第5話 刺客の再来
レイの部屋から戻り、自分のベッドに飛び込んだ。
「それにしても可愛かったなあ‥‥」
仰向けになり天井に向けてそう呟く。
昼間の格好も可愛いけど、夜も良い。
取り敢えず寝巻き取ってくるか。
ってあ‥‥‥れ力が入らない?それに急に眠く‥‥‥
——————————————————————————————————————
「いやぁぁぁー」
凄まじい悲鳴と共に目が覚める。
この声は先輩の声?
まさか‥‥‥
嫌な予感がして、飛び起き階段を掛け下りる。
無事で居てくれよ二人とも!
扉を開けると目の前には血だらけの先輩がいた。
「先輩!!大丈夫ですか?」
「私は良いからレイ様を‥‥‥」
そう言って指を指した方を見ると、そこには———あの女が居た。
「あら、久しぶりね。寂しかったわ」
「俺は会いたくはなかったな。」
「釣れないわね。せっかくプレゼントを用意してあげたのに。」
まさか‥‥‥
そこには血だらけで笑いながら座り込んでいるレイの姿があった。
「この前は失敗しちゃったけど今回はしっかりと壊してあげたわ。」
「レイ?おい、レイ!」
「もう無駄よ。一度壊れたらもう戻らないわ。」
何てことに‥‥‥
俺が、俺が守りきれなかったせいだ。
俺のせいで‥‥‥
「お前だけは殺す!」
「私は仕事以上のことをする気はないわ。ここでバイバイよ。」
そう言って暗闇の中に消えていった。
どうすれば‥‥‥
俺のスキルは今感じている痛みしか‥‥‥
「俺は何も出来ないのか?こんな時にも無力で、何も出来ない。」
その時突然、声が聞こえた。
『汝はその娘を助けたいか?』
なんだこの声‥‥‥いや、なんでもいい。
助けられるなら‥‥‥
「ああ。」
『お前のスキル
「ちょっと待て、お前は誰だ?何で俺を助ける?」
『お前ではないその娘のためだ。では、頼んだぞ。』
二倍の痛みだと?
そんなの貰ったら俺は———いや関係ねぇ、やるんだよ。
助けられるなら何でもしてやると、そう誓ったはずだ。
一呼吸置き、スキルを発動する。
「スキル発動、
唱え終わった瞬間、前回の比ではないほどの痛みに襲われる。
そして、目の前にカウントダウンが表示される。
100秒間
この痛みを100秒?
想像を絶する痛みにのたうち回りながら声にならない叫び声をあげる。
もう、いっそのこと楽になった方が———
痛みの中、舌を噛みきろうと口を開く。
口を閉じようとしたその瞬間、何処からか声が聞こえてきた。
「……ヤト!ハヤト!」
レイの声だ。
そうだ、俺にはレイがいる。
俺にはレイしかいないんだ。
守るんだろ?助けるんだろ?ここで挫けてどうする!
レイが俺を見つけてくれた。
捨てられた俺を、ひとりぼっちの俺を‥‥‥レイだけが。
「こんなとこでくたばって終わるかよ。」
5
4
3
2
1
0
数字が0になると共に痛みが消える。
目を開けると目の前にはレイがいた。
「ハヤト?大丈夫なの!?」
返事をする前に抱きしめられる。
「レ、レイ?」
「一体何があったの?」
「その前に一旦離して。」
そう言うと一気にレイの顔が赤くなる。
きっと夢中で抱きしめたんだろう。
また、言い訳を考える。
「いや、成長痛ってやつ?」
「それなら良かった。」
いや、信じるの早ッ。
ちょっとは疑えよ!
「実は寝た後の記憶がないの。」
その言葉を聞いてメイドが声を出そうとする。
俺は咄嗟に開きかけていた口を押さえる。
先輩が何を言おうとしたのかは分かっている。
だが、それはレイを傷つけてしまう。
「俺は先輩に手当てして貰うわ。お休み、レイ。」
「うん。お休みイオリ。」
そとに出た瞬間、先輩が怒り出す。
「なんで、嘘をついたの?あんなのあんまりじゃない。」
まあ、そうなるか。
これは俺のスキルについて話すしかないか。
「俺のスキルは痛覚請負、人の痛みを自分が感じることで無かったことに出来るんです。」
「なるほど‥‥‥でも、じゃあなんで嘘を吐くの?」
「俺がこの力を使っているとレイが知ったらきっと彼女は責任を感じちゃいます。」
「でもそれじゃあ貴方があまりにも報われない。」
「俺にはレイと先輩の笑顔で充分です。」
少し先輩の悲しそうな顔が見えた。
「ということで今後はこの事は口外無用でお願いします、先輩。」
「迷惑な後輩ね。分かったわ。」
俺は自分の決意が甘かったことに気づいた。
何が"レイを救う!"だ。
俺が救われてどうすんだよ!
先輩も傷つけて‥‥‥
「余計なこと考えていますね。」
隣から不意に声が聞こえた。
「ハヤト君はレイ様を救ったんです。その事実は私が知っています。ハヤト君は自分の事を犠牲にしてまで人を助けることが出来るとても優しい人です。」
「違うんです。俺はそんな立派な人間じゃないんです。レイを苦しめて‥‥‥」
「大丈夫です。貴方は凄い人です。私が保証します。あ、でも男の子なんですから泣いちゃダメですよ。」
え‥‥‥俺、泣いてる?
本当にダサいな俺‥‥‥
先輩の背中に向けて心の中で呟く。
ありがとうございます先輩。俺は自分の目標が定まった気がします。
俺はレイを助けたい。
レイのため何かじゃない。
俺は俺のためにレイを助ける!
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五話終わりました。
このまま投稿続けていきますので、引き続きよろしくお願いします。
痛覚請負人の異世界生活 @colt12
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