ソウルヴァイサー(旧題:Signal‐破滅へのカウントダウン‐)

@ganian

読み切り版

時に2012年


我々と、ほとんど変わらない世界


「おー、やってるやってる」


青年が一人


空の上から地上を見ている


逆立った黒髪


着崩した制服


***



所代わって地上海岸近く


ビルが崩れ、道路が潰れる音


都市へ向かう、2メートルほどの怪物


全身からヒレと青い鱗


金魚の目とぶ厚い唇


対するは、自衛隊の戦車と対物砲


命中するが、びくともしない


崩れたビルを片手でぶん投げる


あたり一面火の海


「まだ…俺たちがいる!」


今度はロケットランチャー


生き残った隊員が撃ったもの


当然握り潰される


「お父さん!お母さん!」


小学生位の少年の声


瓦礫に隠れている


「しまった!助けなくては!」


怪物が地面を叩く


道路が競り上がる


「これじゃいけない…」


少年に向かう怪物


「やめろ!」


声は届かない


「どうすれば…」


「ひぃ…っ!」


少年に伸びた手が落ちる


「おぅガキ、ケガはねぇか?」


先ほどの青年が、少年の前に立っている


競り上がってたアスファルトが、溶けていく


「君!そんなところで何してるんだ!」


「あ?何?自衛隊の人?」


「危ないから逃げなさい!早く!」


「ワリぃけどこの子頼むわ」


「なっ!何言ってるんだ!」


「あ、ちょっと失礼」


ヤニに火をつけ一服


「そんなことしてないで早く」


「バーカ、上からの命令だ、早く撤退しろ」


「いやいってる意味がわから」


「大日本国政府特務機関“ソードオフ”所属、“ブラック・ダイアモンド”部隊長、焔山ひやま誠人せいとだ」


「ほれ」とバッジを見せる


「そんな部隊聞いたことないぞ!」


「はぁ?」


「なんの悪ふざけか知らないが、ここは子供の出る幕じゃ」


「うるさいぞ?」


「どっドラゴン!?」


誠人の背には刀の鞘


そこから竜が首を出す


あるじが退けと言ったのだ、それが聞けぬと言うのなら」


吐息に炎が混じる


「やめろ、火炎丸かえんまる


「むぅ…」


ちらりと誠人を見る


なんじ、主に感謝することだ、命拾いしたな」


今度は少年を見る


「小僧、主の妹君と年が近いのだろう、故に今回は見逃す」


轟音


怪物から


「腹が立っているのか」


一閃


誠人の手には日本刀


「うるせぇよ」


崩れ落ちる怪物


「来てるんだろ?てめぇのボスが」


地響き


「今度は何!?」


津波と間欠泉


地面から巨大な手


数十メートルはあろうかという巨人


人の体に魚の頭


「ボーッとしてんじゃねぇ!早く逃げろ!」



狙いはもちろん誠人達


「ちくしょう!」


刀で受け止める


「これじゃ持たねぇって!」


地面にめり込む


「早く行け!汝等がいては、主は本気を出せぬ!」


瓦礫を溶かして道を作る


「いこう!」


「うん!」


「…行ったようだな」


「じゃあ遠慮はいらねぇ!行くぞ!」


「御意!」


「-き尽くせ」


「-『火炎丸』っ!」


深紅と黒


二色の炎が地面を走る


瓦礫と地面と巨人の手


全てを溶かす


「手ぇ貸せ火炎丸」


刀身に集約される炎


飛炎ひえん


刧昇竜剣ごうしょうりゅうけん!」


二人が放つ炎がひとつの渦になる


一瞬で蒸発する巨人と津波


雨に混じる、焦げた肉の臭い


「シケちまった」


「状況終了、主も早く撤退を」


「いいじゃん別に」


「そうではない、始末書と追試が山のようにある」


「ゑ?」


「あと我を、早く納めて頂きたい、錆びてしまう」


「しょーがねーなー」



***



ここはとある場所



怪物が三体


「ダゴンやられましたね」


白スーツに仮面をつけた人形


「いいじゃねぇか別に、あいつ一番弱ぇし」


人魂


「空席にはあの男が座るんでしょ?忌々しい…」


黄色いローブ



「しかしあの強さ…見過ごせないものがありますね」


「何?びびってんのか?」


「どういう意味です?」


「コソコソ逃げるしか能がねぇもんな、テメェ」


「脳のないあなたに言われたくありません」


「あ?」


「お?」


「やめてよ二人とも」


「「だってコイツが」」


「いいからそういうの」


止めたのはローブ


「いくら僕たちでも失敗は許されないンだからね?わかってんの?」


「ええ、苦労しましたからね、あのお方にふさわしい星を探すのは」


「またその話?」


「もちろん手は打ってありますよ?」


「ケッ、上手くイくと思えねぇけどな」


「あ?」


「お?」


「もうやだコイツら」


***


ところ変わって


学校の屋上


「あーかったりぃ」


寝そべって空を見る、誠人


隣には火炎丸


「おい焔山!」


「うわ鬼瓦おにがわら先生!」


「何してやがる!こんなところで!」


「見っかっちまったよ!どうしよう火炎丸!」


「そら言わんことない…」


竜刃りゅうじん殿…我が着いていながらこのような失態…面目ありませぬ…」


「おう火炎丸、それよりも」


「焔山、ちょっと面貸せ」


「は?」


「いいからこい!」


「何だよもー」


「緊急事態だ」


ところ変わって会議室


「確定情報じゃねえから、まずリーダーのお前に話す」


「そんなにやべぇの?」


モニターをつける、鬼瓦先生


「世界各地で、奇妙な事態が観測された」


「奇妙?」


1つ目は巨大なクレーター


メキシコの森で撮影されたらしく、真ん中には大きく“W”の文字


2つ目はエジプトの三大ピラミッド


頂上に死体が積まれている


3つ目は北極海の探査船


甲板に血文字で北斗七星が刻まれている


4つ目は南極の調査隊


5人の男女が、磔にされている


「以上だ」


「確かにやべぇけど…よくニュースとかにならねぇよな」


「隠蔽してるからな、この前みたいに」


にらむ鬼瓦先生


たじろぐ誠人


「それで、だ」


今度は世界地図を取り出し、撮影場所を線で結ぶ


「メキシコ、エジプト、北極、南極」


「菱形か?」


「なーるほど?俺達への挑戦状ってわけ?」


「作用でございます」


モニターに砂嵐


「こきげんよう」


「何だよテメェ、変な頭しやがって」


「ほう…この姿を見て顔色一つ変えないとは…流石ですね」


モニターに映るのは、黄土色の皮膚に白いスーツ


細長く伸びた頭の怪物


「あのダゴンを倒したそうじゃありませんか?まさか我々の1柱を潰すとは…」


「そいつはどうも」


「私も含め、あと3柱の神々を頂点とする軍団を以て、貴殿方と遊んで差し上げましょう」



「上等だ、尻尾頭しっぽあたま



「し…しっぽあたま?…失礼ですね貴殿、この姿にはナイトクローラーという立派な名前が」



「知るかよそんなの、十分だろうが、尻尾頭で」



「ほう…?変わった啖呵の切り方をする御方だ…やっぱり面白いですね、焔山誠人」



「上等だ」



モニターに向かって中指を立てる誠人



「薄汚ねぇ首洗って待ってやがれ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ソウルヴァイサー(旧題:Signal‐破滅へのカウントダウン‐) @ganian

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る