SS クリスマスにはやっぱりケーキだね

(※時系列的には半年前のクリスマスです)


「はぁ……」


 今日はクリスマスだというのに、僕は大きなため息をついた。

 それは、彼女冬美のことでだ。


 ★


 一週間前に僕は勇気を振り絞って冬美に「クリスマスデートしようよ」と伝えた。僕達はとても仲がいいので、絶対にOKしてくれると思っていた。しかし答えはNOだった。

 理由は、「クリスマスに親友達と遊ばないと、彼氏いることがばれるから」だそうだ。

 僕はその理由を聞いた時は、『そっかぁ~、それなら仕方ないな』と思っていたが、後から考えてみると、シンプルにという意味だった。


 ★


 せっかくのクリスマスだ。少しは楽しいことをしたいな。

 ピコン♪

 そんなことを思っていると、スマホが通知音と共に震えた。

 なんだろう……。


 その通知は冬美からだった。

 僕はいま求めている人からのメッセージに喜びを隠しきれず、ウキウキしながらLINEを開いた。


「——えっと?『今日私がで遊んでるからと言って、他の女友達と遊ばないでよね?もし遊んだたら即別れるから』……」


 なにこれ……。重い。

 というか、って男子いたよな?

 理不尽すぎるよ。


 冬美からのメッセージで、僕の心はもっと沈んだ。

 今更だけど、僕に女友達なんていないし……。


 コンコンコンッ!

 僕が心の中でブツブツと呟いていると、突如部屋の扉がノックされた。


「入っていいよ」


 今家に両親はいない。だから、僕の部屋の扉をノックしたのは――


「おはようお兄ちゃん!」


 ――妃菜だった。


「おはよう」

「あれ?」


 妃菜は部屋を見渡してなぜか不思議そうに首をかしげている。


「ど、どうかしたか……?」

「今日は彼女とデートはないの?」

「あぁ、ないよ」

「え!?クリスマスなのに」

「——うっ!」


 妃菜の何の悪意もない一言が、俺の心にとどめを刺した。

 僕は悲しくなって、無意識のうちに涙を流すと、妃菜は慌ててハンカチを出し、僕の涙を拭ってくれた。

 ほんと、なぁにやってんだ。


「じゃあ、今日はクリぼっち同士一緒に楽しんで脱、クリぼっちしようよ!」


 目をこれでもかってくらいに輝かせている妃菜を見ていると、なんだか断りづらくなってしまい、俺は渋々頷いた。

 しかし妃菜と一緒に楽しむことが決まると、自然と僕の心は軽くなっていった。

 ――『今日私がで遊んでるからと言って、他の女友達と遊ばないでよね?もし遊んだたら即別れるから』……。

 妃菜は友達じゃなくて妹だからいいよな……?


 妃菜と午前中はクリスマスにテレビで放送される、男の子が泥棒から家を守る映画を見た。

 何度見ても面白く、自然と僕の頬が緩んだ。

 そして何よりも嬉しかったのが、妃菜は僕が冬美と付き合ってから少々拗ねていたのだが、今日は妃菜のとても楽しそうに笑っているところを見ることができたことだった。


 映画を見終わると、僕達は一緒にオムライスを作って食べた。

 僕は以前お父さんと2人暮らしをしていたため料理は出来るのだが、妃菜の料理スキルはとても高く、ほとんど手伝うことしかできなかった。

 しかし、オムライスはトロッとしていてとても絶品だった。


「ねぇ、お兄ちゃん。せっかくのクリスマスだから一緒にクリスマスケーキを作らない?」


 クリスマスケーキか。ここ5年くらい食べてないな……。


「いいぞ。作ろう!」

「やったぁ!今から材料買いに行くぞ~!」


 ★


 それから近くのスーパーで材料を買い、ケーキ作りを開始した。

 作るのは、ガトーショコラ。簡単に作れそうなレシピを検索し、お互いに手分けをして順調に作っていった。


「――ここってこれであってるか?」

「ん――っとね、ここはもう少し牛乳を入れた方がいいね」

「ん。わかった、ありがとう!」

「えへへ」


 僕が素直にお礼を言うと、妃菜は顔をゆでだこのように真っ赤にして照れていた。

 可愛らしいい妹だこと。



 先程一緒に作った生地を、型に入れてオーブンで焼くと、とてもふっくらとしたガトーショコラができた。

 オーブンを開くと、チョコレートの甘い香りがキッチン中に広がった。

 横目に妃菜を見てみると、目を輝かせてよだれを垂らしていた。

 僕はその様子を見て苦笑してから、粗熱を取るために大きな皿を出した。

 妃菜はもう食べれると勘違いしていたらしく、とても残念そうな顔をしていた。


 15分ほど経つと完全に粗熱が取れた。


「「できた~!!」」

「お兄ちゃん、早く食べようよ!」

「よし食べるか」

「やったぁ!」


 妃菜は「ケーキっ♪ケーキっ♪」と嬉しそうに歌いながら、小皿を用意している。

 僕はその光景に自然と顔が熱くなった気がしたが、気にしないことにした。


「「いただきます!」」


 ガトーショコラは、フワッとしていてとても食べ応えがあった。

 中に入れたドライフルーツが、甘さを際立たせていてとても幸せな気持ちになった。


「ねぇねぇお兄ちゃん、今日楽しかったね!」

「そうだな。楽しかったな!」

「えへへ。よかった」


 少し照れ臭そうに笑う妃菜の姿が僕の頭から離れず、この日は寝れなかったのはここだけの話。


 後日、スーパーで妃菜と買い物する姿をクラスのお調子者に見られていたらしく、冬美に誤解され別れる寸前までいったが、土下座をしたら許してもらえたのだった。



 ――――――――――――

 あとがき

 SSでした~!

 気が向けば、1月 1日の午前0時に第26話と同時にSS正月バージョンを公開するかもです!

 お楽しみに!

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2025年1月1日 00:00
2025年1月1日 00:00

【50.0KPV感謝!】大好きだった彼女に浮気されて、人生転落した話。 くまたに @kou415

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