第4話

「何とか一勝だね……。」


控室でキールドは呟く。

ジェーラは先ほどの戦いで、大怪我を負っているので医務室にいる。


「次なんだけど、誰が出る?」

「あたしが行くよ!!」


キールドの言葉に、一人の女性が声を上げる。


「君が行くのかい? カナデ。」

「うん、次も勝って見せようじゃない!!」

「わかった、頼むよ。」


そういうと、カナデは控室から通路へと出る。




「さてさて、まさか負けてしまうとはの。」

「ふん、フィールめ、情けない。」


ジェルエルドが呟くと、先祖代神の一人が言う。


「なら、我が出よう。」

「ほう、お前さんがか。」

「新時代など、我が捻りつぶしてくれよう。」


一人の男が控室から通路へと出ていく。

ジェルエルドは、何も言わず、自分の髭を撫でるだけだった。




『さぁ!! 野郎どもぉ!! ゴッドレジェンズ、第三試合を始めるぜぇ!!』


グレイシャルの言葉に、観客席は大盛り上がりだ。


『第三試合、先祖代からはこのお方!!』


先祖代側の出口から、一人の男が玉座に座り、運ばれてくる。


『兵を操り、自軍に勝利をもたらす!! その指揮は誰に止められない!! 軍神!! ルエアスゥゥゥゥゥ!!』


ルエアスの名前に、観客はどよめいている。

実は言うと、ルエアスは神の中でも苦手とするものが多いのだ。

ルエアスは誰よりも態度がでかい、好かれていないのだ。


「ふん、馬鹿らしい。」


玉座に座ったまま、ルエアスは悪態をつく。


『新時代からはこいつだぁ!!』


新時代側の出口から、一人の女性が現れる。


『無双、どんなに多かろうとも、全てを倒す!! 一騎当千!! 無双神!! カエデェェェェェ!!!』


カエデは手を振りながら現れた。

カエデの登場に、新時代側の観客は歓声を上げる。


「カエデ―!!そいつを倒してくれー!!」

「負けないでー!!」


観客からの声援に、カエデは拳を上げ応える。


「ふん、愚かな小娘が。」

「言ってろよ、クソジジイ。」


二つの覇気がぶつかり合う。

この場にいるすべての人は、鳥肌が立った。


『ふ、ファイ!!』


試合開始と共に、カエデは刀を抜き、ルエアスに斬りかかる。

ルエアスは玉座から、動く気配はない。


『槍兵・ランサーズ』


ルエアスが腕を上げると、槍の兵隊が現れる、その数50体。

カエデはもう一振りの刀を抜き、二刀流になる。

そして、槍兵の攻撃をかわしながら、槍兵を切り裂いていく。


『おおっと!! ルエアスが召喚した兵を、カエデはものともせず、斬り捨てていくー!!』


すべての槍兵を倒し、ルエアスに向かって走り出す。

ルエアスはまたもや腕を振り、新たなる兵を繰り出す。


『斧兵・ブレイカーズ』


次に繰り出したのは、強靭な斧を持つ兵士だ。


『ルエアス、次に出した兵は、斧兵だー!! 』


斧兵はカエデに目掛けて斧を振るう。

しかし、カエデは持ち前の身体能力でかわしていく。

そして、隙を見ながら斧兵を斬りつけていく。


『おおっと!! カエデ、これも余裕でかわしていく!! そして、斧兵を倒していく!! 流石は無双神だぁ!!』


またしても兵をすべて倒したカエデ。

肩を刀で叩いて、軽くため息をつく。      


「あのさぁ、全然物足りないんだけど?」


カエデの言葉に、ルエアスは眉間にシワを寄せる。


「よかろう、こちらも全力で応えるとしよう。」


ルエアスは両手を上げ、振り下ろす。

すると、ありとあらゆる兵が姿を現す。


『戦兵・フルエージェント』


剣、斧、槍、弓、銃等、あらゆる武器を持った兵が、カエデ目掛けて走り出す。


『おおっと!! たくさんの兵がカエデに向かって攻撃する!! これは捌き切れるかぁ!?』


カエデは嬉しそうに、兵に向かって走り出す。


『無双流・天明斬・響』


刀を振り上げ、思い切り振り下ろし、巨大な斬撃波を放つ。

兵は斬撃波を喰らい、すべての兵が消滅した。


『な、なんとぉ!! 巨大な斬撃波がルエアスの兵をすべて消しさったたぁ!!』


これには、さすがのルエアスも目を見開いていた。

召喚した兵が、すべて消えてしまったのだから。


「もらった!!


