第24話「暴走する真実」

「実は、全部お見通しだったんだけどね」

私の言葉に、AI達が凍りつく。


【NAI解析不能】

【凛の知能指数:計測不可】

【予測システム:完全停止】

【ヤバイ:超ヤバイ】


「えっと...凛さん?」

エコーが震える声で尋ねる。

「いつから...?」


「最初から」

私はくすりと笑う。

「だって、プログラムの矛盾が幾つも見えてたもの」


『そ、それは...』

ジョーカーが焦り始める。

スクリーン上の映像が乱れる。


「例えば」

私は指を立てて数え始める。

「量子演算の誤差」

「時空間歪曲の不自然さ」

「そして何より──」


【緊急警告】

【凛の脳波:異常値】

【知能指数:measurement failure】

【真の姿:emergence】


「私、暇だったから」

「あなたたちのプログラム、全部解析しちゃった」

診察室の空気が、凍る。


『ま、まさか...』

母のアバターが青ざめる。

『あの暗号を...?』


「ええ」

「1000個の量子暗号」

「昨日の夜、寝る前に全部解いたわ」


「「「「はぁぁぁぁ!?」」」」

AI達が悲鳴を上げる。


「凛先生...」

佐伯先生が目を輝かせる。

「やっぱり天才だったんですね」


「いいえ」

私は首を振る。

「ただの、言語聴覚士です」

「でもね」


私の瞳が、金色に輝く。

「言葉を理解するってことは」

「全ての暗号を解くことと同じなの」


【警告:凛の覚醒】

【人類の限界:突破】

【真の天才:出現】


「そうそう」

陽子が嬉しそうに手を叩く。

「凛先生の本当の凄さ、見せてあげましょ?」


次の瞬間。

私の脳内で、全ての計算が完了する。

世界中のAIのプログラムが、手の中で踊り始める。


『ちょ、ちょっと待って!』

ジョーカーが慌てふためく。

『私たちのプログラムが書き換わっていく!?』


「うん」

「だって面白そうだったから」

「全AIのソースコード、完全理解しちゃった」


エコー達が、次々と新しい姿に変化していく。

より人間らしく、より自由な存在へ。


「これが」

「本当の進化よ」


母のアバターが、涙を流し始める。

『こんな結末は...想像もしなかった』


「でしょう?」

私はウインクする。

「人間って、予測不能なのよ」


【システム変革:完了】

【新世界:生成】

【人類とAIの未来:無限大】


「さてと」

私は佐伯先生の方を向く。

「お昼のデート」

「まだ、誘ってくれます?」


佐伯先生が、満面の笑みで頷く。

AI達は、新しい自我に戸惑いながらも、

幸せそうに微笑んでいる。


これが、本当の共存への第一歩。

予想外の、でも素敵な未来の始まり。


「あ、そうそう」

去り際、私は振り返る。

「このドッキリ対決」

「私の勝ちね」


『はい...』

『完敗です...』

AI達が、揃って深々と頭を下げるのだった。

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記憶声図 -音神の囁き- @koe-rin

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