「夢に向かって」
@mimitaburanko
第1話
大学4年の3月10日。
就職先が東京のため、実家で荷造りと断捨離とを両立していた。
「思い出」と大きく書かれたダンボールを開ける。そこには、昔遊んでいたカードゲームやDSのカセット、家族で初めて旅行に行ったときに描いた絵、小学生のときに初めて貰った自由研究の賞状、中学校の部活動の写真、卒業アルバム、高校の部活動の写真があった。そして、卒部式で貰った色紙である。改めて読んでみると汚い文字でみんな似たようなことを書いている。「2年間ありがとうございました。」とか「短い間でしたが」とか「先輩に憧れて」とか「次は僕たちが引っ張っていきます」とか「次の場所に行っても応援してます」とか、同じ脳みそ使ってんのかと突っ込みたくなる。ただ、もう名前と顔が一致しない今何をやってるのかどこにいるのかも分からないやつが書いた1文に目が止まった。
「夢に向かって頑張ってください」
あの頃は「応援してます」「頑張ってください」なんて何とも思わず当たり前のように先輩や後輩、同期、多くの仲間たちに言っていた。しかし今は簡単に気軽に言えなくなってしまった。ましてや「夢に向かって頑張ってください」なんて言える訳がない。夢って何なのだろうか。頑張るって何なのだろうか。それなら「死ね」の方が何倍も楽な気がする。
「夢に向かって頑張ってください」あの頃後輩が何とも思わず書いた1文は今の俺を殺すには十分だった。
「夢に向かって」 @mimitaburanko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます