#拡散してください

雛形 絢尊

第1話

とても変な投稿を見たことがある。

ソーシャルネットワークサービスの中で変な写真を投稿しているアカウントがある。

ある日には電信柱、次の日には踏切など風景をほぼ毎日のようにあげているアカウントだ。

プロフィール写真には野畑に咲いた白い花が写っており、アカウント名は伏せておく。

さほど興味がないが、毎日のように私のおすすめに出てくるのだ。同じアカウントで。

何のことだかと私はその日も指でスクロールをし、普段のようにさまざまな投稿を見ていた。

それもそのはず私は一人暮らしを始めたてですることもなく、長い時間ソファに寝転がり、スマートフォンを触っていた。

食器の洗い物、まだ風呂も入っていない、やることはたくさんあったが眠くなってしまい、それはそれはうとうとしながら、またもスクロールをしていたのだ。

私は少し眠ってしまった。幾時間か過ぎ、私は起きた。

深く腰掛けたソファから起きあがろうとすると、その拍子にスマートフォンが落ちた。

私はよっこいしょとスマートフォンを取ろうとした。

スマートフォンの画面を見ると、あのアカウントの投稿が写っている。何故?と私は急いでスマートフォンを確認した。いいねなどはついてない。

そんな覚えはないのに私はそのアカウントをフォローしていたのだ。即座にフォローを解除しようとするが触れても触れても解除されない。

なんだ?と私はふと投稿写真を見た。

その写真は木を写している。

大きな木が手前に写っており、その奥に木がいくつか見える。そのいくつかの木の後ろを私はふと見た。

女がこちらを見ている。

私は驚きながらも再び確認しようと拡大する。

やはり身体が半身だけ見えたショートカットの女がいる。たまたま映り込んだだけだと私は思った。

不自然なのはメインが人でなく、木がメインだということだ。しかし、やはり目が合っている。

写真を撮る際に被写体である彼女がそんな遠くに行く必要もないだろうと私は思ったのだ。

何故だか私は他の投稿も見ることにした。

その写真は前にも見た電信柱の写真である。

不覚にもその写真にも映り込んでいるのではないかと思い、私は目を細めた。

やはりいた。

右半分に電柱が写り、左奥の建物の手前、やはり彼女は映り込んでいる。

そういった売りでのマーケティングだろうと、そういうものも疑った。益々興味が湧き、もう一枚の踏切の写真も見た。やはり彼女はいる。

それにしても変なものがあるんだなと私は思った。

その時、自分のスマートフォンが鳴り出した。

友人Aからの着信だ。もしもしと私は応答する。

おう久しぶりという形から彼は入った。

『今度さ、サークルのみんなで久々に飲みに行こうよ』

誘いの電話だった。あまり乗る気ではなかったが、私は行こうと言った。

彼は嬉しそうに「おう、行こう行こう」と言った。

私は何かやはり先ほどのことが気になり、彼にあのアカウントのことを話した。こんな風に

「さっき、っていうより何日か前から変なアカウントがいっぱい出てくるんだ」

『それってX(Twitter)での話?』

「そうそう、何の変哲もない風景写真に必ず映り込んでるんだよ。ショートカットの女が」

『え、何それ怖すぎじゃん』

「どういう表情かわからないけどこちらをじっと見ている」

『そんなアカウント見たことないな』

私は彼に頼み込むように言った。

「その(ユーザーネーム)ってアカウント、ちょっと確認してくれないか」

と言うと、彼は否定的に、

『俺、そっち系無理だから、ほんと無理だから』

と彼は拒否した。

「そっか、見間違えか」

と話を終わらせた。

『疲れてるんじゃないか?』

なんて言われた。確かに仕事が始まってから息抜きと言えるほど、ゆったりとした休日を過ごすことがなかったからだ。

「そうだな、なんでもない」

その後彼は『そんなことで、じゃあ切るわ、おやすみ』と言い放ち、電話が切れた。

思えばもう23時に近い。色々やらなければいけないことが溜まっていることを思い出し、深いため息をついた。

そんな瞬間やはり気になりだしたのだ。

私はまた開いてしまったのだ。アプリを起動し、そのアカウントを探す。

やはり出てきた。私は愕然とした。

どういうわけだか、先ほど見たはずの木が映る投稿。少し彼女は前に出てきている。

2度見して確認してもやはり近づいている。

私は何か嫌な予感がしている。何故かというと彼女に見覚えがあるのだ。やはり何処かで見たことのある顔だ。表情は虚であるが、見たことがある。

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