エピローグ
エリザは、家族の前で静かに身支度を整えていた。18歳の誕生日を迎えたその日、ついに彼女はローズウッド家を出る決意を固めた。新しい一歩を踏み出す瞬間が、こんなにも胸を高鳴らせるものだとは思っていなかった。家の中は、まるで今までの穏やかな日常が突然終わりを告げるような、そんな雰囲気が漂っていた。
父ヴィンセントはいつもと変わらない無表情でありながら、その眼差しはどこか誇りに満ちていた。母リディアは少し涙を浮かべ、でもそれを見せまいと微笑んでいる。祖母は静かに彼女の手を握りしめ、何も言わずにその手の温もりを伝えていた。
そして、弟のフィリップは、2歳を迎えるその直前、元気に遊びながらエリザに手を振っていた。その姿を見たエリザの心は温かくなり、何度も思い返してきた家族との時間が心に浮かんだ。フィリップの無邪気な笑顔を見て、彼がこれからどんな成長を遂げるのかを見守ることができなくなることが、少し寂しくも感じた。
エマは、エリザが家を出る日が来ることをずっと知っていた。それでも、涙をこらえきれなかった。エリザにとっては親友であり、家族のような存在だったエマは、エリザが新しい道に進むことを心から応援していたが、それでもやはり、彼女がいなくなることは辛かった。
「エリザ、あなたがいなくなるなんて信じられない…」エマは涙声で言った。
エリザは彼女の手をしっかりと握りしめ、「私はいつでも戻ってくるから。」と笑顔で答えた。その言葉に、エマはますます涙を流しながらも、エリザの手を強く握り返してくれた。
「ありがとう。ありがとう、エリザ。」エマは、涙をぬぐいながらも、その笑顔は心からのものだった。
エリザは少し背を伸ばして、振り返りながら家を見渡した。家族が大切にしてきたこの場所、愛と温かさに包まれたローズウッド家での生活。ここで過ごした時間は、彼女にとってかけがえのないものだ。それでも、自分の人生を歩むためには、この場所を離れ、新たな道を進むことが必要だと感じていた。
そして、アレクシスが待つ外の世界へと一歩を踏み出す。彼との未来、そして自分の夢を追い求める自由。それは、どんなに素晴らしいことでも、不安と期待が入り混じった道のりであることを理解していた。それでも、彼と共に歩んでいくことを決めたエリザは、その先に待っている未来を信じていた。
「行ってきます。」エリザは、家族に向かって微笑んだ。ヴィンセントが一言「元気でな」と静かに言うと、リディアは「必ず帰ってきてね」と言って抱きしめてくれた。その温かさに胸がいっぱいになったエリザは、深呼吸をしながら家の門をくぐった。
外の世界は、彼女を待っている。アレクシスがすぐに駆け寄ってきた。彼は、少し照れくさい笑顔でエリザに声をかけた。「準備はできたか?」
「はい、できました。」エリザは力強く答え、彼の手をしっかりと握り返した。
その瞬間、エリザは自分の中で何かが確かなものに変わったことを感じた。これから先、どんな道を歩んでいこうとも、彼と一緒にいることで、自分の未来がより明るく照らされることを信じて疑わなかった。
「一緒に行こう、エリザ。」アレクシスは優しく微笑み、エリザの手を引いた。
その手に包まれた温もりは、エリザにとって最も安心できる場所だった。二人は並んで歩きながら、これからの新しい生活を語り合った。その中でエリザは、自分が自由に生きることの大切さ、そして家族との絆を守ることの意味を、改めて実感していた。
新しい生活が始まった。アレクシスと共に進む道には、予想できないことがたくさん待っているだろう。それでも、エリザは何があっても自分らしく生きることを誓っていた。
その夜、エリザは初めて、自分の新しい家で眠りについた。新たな朝が訪れ、また一歩、未来に向かって踏み出す日がやってくる。その先に待っているのは、彼女の夢と自由、そして愛する家族と共に築く幸せな未来だった。
そして、エリザは今、自分にとって何よりも大切なことを知っていた。それは、どんなに遠くにいても、家族との絆が自分を支えているということ。彼女の心には、家族との思い出と、未来への希望がしっかりと根づいていた。
エリザはその未来を信じ、歩き続けるのだった。
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転生しても私らしく—エリザの誓い— 明日木 @asugi
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