第4話 屋敷での生活
俺は今、レイの屋敷にいる。
さすがは皇子なだけあってかなり豪華な屋敷だ。
現実世界の姫路城くらいはある。
俺はこの屋敷では食客という扱いだ。
だが、仕事をしていないわけではない。
「ここでいいですか?」
「はい。ありがとうございます。」
最初は食客なのだから働かなくてもいいと言われたが、タダ飯を食うほど俺は図々しくない。
だから、頼み込んで今は雑用をしている。
休憩に入ったので、いつものように芝生の上に寝転がる。
ここが一番居心地が良いのだ。
美しい空、暖かい太陽、そして何より———
「お疲れ様イオリ」
「ありがとう」
こうして笑いかけタオルを渡してくれるレイを見ると安心する。
この日常がいつまでも続いてほしい。
「おし!休憩終わり」
起き上がり、屋敷の方へ足を向ける。
後ろを振り返ると頑張ってと言うように手を降っている。
いや、天使かよ。
もう少しのんびりしていたいという思いを噛み締めながらも午後の仕事をしていく。
掃除・洗濯・荷物運び等々、次々とこなしていく。
「次が最後の仕事ですよ。頑張ってください。」
こうして話しかけてきたのはこの屋敷のメイドであるアスラ———要するに俺の先輩である。
色々と仕事を教えてもらっている。
「先輩、最後は何をすれば良いんですか?」
「買い出しです。このメモに書いてあるものを買ってきてください。」
そう言って渡してきたメモは軽く5mくらいはありそうだ。
「これ———全部ですか?」
「ええ。当然でしょ。」
差も当たり前かのようにニコッと笑いかけてくる。
これ全部買ったら金貨30枚(30万円相当)くらいは軽く超えそうなんですけど。
「わかりました‥‥‥」
思い足取りで街へ向かい、材料を買い揃えていく。
そして、最後の買い物を終え、屋敷に帰ろうとしたその時、一つの雑貨屋が目に止まった。
この世界にも宝石とかあんだな。
レイに何かしら買って行くか。
「いらっしゃい。何が欲しいんだい?」
90過ぎの老婆がやっている店らしい。
今にも死にそうな声なんだけど。
「ある女の子に宝石を買いたくて、いいのないかな。」
「そりゃその娘も喜ぶわね。そうだねこれなんかどうだい?」
そう言って渡してきたのは紫色に輝く石だった。
「これは洞窟の奥深くで取れる石でね。どうだい、綺麗だろう。」
「確かに綺麗な石だな。よし、これくれ。」
すると奥の方から紙を取り出し、値段を書いて渡してきた。
き、金貨10枚⁉️
「これが本当の値段。だけど———恋をしている奴は応援したくなるもんさ。」
そう言って書き換える。
『銀貨20枚(2000円相当)』
「ありがとうばあちゃん。」
「いいってことよ。頑張るんだよ。」
いや、神だろ。
重かったはずの荷物が軽く感じた。
軽い足取りで家に帰って買い物袋を置き、レイの部屋をノックした。
「レイ、俺だ。入っていいか?」
「ハヤト?どうぞ。」
扉を開けると、寝巻き姿のレイの可愛さに目を見開く。
「いや、やっぱ天使みたいだな。」
「何?」
そういやこのネタ通じないんだっけ。
「あーいや、なんでもない。そうだレイ、実は今日街に行ってこんなものを見つけたんだ。」
「宝石?」
「そうそう。綺麗だろ。レイに買ってきたんだ。」
「———っありがとう。こんなの貰うのは生まれて初めて。」
喜んでくれて良かったわ。
これでそれ持ってるとか言われたらショックで一週間くらい寝込むわ。
「たまたま雑貨屋で見つけたんだ。てか、貰うの初めてなんだ?」
「ええ。ていうより、私と一緒にいると危険な目に合わせちゃうから、断っているの。」
彼女なりの気配りなのだろうが断られた側からすれば、かなりショックだろう。
これまで振られてきた男たち、同情するぜ。
「そういや、なんで俺はいいんだ?」
「———本来なら、あんな目に遭わせた上に助けるどころか助けられてしまった。これ以上危険な目に合わせたくないし、ここで離れて欲しいけど。」
「それでも離れないのが俺だ。女の子なんだしさもっと周りを頼ってくれよ。」
「そう言うと思った。これからもたくさん危険な目に合わせちゃうと思うけど、どうぞよろしくお願いします。」
俺はその時、心の底からこの娘を守りたいと思った。
こんなに優しく、誰かの気持ちに寄り添える。
でもそのせいで苦労を重ね、自分を傷つけてしまう。
『俺は君を守るよ』
俺はその時心に誓った。
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我ながらいい感じの作品になりそうです。
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