気がついたら〇〇になっていた!!!
Yohukashi
何でこんなことに!!!
目覚めたら、まだ暗かった。
何気なく時計に目をやると、まだ朝の3時だった。何でこんな朝早い時間に目が覚めてしまったのか。何故か二度寝できそうになかったので、そのまま起床する。すると、隣には母親が寝息をたてていた。
「わっ、何で??」
高校生にもなって母親と添い寝?ありえん、ありえん!!気味悪うぅ~!寝ぼけて部屋を間違えたとしても、両親の寝室は絶対ありえん。
完全に目が覚めてしまったので、顔を洗うため洗面所へ。そして鏡を見たら、恐怖と驚愕で体が凍りついた。
「お、お、親父いぃぃ!!」
俺の顔が親父の顔になってた。な、な、な、な、な、何でこんなことにいぃぃぃぃぃ!!?これは夢だ。悪夢だ。世界最大級の悪夢だ。何でイケメンの俺の顔が、くたびれたキタナイオッサンの顔になってしまってるんだ!!何でシュッと引き締まった体が、でっぷりガッチリになってるんだ。ふざけんな。早く戻せよコラ。
そうこうしてると、母親が起きてきた。
「何もたついてんだい。早く着替えてきな。すぐ朝ごはん用意するから」
「お、お、お、お、おぅ…」
どうせ丁寧に洗ったところで美男子になるわけではないから、テキトーに顔を洗って食卓へ行く。すると、お日さますら寝息をたてている時間にも関わらず、何と大盛りのカレーライスが出てきた。匂いを嗅いだだけでゲップが出てくる。
「う、お、おお、か、カレー??」
「そんなに喜んでくれるなんて、嬉しいね。どうしたんだい?」
母親がドヤ顔をしてくる。俺のセリフをどう受け取ったら、そんな言葉が出てくるんだ?時々、朝からカレーサンドが出てきて胃が重くなっていたんだが、親父の朝飯が理由だったのか。
「ちくしょう。食えばいいんだろ、食えば!」
半分涙目になりながら、カレーライスに立ち向かう。不本意に朝早く起こされた上にカレーだと!俺が何をしたってんだ?そんなに悪いことしたんかよ。参考書買うと言ってせしめたカネで、女子高生ナンパしてカラオケに行ったからか?そんな俺よりもワリーことしてるヤツなんてゴマンといるだろ。
このオッサンの中身は、あんたのイケメンの息子ですよって、いくら言って説明しても、どうせ信じてもらえないだろうから、意地と根性で何とかカレーライスを制圧。腹をさすりながら着替えに向かう。
「クッソー、ダセえな…」
親父の体型では俺の服は入らない。仕方ないから親父の服を着るけど、全く俺の趣味じゃない。こんな服を着ることになって、俺のプライドはズタズタだ。
会社に向かうために、親父の車に乗り込む。運転なんかしたことないけど、どうも小脳とか脊髄とかは親父のままみたいで、反射的無意識に車を運転できた。道順も分かる。まだ未明の道路はガランとしてるから、スムーズに会社に着いた。
親父の勤める会社は、トラック輸送の会社。事務所で呼気検査を受けたあとで、納品先への行き方とか確認。こういう一連の業務も何故か反射的にこなすことができた。注意事項とかを事務所の配車係から説明を受ける。
「トモさんが進んで、こういう厳しい仕事を引き受けてくれるから助かるよ。お子さん、まだまだカネがかかる年頃だもんな。頑張って稼いでくれよな」
と言って送り出してくれた。ん、どういうことだ?
自分のトラックに向かって歩く。目的のものは、観光パスよりもでっかく見えるトラックだった。トラックの荷台のウイングを上げる。すると、そこには、隙間なくビッチリと積み上げられた段ボール箱の山があった。何じゃこりゃあ???
