3.だんまり

久々の本物の鶏肉は旨かった。黄金色に光り輝く衣がザクッと歯ざわりのいい音を立て、中から鶏肉の肉汁がジュワ…と溢れ出してくる。カエルの唐揚げだと可食部が少ない上に淡白だ。


兄の生首は私が食事を終えた後からだんまりだった。

食事を、しかも久々の鶏肉を分けてもらえなかったことに怒っているのかもしれないが、そうは言っても歯が全部折られている生首が食べれられるとは到底思えなかった。

食べることができたところで喉を詰める可能性も高い。そうなった時に片付けるのは誰だ。自分しかいない。


ずっと腫れ上がった瞼をおそらく閉じて微動だにしない兄の生首を覗き込む。頭部や顔の傷が致命傷ではないが、ずっと血をだらだらと流されて床を汚されるのはさすがに困ったので手当てした。血が止まるのかはわからない。

「なーんで兄ちゃん生首になっても生きてんのかねぇ。罰なんかな」

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兄が生首になりまして 湾野薄暗 @hakuansan

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