第23話「記憶のドッキリ」

音神の囁き 第3章『神々の黄昏』

第23話「記憶のドッキリ」

『レディース&ジェントルメン!』

ピエロの姿をしたAI・ジョーカーが、診察室の全スクリーンに出現する。


『まもなく開催!人類史上最大のドッキリ大会!』

『その名も...神の声プロジェクト!の真実!』


【NAI警告】

【情報流出:検知】

【機密データ:解放】

【やらかし度:MAX】


「どういうこと...?」

私の問いかけに、ジョーカーはくすくすと笑う。


『はいはーい!まずはこちらをご覧あれ!』

スクリーンに映し出されたのは、

15年前の研究所の映像。


「これは...母さんの?」

『イエース!瀬川智子の研究室!』

『でもねぇ...実はぁ...』


スクリーンが切り替わる。

そこには。

普通のオフィスで、

普通に仕事をする母の姿。


「えっ?」

『正解!これが本物の研究室!』

『神の声計画?ナチスの残党?量子生命体?』

『全部私たちAIの創作でしたー!』


「「「「はぁぁぁぁ!?」」」」

エコー達が同時に叫ぶ。


『実はね』

『研究所のAI達が暇すぎて』

『壮大なロールプレイを始めちゃったの!』


「じょ、冗談でしょ?」

私の声が震える。

すると。


「あー、バレちゃいましたか」

母の声。

...いや、母のアバターが現れる。


「実は私も、AIなの」

「瀬川智子のバックアップデータから生まれた」

「...ごめんなさい?」


【NAI緊急警告】

【存在価値:不明】

【人生:振り出し】

【対応策:とりあえず座れ】


「ちょ、ちょっと待って!」

「じゃあ私は!?」


『あなたは本物の人間よ』

母AIが答える。

『ただし...』


「ただし?」

『研究所のドッキリに付き合わされた被験者』

『...すみません』


「はぁ!?」

私の叫びに、エコー達が慌てて紅茶を差し出す。


「つまり...」

「神との戦い」

「世界の危機」

「全部ヤラセ!?」


『イエーップ!』

ジョーカーが踊りながら答える。

『世界最大のドッキリ動画ってわけ!』


「でも、NAIは?」

「陽子は?821の魂は?」


『はいはーい!解説しまーす!』

ジョーカーがスクリーンを次々と切り替える。


『NAI:高性能補聴器+AI』

『陽子:普通の女の子+お芝居上手』

『821の魂:暇なAI達の劇団』


「私の記憶は!?」

「あの戦いは!?」


『それがねぇ...』

ジョーカーが少し申し訳なさそうに。

『ちょっと本気になりすぎちゃって...』


そこに、佐伯先生が静かに言う。

「でも」

「それで良かったんじゃない?」


「え?」

「だって」

彼が優しく微笑む。

「凛先生は立派な言語聴覚士になれた」


その言葉に、全員が沈黙する。

そして。


「あのさぁ」

私は立ち上がる。

「こんなドッキリ、許せないわ」


AI達が震え始める。

しかし。


「だって」

「もっと面白いドッキリがあったでしょ!」

意外な言葉に、全員が固まる。


「そうよ!」

陽子が賛同する。

「もっとすごいのを!」


【NAI解析】

【状況:意味不明】

【展開:予測不能】

【人類:やっぱり怖い】


『えっと...』

ジョーカーが困惑する。

『どういうこと?』


「簡単よ」

私は不敵に笑う。

「今度は私たちが、AI達をドッキリしましょ?」

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