第2話「カウラの部屋」
その後昼食を済ませた僕とクリスタは大きな庭へと来ていた。
「みんな〜今日は鬼ごっこしようか」
カウラが優しい口調で、くしゃっとした笑顔で笑う
「鬼ごっこ!!する!!」
エリがそう言うと他の子供たちも頷いて騒ぎながらハウスの大きな庭にある森の方へと逃げていった。
「僕達も逃げなきゃ!!」
そう言って僕はクリスタの手を握って森へと駆け出した。
「あら?ローターは逃げないのかしら?」
カウラは首を傾げながらローターを覗き込む。
「いや、ちょっとお腹が痛くなってきてさ」
そういいローターはふらつきカウラとぶつかる
「あら?大丈夫?医務室に連れていこうか?」
カウラが心配そうな声色でローターに話しかける。
「いや、大丈夫だ、カウラさんわりぃ俺トイレ行ってくる。」
そう言ってローターは何かを握りしめながら足早にハウスへと走り出す。
「ねぇシン君ローター君は成功したかな?」
クリスタが大きな森を迂回しハウスの後ろ側へ向かう途中でそんな言葉をなげかけてきた。
「大丈夫だ、あいつはやる時はやるやつだからな」
僕はクリスタをなだめながら言葉を続ける。
「そんなことよりそろそろローターは部屋に着く頃だろう。急ごう。」
クリスタは頷きハウスの裏口へと急ぐ。
「見えた!アレだ!」
クリスタがそう言うと裏口のドアに近づきドアノブに手を重ね右に回そうとしたその時クリスタの肩に優しく置かれる手があった。
「え、」
クリスタが素っ頓狂な声を上げる。
「あら?どうしたのかしら?シン、クリスタ?今は鬼ごっこ中よ?ハウスに隠れるなんてダメじゃない。正々堂々と森で逃げなさい?分かった?」
冷ややかな声で柔らかい口調を演じつつも少し棘のあるようなそんな言葉でまくし立てる。
クリスタが酷く狼狽している横で俺は冷静に言葉を並べる。
「ごめんカウラさん走るの疲れちゃって、クリスタと休もうとしたんだ。」
「あらそうだったの、でも休むなら庭にしなさい?分かった?」
カウラさんが諭すように言うとクリスタが答える。
「う、うん!分かったよカウラさん。いこ!シン君」
そう言って俺達はハウスを後にした。
「おかしいなシン達が来ない」
俺はカウラさんの部屋の前で1人シン達を待っていた。
「そろそろ運動時間も終わるし、1人で入っちゃうか。」
そうして俺は鍵をポケットから出そうとしたその瞬間。
「ローター?私の部屋に何か用?」
嫌な汗が身体中から吹き出るのがわかる。俺は咄嗟に鍵を隠した。
「いや、たまたま通りかかっただけだよ。トイレから出て戻ろうとしたところだったんだけど、そういえばカウラさんの部屋に入ったことないなと思って気になってちょっと見てただけだよ。」
動揺をできるだけ隠して俺は鍵の存在を悟られないように言葉を並べ、
「じゃあ俺行くわカウラさんまたね!」
そう言って立ち去ろうとしたその時。
「待ちなさい。私の部屋が気になるの?」
「え?う、うん気になる...けど」
「なら見せてあげるわ」
そう言ってカウラさんは腰に手を回そうとする。
まずい...このままだと鍵がないことがバレてしまう。
「カウラさん」
俺はカウラさんの名前を呼んで腰に手を回す腕を停めた。
「どうかしたの?」
「あの...さ」
必死に思考しながら言葉を並べる。
「何でカウラさんは部屋に鍵をしているの?」
「私の部屋?それはね貴方達の資料や仕事の道具。それから危険な物もいっぱいあるから鍵をしているのよ。」
「へーなら別に興味無いや」
そう言って俺は駆け足でその場を去った。
「あら、」
私は腰に手を回してそこにあるはずの鍵の有無を確認した。
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