第3話

第一試合、勝者は先祖代。

この結果、そして、消えてしまうというルールに新時代側の観客席は静かになっていた。

それもそうだろう、目の前で友が消えてしまったのだから。


「ルールとはいえ、消えてしまうのはキツイね……。」


キールドは控室で呟く。


「だが、それは覚悟していたことだろう?」


新時代の一人がそう言うと、キールドは頷く。


「次は負けられない、誰が出る?」

「俺が出る。」


キールドの言葉に、一人の男が立ち上がる。


「君が出るのかい?」

「あぁ、先祖代に一発決めてくる。」


男はそう言うと、控室から出る。


「まずは一勝をとらないと……。」





一方の先祖代側の控室では――


「ほっほっほ、先ずは一勝じゃの。」


先ほどの戦いで勝ったことを、ジェルエルドは喜んでいた。

ここで、最初から負けていればメンツが立たないということだ。


「さてと、次は誰が出るのかの?」

「私が行きましょう。」


ジェルエルドの言葉に、フィールが手を上げる。


「ほう、お前さんが?」

「ここまま、勝利して新時代には大人しくしててもらいましょう。」

「じゃが、油断は禁物じゃぞ?」


その言葉に、フィールは何も返さず控室を出る。




『野郎どもぉぉぉぉぉ!!!! ゴッドレジェンズ、第二試合を始めるぜ!!!』


グレイシャルが、第二試合の宣言を伝えると、闘技場は歓声に包まれる。

先祖代側の観客席は、余裕の表情だ、何せ先を度は勝ったのだから。

一方の新時代側の観客席は、不安に包まれていた。


『さぁ!! 第二試合、先祖代からはこのお方だ!!』


グレイシャルの言葉と共に、空からフィールが降り立つ。


『マシンガン、ショットガン、アサルトライフル等、あらゆる銃を操り、相手の全てを撃ち抜く!! 女神、銃神!! フィィィィィィィィル!!!!!』


フィールの登場に、新時代側の観客席は歓声を上げる。


「フィール様ー!!」

「新時代など敵ではない!!」

「その銃で、撃ち抜いて―!!」



「……うるさいわね。」


観客席の応援に、フィールは呟くが、歓声の声でかき消される。


『さぁ!! 新時代からはこいつだぁ!!』


グレイシャルの言葉に、新時代側の通路から、一人の男が現れる。


『狙った獲物は逃がさない!! 一発必中!! そのライフルは獲物を狙い撃つ!! 狙撃神!! ジェェェェェェェェェェラ!!』


自分の身長と同じぐらいの、大きなライフルを担いで、ジェーラが姿を現す。

新時代側の観客席は応援を送る。


「ジェーラ!! 頑張れよー!!」

「私たちに希望を見せて―!!」

「負けんなよー!!」


その応援に、ジェーラは後ろを見せながらも、手を上げて応える。

その姿に、観客席は歓声を上げる。


『さぁ!! お互いに準備は整った!!』


グレイシャルの言葉に、二人は武器を構える。


「私、これだけは言えるの。」


フィールはジェーラに一言いう。


「私、貴方が嫌いなの。」


フィールの言葉に、ジェーラは――


「あっそ。」


と答えた。



『ファイッ!!』


グレイシャルの開始とともに、フィールは空を飛ぶ。

そして、アサルトライフルを数丁召喚し、ジェーラに向かかって撃つ。

しかし、ジェーラはその場から動かない。


『フィールがアサルトライフルで弾丸の雨を降らす!! しかし、ジェーラは動かない!! どうしたんだ!?』


弾丸がジェーラに当たる寸前、ジェーラは姿を消した。

そして、弾丸はすべてすり抜けて地面にめり込んだ。


『おおっと!! 弾丸が当たる寸前、ジェーラが姿を消した!! これはどういうことだ!?』


この状況に、フィールは目を開き驚いていた。

ジェーラの姿を見失い、当たりを見渡していると――


「隙あり。」


フィールの頬を掠るように、一発の弾丸が通り過ぎた。

そこには、姿を消していたジェーラが、フィールの後ろをとり、ライフルで撃ち抜いていた。


「なっ……!! いつの間に……!?」

「さぁ、いつだろうな?」


驚いているフィールに対し、ジェーラは肩をすくめていた。


『なんと!!姿を消していたジェーラがフィールの頬かすめた!!』


頬を掠め、血がタラリを流れている。


「この、私の顔に、傷をつけた……?





