ほろ酔いで行きましょ。

ワタリ

第1話 初めてはほろ酔いで

小山 未奈子は、というものが、いた事がない。ただ、全くモテない訳でもない。ただ、自分が嫌いだった。

「未奈子なんであの人断ったの?」

「まだ、無理なの」

「……そっか」

 未奈子は、今年で25歳になる。そして、今の未奈子は世間一般でいうニートというものに当てはまっている。ただ、彼女の場合、楽をしたい訳ではない。

体は元気だが、心がついて来ないのだ。心の不調は、数値で表現するのは難しい。だから本人も心の不調を認められなかった。

自分を堕落した人間と罵る日々。そんな醜い私が好き?とても信じられなかった。

 一刻も早く自立したい未奈子は、リハビリのため、出掛ける事にした。人に慣れるため最寄り駅の周りをぷらぷら歩いていた。すると、突然声をかけられた。

「小山!久しぶり!」

同級生の男子だった。

「久しぶり!」

「どう!?俺のスーツ姿イケてるだろ!」

少し子供じみた笑顔を浮かべる。

「かっこいいね」続けて言葉を紡ごうと口を開けた。しかし出てきたのは、「うっんんゔぁああ」堪えたくておかしくなった、泣き声だった。

「やっぱしな!なんか溜め込んでたろ!

顔ブサイクだったぞ!」イタズラな笑顔で言ってくる。そんな顔を見ていたら、いつの間にか全て話していた。

彼は、未奈子の知らない、魅力をたくさん教えてくれた。そして、自分の魅力に酔えばいいと言う。だけど、酔いつぶれるのも不安だし、これからは、で。

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