第12話「未来への一歩」

エリザは、公園のベンチに座りながら、すでに決めた未来を振り返っていた。アレクシスとの婚約を受け入れる決断をしたその日から、心の中で新たな希望と不安が入り混じっていた。彼との関係がどこに向かうのか、その未来がどんな形を取るのかは、まだはっきりとは見えていなかったが、確かなのは、もう迷ってはいけないということだった。

これまでに何度も会話を重ね、お互いの思いを少しずつ確かめてきた。そして、彼の存在がエリザの心に確実に根を下ろし、彼の優しさと理解を感じるたびに、次第に自分の気持ちに自信が持てるようになった。彼と過ごす時間が増えるごとに、エリザは彼に対してただの尊敬や友情ではなく、深い感情を抱くようになっていた。だが、それでも心の中には迷いが残っていた。結婚について、まだ早いのではないかと思う自分がいたからだ。

それでも、エリザは決意した。自分の気持ちをアレクシスに伝え、そして一歩を踏み出すこと。彼の前で、何も隠さず、素直な気持ちを告げる覚悟を決めた。

再び公園で会うことになったその日、エリザは緊張しながらも、心の中で繰り返し言葉を噛み締めていた。彼に自分の思いを伝えること、それが今日の目標だった。そして、アレクシスの姿が遠くに見えたとき、エリザは少しだけ安堵の息をついた。彼がここにいる、それだけで心が落ち着く。

「エリザ、久しぶりだね。」アレクシスはいつもの軽やかな笑顔でエリザに声をかけた。その笑顔を見るだけで、エリザは気持ちが少し軽くなった。彼の穏やかな眼差しに、心がふわりと和らいだ。

「はい、久しぶりです。」エリザも微笑み返しながら、その後すぐに気持ちを引き締めた。これから言わなければならない言葉が、胸の奥で渦巻いている。彼に、すべてを伝える時が来たのだ。

「アレクシス、私は…あなたとの婚約を受け入れることに決めました。」エリザは少し躊躇った後、言葉を口にした。その言葉が空気を震わせ、心の中で何かが弾けるのを感じた。

アレクシスは驚きの表情を浮かべた後、しばらく黙って考え込んだが、やがて微笑みながら言った。「それでいいよ、エリザ。君の未来を選ぶのは君自身だ。どんな道を選んでも、僕は君を応援するよ。」

その言葉に、エリザは胸が温かくなるのを感じた。彼がすべてを受け入れ、背中を押してくれる。彼の言葉には、深い思いやりと確かな信頼が込められていた。それが、エリザの心を大きく震わせた。

「ありがとう、アレクシス。」エリザは心から感謝の気持ちを込めて答えた。「でも、結婚はまだ早いと思うの。私は18歳になるまで、自分の道をしっかり考えてから決めたい。だから、結婚の時期は少し先延ばしにしたいと思う。」

アレクシスは頷き、穏やかな表情で言った。「それでいいよ。君が決めたことを尊重する。焦ることはないし、君が考える時間を持って、それから進んでいこう。」

その言葉に、エリザは安堵の息をついた。彼が自分の決断を理解し、温かく受け入れてくれることが、こんなにも大きな安心感を与えてくれるとは思わなかった。

その後も二人は、公園の中を静かに歩きながら話を続けた。エリザは、アレクシスとの関係がますます深まっていくことを感じていた。しかし、まだ一つ、大きな決断が残っていた。それは、家族にこの婚約についてどう伝えるかということだった。

数日後、エリザは家族と共に食卓を囲んでいた。心の中で、家族に自分の選択をどう伝えるかを考えながら、エリザは口を開いた。「お父様、私はアレクシス・フォン・セレスティアと婚約することに決めました。しかし、結婚は18歳になってから、しっかり自分の道を考えてから決めたいと思っています。」

父は驚いた様子を見せたが、すぐに冷静に答えた。「君がそう決めるなら、私は君の選択を尊重する。しかし、君が幸せであれば、それが最も重要だ。」

母リディアは涙を浮かべながら微笑み、「あなたが幸せなら、私はそれでいいの。私もあなたを応援するわ。」と言った。

祖母は静かに微笑みながら言った。「エリザ、あなたの選んだ道が素晴らしいものであることを願っています。あなたが幸せなら、私も嬉しい。」

エリザは家族の理解と愛情に包まれ、胸がいっぱいになった。家族からの温かい言葉が、彼女の心に深く響いた。この瞬間、エリザはもう迷うことなく、自分の選んだ道を進む決心を新たにした。

その日、家族にはもう一つの大きなニュースが伝えられた。それは、母が妊娠しているという知らせだった。エリザはその知らせを聞いて驚き、喜びが込み上げてきた。新しい命が家族に加わることに、心からの期待を抱きながら、彼女は次のステップへと進む準備が整った。

「エリザ、あなたに弟か妹ができるわ。」母は優しく微笑んで言った。

エリザはしばらくその言葉を受け止め、やがて笑顔で答えた。「楽しみです、お母様。」新たな命の誕生が、エリザにとって新しい希望と責任を感じさせた。そして、自分の未来を、これからも大切に歩んでいこうと心に誓った。

その後、エリザはアレクシスとの婚約を正式に家族に伝え、家族の支えを得て、心強く彼との関係を深めていくことを決意した。新しい命の誕生を迎える準備をしながら、彼女は自分自身の未来を形作っていくことを決めた。これからも、アレクシスと共に、希望と愛に満ちた未来を歩んでいくのだろう。



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