第3話「疑惑」

俺はポケットから鍵を出し息を切らしながら庭の森へと走り自慢の肩でその鍵を投げた。


「っはぁ、はぁ...危なかった...」


俺は肩で息をしながら少しの間休憩していると...


「あ、ローター」


シンの声が聞こえた。


「おい何故来なかった?」


少し怒気を孕んだ声でシンに問いつめる。


「違うのローター。カウラさんがきて、それで...」


クリスタが事の顛末をローターに話してくれた。


「そんなことがあったのか...実は俺もさっき」


一通り状況報告を終えて皆で座り一息ついた。


「じゃあやっぱりカウラさんの部屋は大事なものが置いてあるから鍵をしているんじゃないの?」


クリスタが言葉を発する。


「ま、それが一番現実的かな」


俺もその意見に同調した。


「ガウ...違うんだ...」


ローターが震えながら言葉を続ける。


「ドアの前に立っていた時。聞こえたんだ。」


「聞こえたって何が?」


僕がそう疑問を問いかけるとローターは


「男の声だ...このハウスで聞いた事のない...な」


クリスタと俺は固唾を飲んだ。


「私たちが聞いたことないって、ありえない、私はこのハウスに暮らしている人は全員覚えているわ!」


「それはお前だけじゃないクリスタ...きっと俺もシンも...だ」


「ってことはその男は''外''から来たってことか?」


「その可能性が高いな」


重い空気が流れる。

このハウスとその周辺はかなりの広さだが誰も外にでたことは無いし見たこともない。カウラさんからは危ないからって理由で外と通じてるトンネル以外は大きい壁で行けないし見えないようになっている。トンネルの先も遠くから見ても先が暗くて見えない。なので外から来た人を僕たちは見たことも聞いたこともないのだ。食料や日用品なんかも全部カウラさんがトンネルに取りに行っている。


「外の世界...か」


クリスタが呟く


「私ね前図書館で外の世界の本について見たの...塩の含んだ遥か彼方まで続いてる水に水平線まで続く砂の景色。氷に覆われた大地。この世界にはもっと持っっと色んなものがあるんだって。」


「ねぇローター君。ローター君の誕生日って、」


「分かってる...俺の誕生日は1ヶ月後だ」


「先にこのハウスをでたお兄ちゃんお姉ちゃんは書いてくれなかったけど、ローター君は書いてね、」


「あぁ約束するさ」


「しかしなんで僕たちの前の代の人たちはなぜ一通も手紙をだしてくれないんだ?」


僕が当然の疑問を口にする。



「きっと手紙を出すことを忘れちゃうくらい楽しいんだよ!」


クリスタがキラキラした目で語る。


「そうだな俺もそう思うよ」


ローターが頷きながらクリスタに返事を返す。


「帰ろっか」


僕はそう言って立ち上がりローターとクリスタと一緒にハウスに戻るのだった。




「あれ?これカウラさんの鍵だよね?」


「届けなきゃ」


「カウラさん!!これ落ちてたよ!!」


そう言ってエリは私に鍵を渡して去っていった。


「どこで落としたのかしら」


私は首を傾げながら事務室へと戻るのだった。




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