第八話 転入生きたる
霜月さんを職員室に案内した俺は、霜月さんと別れた後、突然綾華とその友達に呼ばれ、カラオケに行くことになった。
「自己紹介からさせてくださいな。武藤愛理(むとうあいり)っていいます。」
綾華が連れてきた女子の方だ。
ふわふわとした口調で耳に残る。
次に隣の男子が口を開く。
「俺は本木力(もときちから)だ。よろしくな」
いかつい男だけど悪い奴ではなさそうみたいな雰囲気を感じる。
「文月楓だ。楓でいい。」
自己紹介を終え、綾華が本題に入る。
「ねえ、宵闇さんなんかあった?」
宵闇紗理奈。
「え?まだ元気ないか?」
「いや、逆だよ。すごく元気。」
「なら、良かったじゃないか。」
「いや、それだけじゃわざわざカラオケ来ないだろ。」
あまり深堀りされたくない話題だ。
「宵闇さん、急に個人ポイント増えたんだよね。」
他人のポイントの流れは確かに見れる。が、そんな人のを見るものなのか。
しくじったな。
ポイントを一気に宵闇に送るんじゃなかった。
勘のいい人なら、ちょうど退学者の狸のポイントが宵闇に入っていることに気づかれる。
当然、宵闇は疑われる。
それで宵闇が襲われたことなど、バレたら可哀想なんて一言では済ませられない。
ちょっとずつ送るべきだったな。
それから、俺と夜が宵闇からお礼でもらったポイント。そのポイントの動きも気づいたやつもいるかもしれない。
「なあ。それって。クラスで結構広まってるか?」
「いやあ、一部だ。でも、気づいてるやつは気づいてる。」
どうするか。このまま流して宵闇を放っといていいのだろうか。
しょうがない。ここはデマを流させてもらう。
「退学した奴いるだろ?青井狸」
「あ、やっぱ関係してる?」
「あいつが退学直前で、ポイントもったいないからってバスケ部に分けたんだ。俺と夜と、宵闇に。」
「確かに、楓もポイント増えてた。」
「狸は宵闇が好きだから、たぶん多めに送ったんだろうな。」
「そうなんだ。で、その退学した人はなんで退学したの?」
「それは知らないさ。」
「そっか。」
そういってこの話はなんとか終わった。危なかった。この後は世間話で盛り上がったり、カラオケをしたりした。本木と武藤ともも少し仲良くなり、連絡先を交換した。
「じゃあまた今度な。」
本木がそういって俺たちは解散した。
***
「もしもし。どしたの。」
「急にごめんな。宵闇。」
「うん。いいけど。」
「お前急に個人ポイント増えただろ?だから、少し疑われてるみたいだ。」
「あ~そっか。」
「俺、色々あって問い詰められたんだ。だから、狸が退学の時に俺と夜と宵闇にもったいないからってポイントをくれたっていう言い訳をしておいた。」
「なにそれ。」
少し笑いながら宵闇が言う。
「あんましバレない方がいいだろ。」
「うん。そうだね。ありがと。でもさ、私だけ多いの不自然じゃない?」
「ああ。それは、狸が好きだからお前に多く送ったってことにさせてもらった。すまん。」
「そか。じゃ、私も聞かれたらそう言うわ。」
「勝手にすまんな。いい言い訳が思いつかなかった。」
「いや、いいよ。ありがと。助けてくれて。」
「大したことはない。」
「楓にポイント全部あげよっか。私、ポイントなくてもAクラス残れそうだし。」
「いや、俺はいらない。あんまこれ以上変に渡さない方がいいだろう。それにポイントはあればあるだけいい。」
「楓。来年同じクラスなろーよ。だから、あげる。」
Aクラス。か。
「Cから一気に行くのもな。じゃあ、約束しよう。」
「え?」
「再来年、俺はAに行く。」
「再来年か~来年は?」
無理ではないが…再来年にさせてくれ。
「残り一年生も少ないんだ。さすがに無茶だ。」
「うん。じゃ、Aで待ってるね。私は落ちないようにしないと。」
「ああ。だからそのためにもポイントは持っとけ。」
***
冬休みが明けてから3日ほど経った。
この3日間特に何も無く平穏な日々を過ごしていた。
で、今日なのだが、休日。俺は遊びに話に誘われている。
相手は綾華に加え、本木、武藤と最近仲良くなった二人だ。
駅近のショッピングモール。
俺はその集合場所に到着する。
まだ、だれもいないか。
俺っていつも早く着くな。ちょっと遅らせようか。
「あれ、君が文月楓くん?」
「え、ああ」
知らない女子に話しかけられる。
ピンク髪でポニーテールの彼女。スタイルも顔も卓抜としている。
あ、いや、みたことあるかも。
「あれ、Bクラスの。」
Bクラスの知り合いは夜くらいだ。
「あ、そうそう。神月桜。です!」
「綾華たちの友達か?」
今日、確かに綾華たちは友達を連れてくると言っていた。
「そうそう。楓くんのことは少しだけ聞いてるよ。話したかったんだよね~早く来てよかった。」
「話したい?」
「うん。この前、綾華ちゃんたちに宵闇さんのこと、聞かれたでしょ?ポイントが急に増えてるって」
「ああ、あれか。」
「残念ながら、あんまり知らないぞ。」
「うんうん。教えなくていいよ。今、自分で考えてるから。」
「じゃあ、話したいって?」
「だって、話せばどんな人かわかるでしょ。そうすれば、君が何をしたのか、予想しやすくなる。」
まずい。こいつ。この神月桜。これは要注意人物かもしれない。
アニメとかを見てるとよくある。
見た目、喋り方などの第一印象だけでこいつ強いなとなることがよくある。
神月からはそれを感じる。強者のオーラとでもいうのだろうか。
吹雪先輩とか、同じクラスの緑岡にも同じオーラを感じる。
「早いね。楓に神月さん。」
「綾華。」
「初対面だよね?二人。」
「ああ。神月がコミュ力高くて助かった。」
「いや、そんなことないよ。」
「あれ、もうみんないるじゃんか!」
すると、本木の声がする。
その方を見ると、一緒に武藤もいる。
「わりい、遅れたか?」
「いや、問題ない。」
「これで揃ったね。」
「じゃあ、行こっか。」
みんなでショッピングモール内に入ることに。
「ところで、今日はなにをするんだ?」
何も知らない俺が聞いてみる。
「半分は遊びだね。」
綾華が答える。
「半分?」
「もう半分は、話し合いだね。」
「話し合い?なんの話し合いだ?」
「不定期試験に決まってるでしょ。もう近いよ。」
実力隠し系チート主人公は、恋の気持ちが分かりません〜人の恋路をスパイしていたら、いつの間にか恋人ができていた〜 五筒赤 @gotouaka
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