第25話 サンドイッチ!
朝起きてスマホで時間の電源をつけると、11:28と表示された。
「もう昼じゃねぇかよ」
僕は、大事な時間を無駄にした気分になり、勢いよく体を起こして眠気を覚ました。
さてと、今日は何をしようかな。
昨日の夜に宿題は全て終わらしたので、受験勉強以外の勉強は既に終わっている。
けれど、今週はなかなか疲れたので、出来れば休みたい。
この頃は学校での冷たい視線もなくなってきたので授業に集中することができる。
とりあえず、朝ごはん?昼ごはん?を食うか。
僕がリビングに降りると、
妃菜は出かけているのかな?
僕はトボトボと冷蔵庫に何かないかなと、確認するように冷蔵庫を開いた。
お、昨日の残りの麻婆豆腐があるじ────
「お兄ちゃんおはよ!」
「うわっ!」
誰もいないと思い完全に油断していたところに、妃菜からの飛びつきをくらい、思わず肩を震わせてしまった。
「あははっ!お兄ちゃんびっくりしすぎ!」
「ちょ、妃菜からかうんじゃねぇ!」
「いやお兄ちゃんがリビングに降りてきた時から何度も声をかけたよ?でも、全然気づいてないようだったから飛びつきました〜」
そう、妃菜は耳元で囁く。
僕は耳が弱点なので、思わず変な声が出そうだったが、からかわれそうだったので頑張って堪えた。
「そ、そうだったのか。ところで妃菜は朝ごはん、食べたか?」
「もちろん。お兄ちゃんがスヤスヤと寝息をたててる時に食べたよ」
少しいらない表現が混ざっているが、あえて踏み込まないようにした。
嫌な予感がするんだもん。しょうがない。
僕が「そっか」と、素っ気なくかえすと、妃菜は口角を上げて「なに?私とごはん食べたかったの〜?お兄ちゃんシスコンだね〜」などと言ってきたので即、否定してやった。
僕がシスコン?
……今までにシスコンと思われそうな行動をたくさんしてしまった気がする。
最悪だ……。
「ところでお兄ちゃん。まだ朝ごはん食べてないんだよね?」
「あぁ、まだだ」
「昼ごはんもまだだよね?」
「そうだまだだ」
「じゃあ一緒に食べに行こうよ〜!」
妃菜はすごくつぶらな瞳で僕の肩を揺らしてくる。
うっ……。
そんな目で見つめられたら断れないじゃないか。
元々断る気はなかったけれど……。
「それいいな。行く準備するわ」
「やったっ!」
妃菜は、語尾にハートが着くようなテンションで喜んでくれた。
僕が着替え終わると、妃菜は日焼け止めを塗っていて夏を感じてしまった。
僕も塗ろっかな?
そんなことを思っていたら、妃菜が右手でこっちに来いと訴えている。
どうした?と思いながら僕は妃菜の目の前に立った。
「ひやっ!」
僕の右腕にいきなり冷たい何かがついた。
「お兄ちゃんビビりすぎ!ただの日焼け止めだから安心してね」
そう言って妃菜は日光に焼かれる腕に日焼け止めを塗ってくれた。
「あ、ありがとな!」
「うん。もちろん!」
僕達はお互い準備が出来たので、お互い、主に僕のお腹がそろそろ限界なので、急ぎめで家を出た。
僕達の住んでいる所は田舎だからショッピングモールとかは無いけれど無駄に小さな飲食店が多い。
だから、今日はその中でも家に近いところに行くことにした。
店についてから外から店内を覗いてみると、ポツポツと人がいたが待つことはなさそうなので入ることにした。
店内では、僕でも聞いたことのある有名な昭和歌謡が流れていた。
アルバイトらしき男性の人は、「いらっしゃいませ〜!!」と威勢のいい声で出迎えてくれた。
この店はいつ来ても印象がいい。
僕達はテーブル席に向かい合って座った。
僕は、この店に来たら決まって『こだわりサンドイッチ』を頼む。
ここのサンドイッチは言葉にしにくいが、特別な味がしてとても好きだ。
妃菜も僕に合わせて『こだわりサンドイッチ』を頼むようだ。
注文が決まったので、テーブルの端に設置されているボタンを押して店の人を呼んだ。
「はい。ご注文をどうぞ」
「『こだわりサンドイッチ』を2つお願いします」
「わっかりました〜!」
店の人が去っていくと、僕達は注文を待ってる間世間話をすることにした。
「お母さん達この頃見てないね」
「そういえばそうだな。お父さんは僕が中学生になったくらいから帰ってくるのが遅いから、つい馴染んでしまっていた」
「2人とも元気かな?後でLINEしてみようよ!」
「いいなそれ!」
僕達はそんな会話をしているとすぐに注文の品が運ばれてきた。
「「美味(し)そ〜」」
僕達は口を揃えて声を漏らしてしまった。
「待ちきれない。いただきます!」
僕は、妃菜を待たずにサンドイッチを口いっぱいに頬張った。
「んめぇ〜!」
ここのサンドイッチは何度食べても美味しい。
僕が口に入れたのはハムとレタスのサンドイッチだったのだが、ほんのりとカラシの味が効いていてとても幸せになる味だった。
妃菜は、僕の食べる勢いの速さに苦笑しつつ、卵のサンドイッチを小さい口で頬張っていた。
妃菜は気づいていないようだが鼻の下に卵がついている。
僕の妹かわいすぎるんだが?
僕はこっそりと笑っていると、怪しく思ったようで、手鏡で自分の顔を確認し始めた。
すぐに卵がついていることに気づいて慌ててナプキンで鼻の下を拭いていた。
その姿はまるで小動物のようにぴょこぴょこしていてとても可愛かった。
「お兄ちゃん!気づいてるなら言ってよね!?」
「わかった!ごめんごめん」
少し笑いを隠せないまま言い返してしまったせいか、妃菜は少し頬を膨らませて「むぅ……」と言っている。
「ごめんな。可愛らしくてついそのままにしてしまった」
「な、なに!?からかっているの……?」
妃菜は顔をだんだん赤くしていき、ついには顔を逸らしてしまっていた。
この時僕は妃菜にはこのままいて欲しいなと心から思った。
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