶして、どんな平等が果たされたというのだ?」


 すると同胞は笑って告げる。


「わからないか?」


「何?」


「これで皆んな平等に不幸になったじゃないか」

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押収した手記Aの1 青山喜太 @kakuuu67191718898

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