そこに同僚らしき金髪のゴツイにーちゃんが近づいてきた。スンゲー、イカつい。コエー。街でバッタリ出くわしたら、ソッコー逃げ出すね。そんなにーちゃんが、話しかけてきた。
「さすがトモさんっすね。こんな荷物、俺だったら半ベソものっす。気をつけて下さい」
丁寧なお辞儀までされてしまった。こんなコエーにーちゃんからソンケーされてる親父って、実はスゲー人なのか??かーちゃんから、あんだけボロクソに言われている親父が?んなわけないか。
荷物やトラックの状態確認を済ませると、トラックのハンドルを握る。隣の隣の県までの移動。遠いなあ。つまらんなあ。なかなか着かないなあ。もう、夜が明けてしまったよ。こっちが荷物満載で車体が重く、あまり速く走れないからといって、無理やり前に割り込んでくるカス車、加速かけて潰してやろうか。車道をチンタラ走る自転車、ジャマなんだよ。こっちは車幅が広いから、追い越し難しいんだよ。おい、歩行者。お前の信号、もう赤になっているだろうが。こっちが青でも、轢いてしまったら、こっちが悪者になるんだよ。クッソー、この世の中、どんだけクソッタレばかりなんだ。知らなかった。親父、何も言わないもんなあ。
目的地に着いた。荷下ろし場所でトラックのウイングを上げる。そこに、ツメにプラスチックでできた板のようなものを差したフォークリフトがやって来た。その運転手さんが声をかけてきた。
「おはようさん。いつも通り、このパレットに荷物積んでいってな。あと、ラップ巻きよろしく」
運転手さんはリフトから降りて、でっかいサランラップみたいなものを渡してきた。何じゃこりゃ。
荷台の段ボールを一つずつ、手で下ろす。そしてパレットに積む。積み上がったら、渡された巨大サランラップで段ボールの小山を巻く。あちー。息が上がる。この段ボール、一体何個あるんだよ。頭がボーッとしてきた。うへぇ。まだ半分も終わってねえ。
「どうしたんだ、トモさん。今日はペースが遅いねえ。昨日飲み過ぎたんか?」
三つ目の空パレットを持ってきたリフトのおっちゃんが、からかってきた。うるせえ。こっちは最初から、トッブギアで出力全開だっての。あんたもからかってないで、リフトから降りて手伝ってくれたらいいじゃないか。
「今日のトモさん、変だねえ。俺も、向こうでこの荷物を手で下ろしていることくらい、知ってるだろ」
えっ。あんたもこれ、手で下ろしてるんかよ。リフトで運びながらって、どんだけ仕事速いんだよ。
汗まみれになって、ようやくの思いで全ての荷物を下ろしたら、もう昼前だった。頭がクラクラする。伝票に荷受のサインをもらうと、次の目的地へ。
そこでは、逆にトラックへの積み込み。同じように段ボールの山を、手で積み上げる。う、腕が上がらん……いや、上がるな。親父の体ってスゲーな。俺の体だったら、とっくに壊れてるぞ。
ようやくの思いで、親父の会社に戻ってきた。残務処理をして家に帰ったら、かーちゃんが晩飯を用意していた。そこには俺の姿も。中身は親父か?スゲー楽しそうにしてる。何だかムカつく。こっちは大変だったんだぞ。少しは申し訳なさそうにしろよ。
風呂に入ったら、疲れのせいか凄く眠くなってしまい、すくに布団に入って寝てしまった。
翌朝、目覚めたら、もう明るくなっていた。ヤバい。遅刻か?周りを見渡すと、どうも両親の寝室ではなくて自分の寝室みたいだ。慌てて洗面所へ行く。鏡で自分の顔を見た。そこには、高校生のイケメンがいた。元に戻った、戻った、戻った!!やった、ヤッター!!ありがとう、神様、ありがとう!!!
トモさんが仕事から帰ると、ダイニングテーブルに酒のツマミが置いてあった。妻に聞くと、
「あの子が渡しといてって。いつもお仕事お疲れ様って言ってたわよ」
「どういう風の吹きまわしだ?」
「さあ、知らないわよ」
妻は愛想のない声で答えると、夕食の準備に戻っていく。その背中にトモさんは問いかけた。
「アイツは今どこにいるんだ」
「部屋で勉強してるわ。いつもなら、まだ外で遊び呆けているのに。明日、雨じゃなくて槍が降ってくるかもね」
「確かにな」
トモさんは苦笑を浮かべた。
了
気がついたら〇〇になっていた!!! Yohukashi @hamza_woodin
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