片想い値下げしました

海来 宙

片想い値下げしました [終]

 今学校ではやっているのは、交際相手のいない生徒が何人に好きになってもらうか対決。けしてそこから恋人を選ぶのではなく、というより両想いになってはいけない。私はこういった〝遊び〟は敬遠しがち、いやもう恋愛自体が苦手なのだけど、りゅうくんが乗せられて「立候補宣言」したから放っておけなくなった。

「隆くんが始めたんだから、一海かずみも宣言するよね」

 好きになるのは自由だが、「片想い宣言」すると人数に加算される。ただし両想いになってはいけない。そんな叶わぬ恋でほれた人の応援をすることを私と祐奈ゆうなは「安売り」とばかにしていたのに、彼女は「宣言」する気だ。しかもこんなことを言うから困ってしまう。

「隆くんがもし対決を途中辞退して、片想いしてくれた子から恋人選んだらどうする? ううん、まじめな隆くんなら絶対そうする」

 彼女が隆くんに〝片想い〟しているのは間違いなかった。私を巻き込みたがるのは見た目や言動の派手さに反して臆病な彼女のつねだけど、ベランダから二人でシャトルを追う彼を見ていた日々は私に言い訳を許さない。でも「宣言」するかどうかは自分で決めるべきだよね?

 問題は私が祐奈から離れたくないこと。一人しか友達のいない私が彼女の意向に逆らうのは怖かった。あれ、待てよ、隆くんの途中辞退を期待するなら、私という邪魔は入らないほうが――恋敵ライバルは少ないほうが彼女には都合がいいではないか。

 いや、だめだ。彼女もその〝途中〟までは彼を応援したいから、片想いする女の子の数は増やしたいのだ。そしてたぶん、彼女は私になら勝てると自信を持っている。

「私はライバルの計算に入ってないって」

 思わずそうつぶやくと、校庭を眺めていた祐奈が振り返って「何か言った?」と私を取り込む黒い瞳で訊いてくる。私はそんな彼女が好きだから、「な、何でもない」とあたふた答えて銀河の中心ブラックホールから目をそらした。

 ところが、彼女から意外な判決が下される。

「――大丈夫、一海。あなたは隆くんには選ばれない。だから辞退までの辛抱、ね」

「…………」

 どきりとして何も言えなかった。祐奈は絶対に選ばれない私を隆くんの応援に使うだけでなく、それが私の致命傷にならないことを知っているのだ。

「一海は隆くんとダブルス組んでるたけるくんでしょ? まさかあとでそっちを狙うときに障害になんかならないよね」


          了


▽読んでいただきありがとうございました。


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