華のJK、『冒険部』に入部しました!?

花見 はな

第1話 入学式

「えー、本日はお日柄も良く美原学園高等学校入学式を迎えられ大変嬉しく思っております……」


新入生が集められた体育館には暖かい日差しが入り、定型文の様なセリフを聞きながら眠くなってくる。

周りには真新しい制服に身を包んだ、私【園原瑞希】と同じ沢山の新入生達。

この美原学園は女子校だ。そして様々な授業コースがあるに加え、多種多様な部活動・同好会がありそれ目当てでの入校者が絶えない。大変人気な学園なのだ。目だけで周りを見ているとアナウンスが聞こえる。


「こちらで第60期美原学園高等学校、入学式を終了いたします。新入生が退場します、拍手でお送り下さい」


慌てて立ち上がり、そのまま退場の順番を待つ。親と先生方からの拍手にくすぐったい気持ちになりながら赤い絨毯の上を歩く。体育館を出て、これから1年間過ごす1年C組の教室に戻る。


教室に戻り慣れない自分の席に座ると担任らしき男性教師が教壇に立った。


「皆さんおはようございます。

今日からこのクラスの担任の【篠原剛】です、よろしくお願いします」


細身で少し長めな前髪が眼鏡にかかりそうになっている若めな先生。優しい口調だし女子人気が高そう、現に何人か顔が赤らんでる人もいるし。


「今日からこの学園の生徒になった皆さんには早速課題があります。うちの学園は多種多様な部活動・同好会で有名です、そして皆さんにもそれを体験してもらいます」


皆が呆然としている中、1人の生徒が質問をする。


「先生、体験ってどんなことするんですか??」


「それは部活動や同好会によりますが、下駄箱近くに掲示板があるのでそこに貼ってあるチラシを見て体験したい所を選んで下さい」


先生の話を聞いた上で、続々と質問の声が上がった。


「それって絶対行かないとダメ……ですか?」


「行ったあとなにかするんですか?」


「帰宅部希望だったんですけどー!」


少し困り笑いの篠原先生は順番に答えていく。


「まず課題という名目なので絶対です。

レポート提出という形で感想文を書いてもらうのと帰宅部希望は希望で全然構いません。ただ色々見て体験してから決めてほしいというだけです」


篠原先生の完璧な回答にクラス全員何も言えなかった。静かになった私達を見て、優しい笑みを浮かべる。


「じゃあHRは以上になります。

ちなみにレポートの期限は1週間後なので早めに動いて下さいね!

ありがとうございました」


「「ありがとうございました」」


HRが終わった後、先生は教室を出てクラスの皆もそれぞれ帰宅していく。きっと掲示板を見てから帰るのだろう。家が近いだけでこの学校を選んだ私は帰宅部で過ごそうとしていたので、入学早々に難しい課題だ。

人が少なくなってから帰りたかったので考えながら席に座っていると私の正面に見知った顔がやってきた。


「瑞希〜、帰らないの?」


同じ中学から進学した【若山律】。肩までのボブヘアに女子にしては少しだけ背が高め。性格はすぐに顔出てしまうので、わんこみたいな子だ。


「んー、だって人多いじゃん」


「確かに!瑞希、人混み苦手だもんね」


「そうそう。律は帰らないの?」


「せっかく瑞希と同じクラスだから声かける為に残ってた!」


満面の笑みを浮かべる律に思わずキュンとしてしまう。照れくさくなりちょっと冷たい態度になってしまった。


「はいはい、ありがとね」


「ほんとの事なのに…」


シュンとしょげてしまった律はわんこの様だ。良心が痛む。


「ごめんごめん、そんな顔しないで…

律と話せて嬉しいから!」


「ほんと!?嬉しい!

じゃあこのまま一緒に帰ろう!」


「…分かった」


クラスには私達しかいないし、廊下にも声が響いてないのでもう皆帰ったみたいだ。

鞄を持ち律と2人下駄箱に向かう。つい先日まで通っていた中学時代の話をしているとあっという間に着いた。

そしてそこには無視できないくらいの掲示板がおかれており、所狭しにチラシが貼り付けてある。


「このチラシの量はすごいなぁ」


「だよね〜!

なんでも、部活動とか同好会が多すぎて勧誘行為は禁止だからその代わりの掲示板らしいよ」


「なるほど…」


「瑞希はどこ見に行くの??」


「まだなんも決めてないよ、帰宅部希望だし」


「え〜〜!!つまんないよ?」


「じゃあそんな律はどこ見に行くの?」


「えっとね、お菓子作りが出来る製菓部かな」


背の高さもあり運動部に在籍してた律だが、本当はお菓子作りが好きな為照れながらも楽しみで仕方ないといった顔をしている。

うぅ、このわんこは可愛すぎる反応をするから一瞬息が止まった。


「っ……頑張れ、それで作ったやつ全部食べるから!」


「ありがとう〜!

瑞希もちゃんと選んで探すんだよ!」


「……分かった」


「もう、分かってないでしょ!」


「よし、帰ろ!」


「まったく……」


掲示板に背を向けて帰ろうとした時、ふと目に付いたチラシがあった。


《JK冒険部!!徒歩で来てる子大募集!》


他のチラシに比べて簡素だし適当感満載なのに気になってしまう。そのまま少しチラシに目がいっていると律が急かす声が聞こえる。


「瑞希〜、早く帰ろ!!」


「うん、ちょっと待って!」


また明日見ようと思い気になったまま靴を履き学校から出る。

今日から新生活が始まった、どんな高校生活になるのかまだソワソワする。

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