この、愚か者が!!!!!」


顔に傷を付けられ、フィールは怒りに満ちた。

ジェーラは、そんなことを気にしていないようだ。


「喰らうがいい!!」



『極天・フルバースト』


フィールはありとあらゆる銃を召喚する。

そして、全ての銃が弾丸を放ち、弾丸の雨を降らせる。


『おおっと!! キレたフィールが大量の銃を召喚し、鉛の雨を降らせる!!』


ジェーラは弾丸の雨を避けるように回避していく。

今度は消えないようだ。


『ジェーラ!! 今度は消えずに回避していく!! しかし、弾丸の雨は止まないぞ!!』


ジェーラは回避をしながら、ライフルを撃つ。

一つ一つ、丁寧に銃を撃ち落としていく。


「何故!? 何故なの!?」

「あんたのパターンは、読めてんだよ。」


フィールの困惑に、ジェーラが答える。

銃を召喚し、ただ撃つだけでは自分を捉えることはできないのだと。


「ふ、ふふ、私のパターンが読めている? 馬鹿げたことを!!」

「現にそうだろう。」


そういうと、ジェーラはフィールの肩を撃ち抜く。

この状況に、新時代側の観客席は大盛り上がりだ。


「いいぞー!!」

「そのまま、やっちまえー!!」


フィールは肩を押さえながら、息を切らす。

油断したいたのだろう、苦虫を嚙み潰したような顔になっていた。


「なら、これはどうだ!?」



『銃帝・ガトリングブレイバー』


今度はガトリング砲を十体召喚し、弾丸を放つ。

先ほどより、激しい弾幕が張られる。


「マジかぁ。」


ガトリング砲の弾幕に、ジェーラは呆気にとられる。


「こいつで行こう。」


ジェーラは青色の弾丸を装填して放つ。


『ブルーバルシリアス』


放った弾丸は、弾に当たった瞬間、巨大な爆発を起こし、弾丸全てが包まれた。

包まれた弾丸はそのまま黒焦げになった。


『何と!! たった一発の弾丸が、弾幕のような弾をすべて黒焦げにしたー!!』


「ふぅ。」


少しは落ち着いたと感じたジェーラは、ライフルのスコープから目を離す。

その時、後ろから衝撃を受け、ジェーラは仰け反ってしまう。


「ぐっ……!?」


わき腹を押さえると、その手には血が付いていた。

そして、あたりを見回すと、赤黒い兵隊が銃を持ってジェーラに向けていた。


「フフフ、油断したわね。」

「まさか……!?」

「そう、ガトリングは囮、本命はこっちよ。」



『血兵・ブラッドアーミー』


『何と!! さっきのガトリングは囮で、この兵隊が本命だったー!! ジェーラ、初めての負傷です!!』


ジェーラはわき腹を押さえ、どうにか立ち上がる。

そして、ライフルで兵隊の頭を撃ち抜く。


「無駄よ。」


兵隊の頭はすぐに再生した。

これには、ジェーラも苦い顔をする。


「さぁ!! その愚か者を撃ち殺すのよ!!」


フィールの言葉に反応し、兵隊たちはジェーラに向かって発砲する。

ジェーラはすぐに姿を消し、何とか回避する。


「そこ!!」


しかし、フィールの放った弾丸に当たり、姿を現す。

弾丸は肩に当たり、ジェーラは肩を押さえる。


「フフフ、存分に嬲り殺してあげる♪」



「だったら来いよ、相手をしてやる。」


ジェーラはライフルを構え、フィールに狙いを定める。


「撃ち殺せ!!」


フィールと兵隊たちがジェーラに向かって発砲する。

しかし、ジェーラは避けることもせず、狙いを定めたままだ。


『フィールと兵隊たちの弾丸が、ジェーラに突き刺さる!! しかし、ジェーラは一方的で避けもしないぞ!?』


ジェーラの体がどんどん赤く染まっていく。

しかし、絶対に避けず、狙いを定めている。


「ほらほら!! 死んでしまうわよ!!」




「一発だ。」



「え?」


「この一発で決める!!」


『ジャッジメントスナイプ』


ジェーラは黄金の弾丸を、フィールに向けて放つ。


「無駄なことを!!」


フィールは召喚した銃を集結させ、盾にする。

弾丸は盾に当たり、回転する。


「アッハッハ!! 無駄に終わったわね!!」


「言ったろ、この一発で決めるって」


回転している弾丸は、威力を増していく。

そして、盾にヒビが入っていく。


「そんな、そんなことって!?」


その弾丸は盾を貫き、フィールの心臓を貫いた。


『お、黄金の弾丸がフィールの盾を破り、フィールを撃ち抜いた!!』


飛んでいたフィールは地に落ちた。

兵隊たちも消え、ジェーラはフィールに近づく。


「私が負ける……?」

「そうだ、アンタの負けだ。」

「やっぱり、貴方は嫌いです……。」


そう言い残すと、フィールは光に包まて消えていった。


「そりゃどうも。」


そういうと、ジェーラはその場にあおむけで倒れる。

それもそうだろう、あれだけの弾丸を喰らって、立っている方がおかしい。


『し、勝者!! 新時代!! 狙撃神!! ジェーラ!! だ、誰か救護班を!!』


ジェーラの勝利に、新時代側の観客席は歓声を上げる。

そして、ジェーラは担架に乗せられ、救護室へと運ばれた。


「だから、油断するなと言うたのに。」


ジェルエルドは、自分の髭をなでながら呟いた。


「新時代、侮れんのう……。」


銃神フィール対狙撃神ジェーラ

勝者狙撃神ジェーラ

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