第6話 トシュガ
ある日の夜、既に成長してはいるが、まだビキニアーマーを着れはしないプロパは、今日も畑仕事や伐採で疲れており、熟睡していた。トシュガは外で煙草で一服している。
すると、森の中から1人の男がゆっくりと歩いてきた。首にマフラーを巻いていて、帽子を深く被っていたため目は見えづらかったが、普通の村人のような見た目をしていた。右手にはカラフルな壺を抱えている。
「すみません。このあたりに獣人の方がおられるとお聞きしたのですが、ご存知ありませんか?」男は丁寧な口調でトシュガに質問する。
「さぁな。居たらどうする?」トシュガは様子見のためにプロパの存在をぼかす。
「いえ、私は獣人が大好きなのですよ。彼もとい彼女らは特別な存在だ。居られたら是非とも話をしたい!」
男はどうしてもプロパと会いたいようだ。
「そうか。俺からも一ついいか?お前、なんか動きが遅いが、毒でも食ったか?」男は足も遅く、身振り手振りもゆっくりなためかどこか不自然で、まるでモーションが数パターンしかないようだった。
「そんな。変な食べ物は食べていないのですが....。」「そうか、なら良いが。解毒薬は一応渡してやる。」トシュガは男の胸のあたりに、常備している解毒薬をポーチから出して投げた。
「あっと....。」男は解毒薬を胸の辺りで掴み、右手で下のポケットにしまおうとしたが、マフラーが右手に巻き込まれていたため、マフラーが解けてしまう。
首元には抉れたような穴が、胸の辺りまで続くようになっているのが見えた。それが目に入り驚くが、駆け寄って治療しようとするトシュガ。「ちょっ!やめてください!!」男は抵抗したが、トシュガは上着を破く。
露わになった男の胸元にはなんと、スーツを着た小人がいた。やけにダンディで皮膚は赤い。男の胸骨の辺りをくり抜き、そこに座っている。「ふぅ....バレたか....。やはり急拵えの体では厳しいか....。」
男はバレたにも関わらず余裕の表情。
驚くトシュガ。すぐに他の村人に伝えようと、振り返って逃げようとするも、体が動かない。小人が言う。「私はキラーヤモリの獣人、ゲッコイ。指先から出ている無数の糸で、あなたの動きは封じさせていただきました。」
「私は、私と同じく獣人になった魔獣の方を探しているのですよ。もし、人間に拒絶されていたとしても、帰れる場所を作ってあげたい。魔王軍と言う場所をね。」
「魔王軍だと...ふざけた事を言いやがって!」「おだまり。」ゲッコイはトシュガを縛る糸をギュッと張り詰める。
「くっ....!」全身の至る所に切り傷がつくトシュガ。「もしこの村に獣人さんが居てもいなくても構いません。今から滅ぼしますが。」
「な、なぜ....!」トシュガは痛みに耐えながら聞く。
「獣人さんが居た場合、あなたたち友人は邪魔な存在です。そのため、後腐れがないよう、私が抹殺しておきます。居なかった場合ですが、あなた達人間は数が多いので多少減っても誤差でしょう。」
「...。」ゲッコイの狂った思想に息を呑む。
すると、男の持っていた壺が浮遊してトシュガの前に来る。
「その中にはこの村、果てはこの森全体の生物を殺す事が出来る毒を持つ魔物が封印されています。開けた者は即座に魔物の毒を食らってしまうため生還は出来ません。私は開きたくないので、あなたが開けてください。」
「か、体が....。」トシュガの腕は勝手に動き、壺を開けようとする、反対向きに動かそうと力を入れると、糸が食い込み血が流れる。
左手で壺を押さえ、右手で蓋を開けたトシュガ。「ぼわ〜〜〜〜ん!!!」中から煙と小さなスライムのようなものが出たが、それは次第で大きくなっていく。
「それでは、私はここで、精々最後の時を楽しんでください。それでは。」男はそう言い、森の方面に手を伸ばし、驚いて飛び立った鳥の足に糸を巻きつけ、それを縮める形で空に逃げていった。
開いた際に跳ねたスライムの一部がトシュガの顔に付着したが、それは徐々に大きくなっていった。「プロパ!みんな!逃げろ!!」トシュガは金属の物を叩きながらみんなを起こす。
これは悪夢の始まりに過ぎなかった........。
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