第5話 獣人、プロパについて

プロパは未だに虚空を見つめているまま。

そのプロパを見てサオルは「早く治してやれよ。」と急かす。


「んんっ。」咳払いしたリロエは口に手を当てて何かを話した。「また余計な事を!」とサオルは止めさせる為咄嗟に走り、手をかけようとするもすり抜ける。


リロエが手を元を口から離すなり、プロパはその場に倒れてしまった。「何やってんだオマエ!プロパ、無事か!?」かけよるサオル。


目を覚ましたプロパは黙ったままサオルに抱きついてきた。「ん°」背中の肌面積の多さと胸の大きさに驚き声にならない声を出すサオル。


顔を上げたプロパは目をとろんとさせた恍惚の表情でサオルの目を見つめている。

「あ、あの....。」戸惑い身じろぐサオルにプロパは体を寄せる。「や、やめ....。」童貞が死んでしまいそうなシチュエーションである。


プロパは目にぶわっと涙を浮かべて、サオルに抱きついた。「うわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!」泣き叫ぶプロパ。


以下漫画、アニメ的回想シーン。


親と子、3匹の、金色の体毛を待つ犬が森の中を歩いている。しかし、親犬2匹が突然止まり、子を守るように前に出た。すると木陰から巨大で三つ目の熊が飛び出し、不意打ちの一撃で父犬が大きく吹き飛ばされ、動かなくなった!


「ガルルルル!」母犬は逃げていく子犬を守るために、熊に立ちはだかり、熊が父犬を咥えたタイミングで左手に噛み付いた。


子犬はその後の事は見ていないため、母犬の安否は不明である。


大雨が降りだした。子犬は森の中を1人で彷徨っている。しかし、高い所に微かに光があるのを目撃する。近づくと、光は見張り台の上にあるランプから出ていた物だった。


それは森の中にいる人たちに伝えるための目印なのだろう。森の方向から何人かの作業中と思われる村人が出て来た。


すると、後ろから人が歩いてきて、子犬の横でその大きな足を止めた。「ガルル...!」警戒する子犬に向かってその人物は、「お前も寒かっただろう。さぁ、おいで。」としゃがんで両手を伸ばした。大柄で厳つい顔をした30歳ほどに見える男だった。


子犬は家の中で男と共にシャワーを浴びて洗われ、次の日、晴れたので森に帰される事になった。「すまんな。村のみんな、魔獣に怯えてるようなんだ。本当に、すまない。」


一度森に帰された子犬は、その後も度々村に来ては、果物や植物を届けたり、他の魔獣を威嚇して追い払ったりしていた。


初めて村に来てから7日ほどが経った頃、深夜、草むらで寝ていた子犬の近くに大きな影が迫る。「ガアアァァァァァァ!!!」それは両親を襲った熊であった。「ワン!ワン!!」吠えながら必死に逃げる子犬。熊は逆恨みと言わんばかりに、子犬を追い続ける。


しかし、子犬に体力の限界が来てしまう。「ワン!ワン!!ワン!!!」最後の足掻きとばかりに吠えるが、そこに熊が迫る!今にも噛まれるといったタイミングで...!


「ビュン!」何処からともなく矢が熊の首に突き刺さる!

その後3発追加でくらい、弱る熊、おそらく毒が塗られていたのだろう。熊の前に、7日前に子犬を助けた男が立ちはだかる。右手には剣が握られていた。


「ガアアァァァァ!!」襲いかかる熊の心臓を剣が貫いた。


剣を引き抜くと、熊が前に倒れる。「毒が入っているから食べられないな。しかし、一刻を争う状況だったから仕方ないか。」と独り言を呟き、村に帰っていった。


早朝。男の家のドアを何者かが叩く音が響く。「ふわ〜あ、なんだぁ?」寝起きで男がドアを開けると、そこには金髪犬耳の少女が植物で作った下着を履いて立っていた。


「お前、もしかしてあの子犬か...?」「うん!そうだよ!」少女は元気に返事をする。


「魔獣の中でも、特に賢い個体。そいつが人間に憧れを持つと獣人に変化する...そんな噂を聞いた事はあるが、実際に見るのは初めてだな..!」


「お嬢ちゃん、そんなに人間が気に入ったのかい?」「うん!わたし、あなたといっしょにいたい!」「ふっ、そうか。俺ら人間の暮らしは今までの暮らしと、けっこー違うが、大丈夫か?」「うん!わたしをまもってくれるのは、あなたしかいないから!」


「.....。そうか。なら、まずは服をなんとかしないとな!お隣のシンさんに聞いてみるか...。あぁ、そうだ。俺はトシュガ。お前、名前は?」「わたしのなまえは、ぷろぱ!!」


少女、プロパが村、ツボノ村で暮らし初めてから1年後、村に1人の男がやって来た。「木材を買いたい。道場の修復に使うんだ。」男は40歳ほどだが、白髪混じりの男性。詳しくは不明だが有名な冒険者らしい。


トシュガと話している隙に男の背負っているリュックからアイテムを奪うというイタズラをしようとしたが、すんでの所で男が振り向き、プロパのうなじに当たるギリギリに、手刀を止めた。


「こら。そんな事をしてると、将来碌な目に合わないぞ。」男は笑顔で話す。「何か欲しい物があれば別にあげるのに、後で見せてあげよう。」


トシュガや村人との会話を終わらせた冒険者の男性はとトシュガの家にあがり、リュックの中身を床の上に取り出していった。


素人目に見ても、美しい宝石、強そうな剣、質の良い装備品など、貴重なアイテムが並べられた。その中で、プロパはあるものを掴んだ。「これがいい!」「それは....。」トシュガは困惑する。なにせそれはビキニアーマーであったからだ。


「あぁ、これはドラゴンの皮で作った装備だね。余った生地で作った、と言って知り合いから貰ったものだ。絶対にサイズは合わないだろうが、それでもいいのかい?」


「うん!これがいい!」プロパは目を輝かせる。「ほ、ほんとにいいんですか?いただいても。」トシュガは冒険者に聞く。

「獣人は、露出の高い服を好むんだよ。懐かしいな。アイツもそうだったっけ。」


それから4年。プロパが獣人になってから5年が経過した頃。ある大事件がツボノ村を襲う事になる。

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