2.食事

牢獄みたいなマンションに帰ると兄の生首がこちらを凝視していた。そりゃそうだ。私が持って帰ってきたものは食用カエルでもそこら辺を歩いている鳥でもない、正真正銘のニワトリの皮を取り除いて叩いて伸ばして揚げた大鶏排とパック詰めされた店の名物のその日ある適当な葉物野菜の炒飯だった。

部屋中に大鶏排に使った五香粉の香りと油の匂いが充満する。

問題は兄の生首は生首になってる時点でお察しだが、あらゆる暴力を受けて帰ってきたので顔は全体的に腫れ上がり、歯は全部折られていて口の中は血みどろだったし、口をゆすいでほしくて水を飲ませたら、口をゆすげはするが断面からぼたぼたと水が出てきて片付けが面倒だった。

顔面や首にタトゥーが入ってなかったら兄の生首とは思わずに外へ蹴り転がしただろう。

そんな感じなので兄の話している言葉は単語しかわからない。よく見たら舌も半分ないし。

熱いお茶を注ぎながら兄の生首を見ると口をパクパクしている。

何度が聞き返すと「食べたい」だけは分かったが消化器官が無いんだよな…と兄の顔を眺めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

兄が生首になりまして 湾野薄暗 @hakuansan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