Dawn
凍てつく静寂の中で一筋の風が私の頬を撫でた。じっとしてると眠ってしまう。
澄んだ夜の闇が少しずつ溶けて新しい光が目を覚ます。その瞬間を眺めたくて。
青く染まる空の向こうに淡く滲んだ星の残り香。名残惜しくてずっと見つめた。
冷えた指先をそっとすり合わせた。まるで遥か空へと願う未来への祈りみたい。
翻すワンピースに冷たい夜露を纏う。しとりと濡れて、誘う眠りを振り払った。
眠る街は静かに息を吐き、凍えた枝葉が囁き始める。この静寂はほんの束の間。
何もかも全てが淡く輝く色に包まれていく。いびつな地平をなぞる光を眺めて。
ほのかに温もり宿す陽が、冷たい朝をそっと溶かした。さあ、もうすぐ時間だ。
淡い青空の向こうに待つのは今日という名の新たな物語。私は静かに歩き出す。
じっと静止したままの街を軽やかにすり抜ける。新品のスニーカーは心地いい。
ふわり、靄を掻き消すように髪が舞う。息を切らして向かうのは光差す方角だ。
伸ばした手の先に何があるのかわからないなら、行ってみればいいだけでしょ?
100㎞先の遥か地平の彼方に、この夜明けみたいに澄んだ未来があると信じて。
第16回空色杯【500文字以上/未満の部】 かみひとえ @paperone
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