ブックタワーを攻略せよ!

新巻へもん

誰だよ、こんなもの作ったの

 俺は送られてきたメールのリンクをクリックする。

 立ち上がったブラウザに表示されるものを見て、思わず目を細めた。

 は? これはなんだ?

 ブックタワーだと?

 本が宙に浮いているように見えてオシャレ……。

 これはあかん。


 まあ、確かに俺はオンラインショップの商品にサクラとしてレビューを書いてギフトカードを貰うという副業をやっている。

 買ってもいない商品を褒めたたえて他人の購入意欲をかきたてるという所業を行っている人間に物事の善悪を語る資格はないかもしれない。

 だけどさあ。

 本は部屋の見栄えを良くするためのアクセサリーじゃねえっ!


 あれか。

 部屋をハイセンスに飾り立て、さり気なく見栄えのする本も陳列して、クレバーさも演出しちゃおうとかそういう考えか。

 私のリビングです、とかいう感じでSNSに写真をアップしてイイネを集めようとかいう承認欲求の塊みたいな。

 俺と相性が悪すぎる。


 つーかさあ、平置きにして積んでおいたら、棚の1番下の本は取りだしにくいじゃねえか。

 だったら男らしく床に平置きで積んでおけ。

 それが由緒正しい積読のやり方だ。

 徒然草にも書いてある。


 でもなあ、悲しいけどお仕事なのよね、これ。

 割り振られた案件を断ったら、次の依頼が来なくなっちゃうかもしれない。

 給料日まで食つなぐための貴重なギフトカード。まさに俺の命綱。

 背に腹は代えられない。

 心を鬼にして、この困難案件を攻略するのだ。


 俺はしばらく呻吟する。

 うーん、うーん。

 あれ? これ、時給換算したら割が悪すぎねえか。

 よし。ここは発想の転換をしよう。

 本来は食洗器なんだけど、プラモデラー推薦の乾燥機として有名になった商品もあるしな。


『木目調でどんな部屋にもぴったり。あなたのお部屋に華を添えるでしょう。うちのソフィアちゃん(ロシアンブルー3歳♂)にも大人気。設置してからは1番上が定位置になりました』

 送信ボタンをポチっと押しまして任務完了。

 ギフトカードよろしくぅ!

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