5・5 ξ¯,N(ξ¯)

○前段


1 : Die Welt ist alles, was der Fall ist.

世界は全てである。あらゆる何か、その現象がそこにあるに依る。


2 : Was der Fall ist, die Tatsache, ist das Bestehen von Sachverhalten.

何が提示されているのか。事実・現象とは事態が実在することである。


3 : Das logische Bild der Tatsachen ist der Gedanke.

事実・現象の論理上の像が、思考である。


4 : Der Gedanke ist der sinnvolle Satz.

思考は意味のある命題である。



ここまでのまとめ:

「世界」より「命題」を引き出している。

 世界→事実・現象の集合体。

 事実・現象→事態の集合体。

(事態は更にこと・ものに分解される)

 事実・現象を観測する→像。

 像の具体化(→写像化)→思考。

 思考の有意味化→命題。


課題→命題の「語りえること」の最大化。



5 : Der Satz ist eine Wahrheitsfunktion der Elementarsätze. (Der Elementarsatz ist eine Wahrheitsfunktion seiner selbst.)

命題は要素命題の真理関数である。 (要素命題はそれ自体の真理関数である。)


5.1 : Die Wahrheitsfunktionen lassen sich in Reihen ordnen. Das ist die Grundlage der Wahrscheinlichkeitslehre.

真理関数は直列に配置ある。これが確率の基礎となる。


5.2 : Die Strukturen der Sätze stehen in internen Beziehungen zu einander.

命題の構造は内部的に相互に関連している。


5.3 : Alle Sätze sind Resultate von Wahrheitsoperationen mit den Elementarsätzen. Die Wahrheitsoperation ist die Art und Weise, wie aus den Elementarsätzen die Wahrheitsfunktion entsteht. Nach dem Wesen der Wahrheitsoperation wird auf die gleiche Weise, wie aus den Elementarsätzen ihre Wahrheitsfunktion, aus Wahrheitsfunktionen eine neue. Jede Wahrheitsoperation erzeugt aus Wahrheitsfunktionen von Elementarsätzen wieder eine Wahrheitsfunktion von Elementarsätzen, einen Satz. Das Resultat jeder Wahrheitsoperation mit den Resultaten von Wahrheitsoperationen mit Elementarsätzen ist wieder das Resultat Einer Wahrheitsoperation mit Elementarsätzen. Jeder Satz ist das Resultat von Wahrheitsoperationen mit Elementarsätzen.

すべての命題は要素命題の真理値演算の結果である。真理演算は、真理関数が要素命題から生じる方法である。真理演算の性質に従って、基本命題がその真理関数になるのと同じように、真理関数は新しいものとなる。すべての真理演算は、要素命題の真理関数から、要素命題の真理関数、つまり命題を作成する。要素命題の真理値演算の結果を伴うすべての真理値演算の結果は、同様に、要素命題の真理値演算の結果となる。すべての命題は、要素命題の真理演算の結果である。


5.4 : Hier zeigt es sich, dass es »logische Gegenstände«, »logische Konstante« (im Sinne Freges und Russells) nicht gibt.

ここで、(フレーゲとラッセルの意味での)「論理オブジェクト」や「論理定数」が存在しないことが明らかとなる。


5.5 : Jede Wahrheitsfunktion ist ein Resultat der successiven Anwendung der Operation (-----W)(ξ¯,....) auf Elementarsätze. Diese Operation verneint sämtliche Sätze in der rechten Klammer, und ich nenne sie die Negation dieser Sätze.

すべての真理関数は、演算 (-----W)(ξ¯,....) を要素命題に連続的に適用した結果である。この操作は右括弧内のすべての命題を否定するもので、私はこれをこれらの命題の否定と呼ぶ。



ここまでのまとめ:


 命題Aはその命題を確定するために無数の前提となる命題に分解される。なお前提とされる命題もまた無数の前提となる命題に分解される。この前提は無数に続くが、どこかで「最も小さい命題」にたどり着くはずである。仮にこの命題を要素命題と呼ぶ。

 逆に言えば、この要素命題に様々な演算を掛けて出力した結果、すなわち真理関数の一つが命題Aである、と言える。そしてこの命題Aは論理空間上にある「適合しない要素命題を偽として省いた先に浮かび上がる」と言うことが出来る。



