十日夜

磐長怜(いわなが れい)

2024

あっ君! 帰省してきた人?

今日はこっち入っちゃだめだから…ってあああー!

入ってる!入っちゃってるよぉー!

よく見てよ、片足。入ってます!

今更田んぼから出ても遅いから

君、藁鉄砲わらでっぽうは持ってるの?

……お持ちでない!

これだから都会のネオンに染まった奴は

今日みたいに特別な日になんの装備もないとか、

ドラゴンに旅人の服で相手するようなもんよ

え?俗っぽい?

知らないよ、最近は大人もそんな話してるから覚えちゃったんだよ


あ、風が吹くよ。静かにして…


良かった、まだ神様のお通りには早いみたいだ。

本当はね、子供はもう少なくて、藁鉄砲は大人も叩いてたよ

モグラやネズミがいなくなるようにって

懐かしいな。土は覚えてるんだ

とは言っても、モグラは肉食だから天敵はネズミだけなんだけどね


え?僕が誰って?この葉っぱを見てもわからない?

じゃあヒント

十日夜の今日、僕が割れる音を聞くと人が死ぬって言われてるよ

ふふん、怖いでしょ

というのは他の地方の話で、藁鉄砲の振動で僕は少し伸びる、にょきっとね


さぁ、お遊びはここまで

久々に帰ってきたと思ったら、君はちょっと疲れてるんじゃない?

田んぼに足なんか突っ込んでないで、早く家に帰って、カカシと一緒にブドウでも食べるといい


で、僕は誰だって?

これだから…、まぁいいか

大根だよ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

十日夜 磐長怜(いわなが れい) @syouhenya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