第4話

もしもしと私は出た。

『あ、駐在所の者です。先ほどはありがとうございます。あの家族のことなのですが、検視の結果練炭自殺ということが解りました。原因は恐らく、彼女にあると』

私ははい、はいと受け答えをしながら呆然としていた。

『やっぱり彼女、遺体見つかってないんですよね』と私は聞き忘れたことを思い出した。

「何故、死亡と断定したのですか?」

『あ、ね、そうそう首だけ落ちてたの。街道沿いの階段で』

私はゾッとした。

それにしてもはっきり言うもので。

『上だけやはりどこにもないんです』

私はそんな会話を何ターンかして、トイレに駆け込んだ。吐き出すためだ。

そのあと私は手を洗い、平然を保つように努力した。

何かやはり引っかかる。私のマンションは街道沿いに立つからだ。しかもその階段というものは私の部屋から見える場所かもしれない。

いつもは開けないカーテンをガーッと開けた。首のない女の身体が私の部屋のベランダにあった。

私はうわあと叫び声を上げた。尻餅をついて必死にその場から離れるように。

変な言葉が頭をよぎった。

『なんか変な宗教?みたいなものに入ってから彼女の様子がおかしくなって、いつの間にか家族の中でもおかしくなってきた』

警察官が言うその言葉は何かの意味だったのか。

スカートを履いたまま彼女はうつ伏せになっていた。

私は何もせずにいるとその死体が痙攣し始めたことに気づいた。

うわあと必死に逃げ出そうとすると、死体は勢いよく立ち上がりこちらへ向かってきた。

逃げようと逃げようとするも不気味な体勢でこちらへ寄ってくる。

やめてくれ、やめてくれと私は心の中で言った。

何の恨みなど作ったこともない。何故私が?と思ったところで私はハッと目が覚めた。

仕事用の服を畳んでいたところで私は眠ってしまったのだ。

ふうと安堵していたが、もしかしてと思い私たちカーテンの方に向かった。勢いよくガッと開けた。

やはりそこに首のない女の死体はあったのだ。


私は急いで警察を呼び、死因はこのマンションの屋上から飛び降りたという結果だ。

何かの奇跡かで私の部屋のリビングに落ちたとされる。私も疑われたが、その疑いはすぐに晴れた。

それも彼女の家庭はネグレクトだったらしく、日常的に彼女に対する暴力や不当な扱いが日常茶飯事だったそう。彼女の限界値はとうに超え、手につかなくなった彼女以外の家族は集団で自殺。そうしたものの最果てがこういったものだった。

彼女は首を切りながらそのまま飛び降りたのだという。

このことは大きく報道された。

私はその日、警察の計らいで近くのビジネスホテルに泊まらせてもらうこととなった。

それこそ、荷物は最低限に。

それから次の日、職場に理由を説明し、遅れることを伝えた。快く返事が返ってきた。

事件現場である部屋に戻ってきた。

数人の警察が部屋から出て行った。

仕事場へ向かう準備をし、部屋を出る。

夕方家に戻ってきた。はあとため息をつく。

すると、間髪を入れずに電話がかかってきた。

友人Aだ。もしもし、と応答する。

『おー、大丈夫か?いや、まさかだよな』

私はあまり乗る気にもなれずそうなんだよと言った。

『そうそう、言おうと思ってたことがあって、

見たんだよそのアカウント。ユーザーネーム調べてみてさ、全部の写真、女なんて映ってなかったぞ。』

私は見間違えていたのかもしれない。

ただ気づいてくれ、もしくはネグレクトが起きていたことを拡散して欲しかったのか。

そんな風に会話をして電話を切った。

私はソファに腰をかけながらあのアカウントのことを調べようとした。

やはりそのアカウントは出てきた。

すると、新しく投稿していたのだ。

ありえないあり得ないと。3件投稿されていた。


18:28 「「「「「


18:29 gfagczj#j


18:33 154<°(*(4*☆・☆$


もし、霊界と繋がっていたとしたら、

なんて思った。私が見間違えたのかもしれない写真に映る彼女はどう思っていたのだろう。

何を伝えたいのかは分からないが、

おそらくこの部屋にまだいると思う。

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