○派生図


501

|……

├501

||├2

||└3

|├11

||├2

||├3

||├4

||└51

|├21

||├2

||├3

||├4

||├5

||└61

|| └2

|├301

|||├2

|||└3

||├1

||├21

||├3

||├4

||└51

|| └2

|├41

||└21

|| ├2

|| └3

|└51

| ├21

| ├3

| |41

| |└2

| ├5

| ├61

| |├2

| |└3

| └71




5.501 : Einen Klammerausdruck, dessen Glieder Sätze sind, deute ich - wenn die Reihenfolge der Glieder in der Klammer gleichgültig ist - durch ein Zeichen von der Form »(-)« an. »-« ist eine Variable, deren Werte die Glieder des Klammerausdruckes sind; und der Strich über der Variablen deutet an, dass sie ihre sämtlichen Werte in der Klammer vertritt. (Hat also - etwa die 3 Werte P, Q, R, so ist (-)=(P,Q,R).) Die Werte der Variablen werden festgesetzt. Die Festsetzung ist die Beschreibung der Sätze, welche die Variable vertritt. Wie die Beschreibung der Glieder des Klammerausdruckes geschieht, ist unwesentlich. Wir können drei Arten der Beschreibung unterscheiden: 1. die direkte Aufzählung. In diesem Fall können wir statt der Variablen einfach ihre konstanten Werte setzen. 2. Die Angabe einer Funktion fx, deren Werte für alle Werte von x die zu beschreibenden Sätze sind. 3. Die Angabe eines formalen Gesetzes, nach welchem jene Sätze gebildet sind. In diesem Falle sind die Glieder des Klammerausdrucks sämtliche Glieder einer Formenreihe.

メンバーが命題である括弧式は、括弧内のメンバーの順序が無関係な場合は、「(ξ¯)」という形式の記号で示します。 「ξ¯」は、その値が括弧式のメンバーである変数です。変数の上の行は、括弧内のすべての値を表すことを示します。 (つまり、P、Q、R の 3 つの値がある場合、(ξ¯)=(P,Q,R) となります。) 変数の値は固定です。固定とは、変数が表す命題の説明です。括弧内の式のメンバーがどのように記述されているかは重要ではありません。 3 種類の記述を区別できます。 1. 直接列挙。この場合、変数の代わりに定数値を設定するだけで済みます。 2.関数 fx の仕様。その値は、x のすべての値に対して記述される命題です。 3. それらの命題が形成される正式な法律の記述。この場合、括弧内の式のメンバーはすべて、一連の形式のメンバーです。


5.502 : Ich schreibe also statt »(-----W)(ξ,....)« »N(ξ¯)«. N(ξ¯) ist die Negation sämtlicher Werte der Satzvariablen -.

したがって、「(-----W)(ξ,....)」の代わりに「N(ξ¯)」と書きます。 N(ξ¯)は、設定された変数ξ¯のすべての値の否定です。


5.503 : Da sich offenbar leicht ausdrücken lässt, wie mit dieser Operation Sätze gebildet werden können und wie Sätze mit ihr nicht zu bilden sind, so muss dies auch einen exakten Ausdruck finden können.

この操作でどのように命題を形成できるか、またどのように命題を形成できないかを表現するのは明らかに簡単なので、これも正確な表現を見つけなければなりません。


5.51 : Hat - nur einen Wert, so ist N(ξ¯)=~p (nicht p), hat es zwei Werte, so ist N(ξ¯)=~p.~q (weder p noch q).

- の値が 1 つだけの場合は、N(ξ¯)=~p (p ではありません)、2 つの値がある場合は、N(ξ¯)=~p.~q (p でも q でもありません)。


5.511-5.5151


5.52 : Sind die Werte von ξ sämtliche Werte einer Funktion fx für alle Werte von x, so wird N(ξ¯)=~(-x).fx.

ξの値が x のすべての値に対する関数 fx のすべての値である場合、N(ξ¯)=~(-x).fx。


5.521-5.5262



5.53 : Gleichheit des Gegenstandes drücke ich durch Gleichheit des Zeichens aus, und nicht mit Hilfe eines Gleichheitszeichens. Verschiedenheit der Gegenstände durch Verschiedenheit der Zeichen.

