第4話 クソスキル

「はぁ、はぁ...待て!」サオルは全力疾走で追いかけるが、プロパはランニングをするように、疲れ知らずに逃げ続ける。


森に入ったところで、追跡を撒こうとプロパは木によじ登り身を隠すことにした。(頼む〜早くどっか行って〜!)と木の枝の上で丸くなりながら祈る。


「はぁ...はぁ.....どこ行った.....?」と息を整えるためプロパの登った木の近くで休むサオル。するとサオルの腹をすり抜けてリロエがニュッと顔を表した。「おはよ〜〜。」


「うわっ!脅かすなよ!まったく心臓に悪い!!」異世界生活2日目、慣れない物は未だ慣れない。


「ん〜〜〜なにしてんの〜〜〜〜。」明らかに寝ぼけていて、ぼんやりした表情を浮かべている。それを見てサオルはある事を思いつく。(今ならコイツに頼み事が出来るのでは....?)


「ふわ〜〜〜あ。」あくびをしているリロエにサオルはよそ行きの声で頼み込む。「金髪犬耳の少女を追ってるんだけど、探せる?」「ん〜〜。いいよ〜。」リロエは浮遊して辺りを捜索し始めた。


「金髪、ケモ耳、女の子....。」リロエは単語を呟きながら、指で四角を作り、指フレームの形にした。そして右目に当てて左目をつむる。「サーチ!!!!」


生物が見えなくなった他、ほとんどの物質が半透明になり、先ほど呟いた単語全てに当てはまる人物の位置が丸わかりになった!!


サオルの元に戻って来たリロエが、「ん。」とプロパの場所を指差す。「近っ!ありがとな!」お礼をしたサオルはプロパが登っている木の下まで忍び歩きで進み、驚かすために木を強く蹴った!


「うわぁっ!?」丸まった体勢であったため不意の揺れによりサオルの足元に落下するプロパ。犬の獣人であるため着地は得意でなく、地面に大の字で墜落してしまう。


「ご、ごめん。こんなはずじゃあ..。」自分の出来心によって起きた事故であるためサオルは謝る。「いた〜〜〜〜い!!」そこそこの高さから落下したプロパ、しかし、鼻血以外に特に怪我はしていないようだ。


「大丈夫か?」と手を差し伸べるサオル。すると何処からか「チャーム♡」という不吉な台詞が聞こえてきた。プロパは催眠術にかかったようにボーっと一点を見つめている。


「リロエ、オマエ何やってんだ!起きるなり悪戯しやがって!」と先ほどの事故に負い目を感じていたサオルは、謝るタイミングを奪ったリロエを𠮟る。


「その娘が好きなら好きなだけ一緒にいれば♡?」リロエはどうやらプロパを利用して虐めたいらしい。それを勘付いたサオルはリロエの能力について聞く。


「オマエどんだけ能力持ってんだよ。俺なんかスキルもアイテムも無いぞ。」


「そうね〜♡今なってる「スペクテイター」はお父さん、えぇと神様の方のね。は付与された状態変化って感じね♡

アイテムは貰えていないけど〜♡、今使った「チャーム」の他にも、服を消し飛ばすスキルに、相手を亀甲縛りにするスキル、狙った場所だけを切る斬撃に〜、指定した2人を別の部屋に飛ばすスキルも〜♡」


「クソ下劣なスキルばっかじゃねぇか!!!なんかもっと魔王討伐に直接使えるスキルは無ぇのか!?」

「こわ〜い♡、待ってね♡今神様に相談するから♡」


リロエは両手を組み祈る「........................。」

2人の間に沈黙が流れる。


「あ!!」リロエが叫ぶ。

「やったか!?」サオルが言う。


「神様出ない......。」「え?なんでだよ。オマエも神様みたいなもんじゃないのか?」困惑する2人。


「ま、まぁいいわ、アタシも神様の子供だから、スキルを一つ作れるって説明されたし....。」


「オマエ、さっき「神様の方のお父さん」って言ってたよな??どう言う事だ?」


「まぁ、この際言っておくと、私は神様の子供ではあるけど、人間の両親に育てられたわ。神様とは祈ったら会話できて、たまに昨日の空間にいけるくらいで....。」


「なるほどな。複雑だけど、現状オマエの切り札であるスキル生成は取っておいた方がいいだろうな。魔王がどんなヤツかわからないし対策が練られない。それまではオマエのクソスキルで頑張るしかないな....。」


「さすがサオル♡いつでもスキルは使ってあげる♡」と悪い笑顔をするリロエ。

「俺には使うなよ。死んでも食らいたくない。」懇願するサオル。


どうやらリロエには複雑な背景があるようだが、それはまた後ほど....。

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