勇者パーティーがギャンブル依存症で壊滅っておかしくね?

@takashi-y

勇者パーティーがギャンブル依存症で壊滅っておかしくね?


この国では長年、魔王軍との対立が続いている。国王は魔王討伐のため、勇者パーティーを編成した。


「目標は魔王を倒すことだ。軍資金は潤沢に用意した。さっそく討伐の旅に出てもらおう。」


勇者は歴戦の強者だ。自信ありげに答える。


「お任せ下さい。我々に失敗はありえません。魔王を討ち取ります。」


旅に出てしばらくし、パーティーは物資の補給をするため、歓楽街のある町に立ち寄った。カジノで栄える街だ。


僧侶が街の見回りに行ってきた。


「ここはカジノで成り立ってる町ですね。観光客も多い。魔王軍に襲撃されたら大きな被害が出かねない。我々もカジノがどんな仕組みなのかを勉強しつつ、町の成り立ちをしっかり把握しておきましょう。」


魔法使いが興味を示した。


「そうだね。ギャンブルとは胡散臭いけど、社会勉強を兼ねて試すのはいいだろう。魔法を使って勝てるだろうか?」


戦士も言った


「とりあえず、俺もついて行こう。勝負事は好きだし、試す程度ならな。」


勇者は違った。


「お前らがギャンブルにハマったらどうするんだよ。金なんかいくらあっても足りないぞ。こういうのは最初から関わらないのが一番なんだ!」


勇者の警告にはすでに意味はなかった。

他の3人はカジノを試しに行く。


しばらくして、僧侶、魔法使い、戦士はカジノに入り浸るようになった。ギャンブル依存になってしまう。


ギャンブルの元手は王都で出発時に国王からもらった貴重な資金だ。


3人の状態は深刻で、頭では大事なお金だと分かっていても、歯止めが効かずにカジノにつぎ込んでしまう。


勇者は事態を絶望的に見た。

知らない間に軍資金はほとんどなくなっている。

王都に手紙を送って、国王に状況報告した。


「国王陛下、我々はギャンブルにハマって軍資金を失いました。どうか、追加で資金の支援をお願いします。ちなみに、ギャンブルに狂っている他の3人は正気に戻りそうにありません。」


国王はあ然とした。


「ギャンブルだと!金の無心をされるとは思いもしなかった。」


しばらく、打開策を考え、結論を出した。


「ギャンブル依存を辞めさせるのは無理だな。もう、手遅れだ。他に熱中できるギャンブルに移行させよう。ピンチでもチャンスでもある。」


国王は勇者パーティーを王都に呼び戻した。


王都に着いた彼らは、なんと新しいカジノに案内された。


国王は説明した。


「これは、最新のルーレットだ。最高額の報酬は手付金3億トル、成功報酬15億トルの魔王討伐だぞ。一生かかっても使い切れない金額だよ!」


システムはこうだった。


「君らにはもう手持ちの金は無いだろうから、無料で回せるチケットをいくつかあげるよ。チケットがなくなったら、お金を貸そう。後払いで構わない。どうだね?やるかな?」


依存症3人が血走った目で言った。


「やります!賞金を取るまで諦めません!」


勇者は落ち着いていたものの、


「君らがやるなら俺もやろう。さっさと魔王討伐を引き当てたほうがいいだろう。」


こうして、パーティー全員でギャンブルをやることになった。


4人はルーレットに挑戦するも、なかなか魔王討伐を当てられない。全員無料チケットを使い果たし、すでに、金を借りていた。


自分だけは理性を保ち続ける自信があった勇者も、異常な興奮状態から抜け出せない。


「もう少しだ、もう少しで当てられるはずだ。ここで終わってたまるか!」


どんどん、4人の借金は膨れ上がっていく。


国王の作ったルーレットは、パーティー全員を沼に引き込んだ。

国王はルーレットを依存症製造装置と名付けていた。依存状態を作り出せば、プレーヤーは報酬の為にひたすら没頭する。


ついに、

勇者は、魔王討伐を引き当てた!


「よっしゃああ!お前らっ!魔王討伐に行くぞ!俺について来い!」


この国は再び平和に向かって動き出した。

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