私はオブジェクトの等価性を、等号の助けを借りてではなく、記号の等価性によって表現します。記号の多様性による対象の差異。


5.5301-5.5352


5.54 : In der allgemeinen Satzform kommt der Satz im Satze nur als Basis der Wahrheitsoperationen vor.

一般的な命題形式では、命題内の命題は真理演算の基礎としてのみ発生します。


5.541-5.5423


5.55 : Wir müssen nun die Frage nach allen möglichen Formen der Elementarsätze a priori beantworten. Der Elementarsatz besteht aus Namen. Da wir aber die Anzahl der Namen von verschiedener Bedeutung nicht angeben können, so können wir auch nicht die Zusammensetzung des Elementarsatzes angeben.

ここで、私たちは要素命題の可能なすべての形式に関する質問にアプリオリに答えなければなりません。要素命題は名前で構成されます。しかし、異なる意味を持つ名前の数を指定することはできないため、基本集合の構成も指定できません。


5.551-5.557


5.5571 : Wenn ich die Elementarsätze nicht a priori angeben kann, dann muss es zu offenbarem Unsinn führen, sie angeben zu wollen.

もし私が要素命題をアプリオリに述べることができないのであれば、それを述べようとすることは明らかなナンセンスにつながるに違いありません。


5.6 : Die Grenzen meiner Sprache bedeuten die Grenzen meiner Welt.

私の言語の限界は、私の世界の限界を意味します。




 さすがにこれ全条文載せるだけ無意味だわ。何もかもわからん。わからんけど、ふいんきが徐々に[p¯,ξ¯,N(ξ¯)]に向かいつつあるのは感じる。


 要素命題が論理空間の中にどれだけあるかはよくわからん、わからんけどとりあえずその全部をξにまとめた。こいつの「全て」を取り扱う場合はその上に¯をつける。で、ξのうち真になるやつ「全部」をまとめましょう。偽になるやつ「全部」はN(ξ¯)として別の箇所に置きましょう。そういう感じのようである。じゃあp¯はなに? まだわからん。


 それとさぁ、フレーゲやラッセルは論理学について書く時安易に「=」なんて記号を用いるけど、これこそが誤解を招く表現なのでこいつもカットしないとダメ。こいつのせいでラッセルのパラドクスが起こっちゃってるんですよもう。


 とか言ってはいるんですが「ほらこの通り! 明快でしょう!?」と示されるテキストがもうさっぱりわからん。クソ、天才め。


 5.5番台はマジで無理なのだが、そのラストである5.5571という収束点では「die Elementarsätze」と書かれており、訳文では吹っ飛ばされているdieを「特定の」とすべきなのだろう、と感じている。つまりとあるひとつの要素命題は論理的分解から存在を確定できるのだが、それが「具体的にどのようなものであるかを語る」ことはできない、ということなのだろう。


 こうして『論考』の本丸たる5.5番台を泣きながらほぼスルーし、5.6番台、大テーゼ5の最終段に入る。「私の言語の限界は、私の世界の限界を意味します。」ここは主観者の分析しうるものの限界、と言う風に捉えることが可能そうなのだが、ただ一方で省略した部分にこんなテーゼもある。


5.5421 : Dies zeigt auch, dass die Seele - das Subjekt etc. - wie sie in der heutigen oberflächlichen Psychologie aufgefasst wird, ein Unding ist. Eine zusammengesetzte Seele wäre nämlich keine Seele mehr.

これはまた、今日の表層心理学で理解されている魂 - 主体など - が馬鹿げたものであると示しています。合成された魂はもはや魂ではなくなります。


 んんんんんん? いままでの議論を読む中で「世界」と「像」の間に「私」、すなわち「それを観測する主体」が抜けていると感じていたのだが、ヴィトゲンシュタインはそんなものはない、と否定した感じ? えー、これちょっと恐いな。さすがに5.6は飛ばし飛ばしでいかず、慎重に歩いて行こう。

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ヴィトゲンシュタインを読む ヘツポツ斎 @s8ooo

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