C:ANNVALIST-カニバリスト-

@ganian

読み切り版

ここはとある町


闇を怪異が跋扈する


我々と、ほぼ変わらない世界


殺人犯が潜伏する


路地裏で人を貪る影がひとつ


スーツ姿の男


こちらをにらむ



***



「あー疲れたー」



夕方の繁華街を歩く少女が一人



栗色の髪と目を持つごく普通の少女


「だけど今日も矢後やうしろ君、かっこよかったなぁー!」


「サッカーも強くて、優しくて、成績もよくて」


「アタシなんかじゃ…とても…」



しかし足取りは重い



「怒られてばっかりだもん、嫌だよ、ホント」



「それより…早く行かなきゃ!」



***



少女の姿は郊外の霊園にあった



花を換え、墓前に手を合わせる



墓には“御上月みこうづき家”と刻まれている



「さてと、帰って課題やらなきゃ…」



再び家路につく



「また来るね、お母さん!」



「……紅乃くりの



「え?」



筈だった



「アタシの名前? …でもそんなわけないか」



地響き



「えっ何!?」



肌のただれた大男



ゾンビだ



咄嗟に竹刀を構える紅乃



難なく組み伏せられる



抵抗は続ける



しかしゾンビには適わない



地面から無数の手



数十体のゾンビ達



「嫌…嫌…」


血の雨が降る


「…へ?」


「くだらん」


倒れるゾンビ


紅乃の側に大男


不適な笑み


2メートル近い


鋼のような筋肉


黒い皮膚に身を包む


「豚に貸す、耳はない」


ゾンビ達の目が男に向く


「悟ったか?俺を超えねば、届かない」


男の手には日本刀


巨大な、いわゆる野太刀と呼ばれるモノが二振り


飛びかかるゾンビの群れ


「脆い」


瞬く間に肉片となり、地面に散らばる


「所詮この程度」


シャワーのように、血を浴びる


「そんなモノか…ゾンビなど、俺も、お前達も」


刀身の血をなめる


「さて…」


紅乃に歩み寄る男


「大丈夫かと心配はしてみるが…案の定か」


泡を吹いて倒れる紅乃


「仕方あるまい…担いで家まで-」


刹那に吹っ飛ぶ


男の両腕


「なっ…」


墓の上に、スーツの男


ヒョウの頭


回りにハエが飛んでいる


「何してんの?兄弟」


「こちらの台詞だ2i《ツーアイ》、なぜ貴様がここにいる?」


「主の命令さ、バカ息子を連れてこいって」


2iが男をにらむ


「バカバカしい…親などしらん、腕をもぐ…兄弟などもな、それに」


「それに?」


紅乃を見る


「俺の主はここにいる」


「そっか、んじゃ」


2iが無数のハエに姿を変える


「その子食べれば帰ってくるの?」


「調子に乗るな」


傷口からワイヤーを伸ばす男


もげた腕を喰らい、周囲の肉片が男の腕として再生する


背中から無数のワイヤーを展開


「誰であろうと、何であろうと、俺から何も奪えない」


「その言葉、確かめさせてもらうよっ!」


二人がぶつかる刹那


「-エルヴィオン」


二人とは違う声


上空から、巨大な刃が地面に落ちる


「うがっ」


「高圧水流?」


男は紅乃を抱えて交代する


2iはモロに食らう


男の頭上には青年の姿


銀髪に青い瞳


全身に機械の甲冑


右手には大振りの剣


「うそ!矢後君!?」


「目を覚ましたか、紅乃」


「御上月さん…そういうことか」


羽音


「危なかったー」


一匹のハエが飛んでいく


「予想外の事態だ…早くあの方に報告しなきゃ…」


「逃がすわけないだろ」


追撃する少年


しかし男が割って入る


「どけよバケモノ、邪魔だって」


「そう言うな、上物が入ったんだ」


「冗談じゃない!」


地面に激突


瓦礫を突き破って立ち上がる二人


「“キギス国教団”、異端排斥の専門家、矢後リオン」


「そういうお前は“ラビナ”、怪異でありながら、怪異を狩る異端者」


「勝手に呼ぶだけだ、俺に名など、元からない」


「なんでも良い…僕の目的は、御上月さんだ」


「では…俺の相手をしてもらおうか!」


ラビナとリオン


二人の剣がぶつかる

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