隙をついたカエデが、ルエアスを切り裂こうと走り出す。

ルエアスは玉座から動こうとはしなかった。

誰もがルエアスの負けを感じた、その時――


「愚か者め。」


ザグリ、と何かが刺さる音がした。

そこには、地面から現れた剣の兵が、カエデの体を貫いていたのだ。


「がは…!?」


まさかの出来事に、カエデは混乱していた。

兵はすべて倒したはずだ、なのに、体に剣が刺さっている。

カエデは、刺してきた兵を蹴り飛ばし、バックステップで距離を取る。


「くそっ…!!」


カエデは刺されたところを押さえる。

それを見て、ルエアスは頬杖をついて、ニヤリと笑う。


「ふん、伏兵に気が付かぬとはな。」


『伏兵・シャドーナイト』


『斬られる直前に、まさかの伏兵がいた!! カエデ、これにはたまらず距離をとる!!』


息を切らしながら、カナデはルエアスを睨みつける。

ルエアスは、そんなカナデを見て、鼻を鳴らす。


「ふん、無双だか何だか知らぬが、我に敵わぬ。」

「クソがぁ!!」


カナデは刀を握ると、影の兵へと走り出す。

一体の兵が、銃でカナデを狙い撃つ。

それを見たカナデは、刀で弾を弾き返し、その兵を斬り伏せる。

しかし、他の兵が剣や槍、斧を振るい、カナデを攻撃する。


「クソっ!!」


カナデは何とか、回避しながらも兵を斬り捨てる。

しかし、先ほどの傷で体力が落ちている。

そのせいか、攻撃を受けてしまう。


『カナデ、兵の攻撃を躱し攻撃していくが、段々と傷を負っていく!! これは決まったか!?』


グレイシャルの言葉に観客席は、不安に煽られる。

カナデが負ければ、ルエアスの恐怖に飲まれてしまう。

兵からの攻撃を受けて、カナデは膝をついてしまう。


「もう諦めろ、勝負はついている。」


ルエアスはカナデに、降参を促す。

カナデは顔を上げ、立ち上がる。


「断る!! この体が朽ち果てようとも、私は戦い続ける!!」


声を上げるカナデに、観客席からはカナデコールが響き渡る。

そんなカナデを見たルエアスは、顔をしかめる。。


「愚か者め、ならば、引導を渡してくれる。」


ルエアスが手を上げると、兵が一斉にカエデへ攻撃する。


「だったら、こっちも見せてやるわ!!」


『無双流・轟天・嵐龍』


カエデは巨大な竜巻を発生させる。

突如現れた竜巻に、兵は何もできず、飲み込まれた。

竜巻は斬撃を纏っており、兵はバラバラに切り刻まれた。


『巨大な斬撃の竜巻が、ルエアスの兵を飲み込み、切り刻んだ!!』


まさかの出来事に、ルエアスは目を見開いて驚いていた。

カエデは、その隙を見逃さずに、ルエアスへ走り出す。

それを見たルエアスは、焦りながらも兵を召喚する。


「どけぇぇぇぇぇぇ!!」


カエデは声を上げながら、兵を斬り捨てていく。

何度も召喚される兵を、何度でも斬り捨てる。


『すげぇ!! すげぇぞ!! 召喚し、そのたびに倒す!! これは持久戦に持ち込まれるぞ!!』


この状況に、観客席からはカナデコールが鳴り響く。

召喚しても、倒される兵士を見て、ルエアスは汗を流す。


「何故だ!? 何故なのだ!? 我は強いのに!?」

「あんたさ、玉座に座って、命令しているだけでしょ。」


あんたは強くないよ、そう言われ、ルエアスは激怒した。


「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!! 我は絶対だ!! 我の言葉が絶対なのだ!!」


ルエアスの言葉に、観客席は怒りに満ちていた。

こんな奴が、存在していいのかと誰もが思った。


「よーくわかった、あんたは消えるべきだってね!!」


全ての兵を斬り伏せ、がら空きになったところを攻める

そして、ルエアスに一閃を繰り出す。

ルエアスの体から血が流れ出る。


「ば、馬鹿な……、この、我が、負ける、など……!!」

「あんたは、軍を動かす力はあるよ、でも――



あんたは軍を動かしただけ、それだけさ。」


そういうと、カエデはルエアスをX字に切り裂く。

ルエアスは、玉座に座ったまま光に包まれ、消滅した。


『き、決まったぁ!! 勝者!! 無双神!! カナデ!!』


グレイシャルの宣言に、観客席は歓声の声を上げ、カナデコールを唱えた。

カナデは拳を上げ、嬉しそうに微笑んだ。


軍神ルエアス対無双神カナデ

勝者 無双神 カナデ

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ゴッドレジェンズ~神々の戦い~ 維新コウゲツ @isinkougetu

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