第5話 虚像
お題:「鏡」「雨」「コーヒー」
11月1日 朝、出社しようと家を出てすぐに「お前は誰だ」と声がした。しかし周りを見渡しても誰もいない。その日は雨が降っていて傘を差していたため視界が悪かったとはいえ、声は近くで聞こえたのでそんなすぐに隠れられるとは思えない。不気味だったが遅刻しそうだったためそれ以上は考えずに道を急いだ。そのせいで水たまりに足を突っ込んでしまい靴が濡れた。最悪だ。
11月5日 カフェでコーヒーを飲んでいるとまた「お前は誰だ」と声が聞こえた。その時周囲に人は数人いたけどこの内の誰かの仕業だろうか?でも誰も「声」に反応していないのは不思議だ。もしかして幻聴?明日は休日なので病院に行こうと思う。
11月8日 起きてから顔を洗おうと洗面台に立ち、水を出そうと蛇口に目を落としたとき、「お前は誰だ」という声が真正面から聞こえた。驚いて顔を上げると当然そこには鏡に映った私がいた。
11月9日 料理をしようと包丁を出したところ声が聞こえた。私は包丁を紙で包んで棚の奥にしまった。
11月10日 仕事から帰宅するとアパートの窓から声がした。私はカーテンで窓を塞ぎ、二度と開かないようにガムテープで封印した。
11月11日 スマホ
11月12日 影
私は遮光カーテンで締め切られ、電気を消した真っ暗な部屋の中で膝を抱えている。ここなら「あれ」は来れない。精神的にまいった私は2日前に隠したスマホを震える手で操作し、母に助けを求めた。部屋の外から音がする。来てくれたんだ!ノックが聞こえ、私は部屋の扉に手を伸ばす。外から声が聞こえた。
「お前は誰だ」
三題噺保管庫 でんの @dennno
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