兄が生首になりまして

湾野薄暗

1.むかしばなし

格安の牢獄みたいなマンションの3階のベランダに兄の生首が投げ込まれた。

あちらは生首だから当然だが兄は死んだものと思っていて、ベランダに報復のように生首を投げ込んだんだろうが兄はどうも何の罪なのかこの世の理から外れて生首のまま話し始めた。

最初は遂に私もおかしくなったんだ…と思っていたが隣の神経質なクソジジイが兄の声にバンっ!と壁を叩いてきたので少なくとも兄の声は他人に聞こえているらしい。兄に声のトーンを落とすように言いながらジジイの玄関ドアの前にその日の気まぐれ炒めを置いた。今日は鶏を揚げたものに炒めたピーマンが入っている。そこら辺を歩いていた鳥と忘れていたしわしわのピーマンを地溝油で炒めたというクソみたいな代物。クソジジイは食べ物を置くと壁ドンしてこないので今日はこれで大丈夫だろう…。


ここ数日の回想をしてみる。昔話などではない。

現在進行系で兄の生首が家にある。

注文されている料理を作り終えてから検索欄に「喋る生首 廃棄方法」と検索がヒットしないようなワードを打ち込んだ。

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