第7話 自由に生きろ
「んがっ。」嫌な臭いで目が覚めたプロパ。
ドアを開けて外に出ようとすると、先にトシュガがドアを開けて、室内には入らず話し始めた。「プロパ!急いで逃げろ!!」「どうしたの...その顔....!」
液体のかかった部分から「ジューーー」と言う音が鳴っていて、トシュガは苦しそうな顔をしている。「小さな、ゲッコイとかいう獣人が、変な物を置いていきやがった。一滴でも触れれば体全体を溶かすものらしい。」
「そんな....!トシュガ、助からないの...?」プロパは絶望する。「恐らくな....。壺からは液体が溢れてきている。何が起きるかわからんが、とにかく避難しろ!お前は足が誰よりも速い。あの方向にある、ルムラという村に行き、ギルドに救援を要請してくれ!」トシュガは村の方向に指を指す。
「トシュガ!一緒に行こう!1人くらいなら、私背負えるよ!」プロパは泣きながらトシュガを助けようと策を伝える。
「無理だ!この液体は触れた物を溶かし尽くすまで止まらない!お前に少しでも当たってしまったら、お前まで苦しませてしまう!!」
「うぅ....。」俯くプロパに、トシュガは最期の言葉を伝える。
「いいか。生きていれば誰だって辛い時が来る。そん時は逃げてもいいんだ。お前はお前らしく、自由に生きろ!さぁ、行け!!!」
「うん...!」プロパは玄関から飛び出して、先ほどトシュガの差した方向に一心不乱に走る。少し後ろを振り返ると、先ほどの液体で出来た、ツボノ村を覆うほど巨大で、広い液体の中から男の上半身だけを出したような、巨大な怪物の姿がそこにあった。
ツボノ村では、液体で溶かされた者が骨と服だけを残して次々に死亡していった。
逃げようとした村人たちは足元に流れてきた液体で足を溶かされ、転倒し全身が液に浸かり溶かされていった者、厚着をしていたが、怪物の指から放たれたウォーターカッターにより鎧を切断、ないしそのまま肉体が切断された者などで地獄絵図であった。
トシュガの衣服を着た骸骨は、プロパ達の住んでいた家で、煙草に火をつけた状態で居間に座っていた。
「ドンドン!」「すみません!誰か居ませんか!!」ギルド協会ルムラ村支部の役所に到着したプロパはドアを叩く。
「ギィーー」ドアが開き、昨日サオルとリロエも出会ったオスミの母親が出る。
かくかくしかじか...事情を聞いたオスミの母、タングさんは、本部に連絡。また、たまたま集まった冒険者達で一度調査のため様子を見に行く事になった。
ツボノ村の辺りで冒険者達が目撃した物は、広範囲が焼き払われた森と、何かが蒸発したのか大量の煙が上がっていた奇妙な光景だった。
どうやら怪物は短時間でもそれなりの距離を移動していたようで、村から離れ無差別に魔獣を溶かしていた所を、何者かによって超高火力の火炎を浴びせられ、既に撃破されたようだった。
村人達の遺骨は、村の地面に埋葬させられた。
「........................。」
プロパの語彙力でもその凄惨さの前に絶句してしまったサオルとリロエ。プロパは話を続ける。「会いたかったよ...!トシュガ....!!」プロパはサオルを強く抱きしめる。
「.....ん?」プロパは鼻でクンクンと匂いを嗅ぐ。「お前〜〜、誰だーーー!!!」プロパは前にいる人物がトシュガではない別人だと気づいて、サオルをフルパワーのグーで殴り飛ばす!!
「ゴンッ!!」「ぐあぁ!」木にぶつかり気絶するサオル。見えないように木陰に倒れたが、プロパは追い討ちを掛けるために近づいてくる。「許さない〜!!喰らえ!」プロパが木陰を見ると、そこにサオルの姿はなかった。
「どこ行った!?」プロパは辺りを捜索する。暫く捜索したが、この近くには居ないと判断し、離れた場所を捜索し始めた。
「大丈夫だった?サオル?」リロエは何もない所に話しかけている。実は、リロエはプロパがチャームにかかって呆けている時に、指輪を取り返していたのだ。
「まさか、サオルの指輪を盗んだこの娘がこんなに悲しい過去を背負っているなんて....。サオルの浮気性を失くす特訓相手としてだけど、いろんなスキルでイタズラしちゃったの申し訳ないな...。」
「というか、子犬から少女の姿になって、それから最低でも5年は経っているとしても、見た目よりもしかしたら若い...!?見た目はグラマーな大人の姿なのに、精神年齢は8歳とか...サオルに騙されて変な事されないか心配だわ!?」
リロエはサオルと話す時は余裕そうにしているが、しかしその実、正義感の強い心配性である。それをサオルに知られて弱みを握られたり、いじられたくないため隠しているだけなのだ。
ひどい世界を終わらせて! 好塚 つぞ @Tsuzoo07
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