第24話 彼らも動き出す
──今井 創一──
プルルルル、プルルルル
機械の感情の無い音が、耳元にあるスマホから聞こえてくる。
3コール目に入ったその時────
ガチャ
『もしもし、警察です。事件ですか?事故ですか?』
「事件です」
『何がありましたか?』
「僕は中学校で校長をつい先日までしていてね、ある日────」
僕は、警察に日向 遥高からのメッセージのことを簡潔に伝えた。
『分かりました。捜査のために証拠とかはありますか?』
「はい。あります」
『それでは、お近くの警察署の名前を教えてくれませんか?』
「────です」
『分かりました。それでは連絡はこちらで入れておきます。証拠とともに、そちらの警察署の方へ行ってください』
「はい」
『ありがとうございます。失礼します』
よし。これでいい。まずは第1関門突破だ。
僕は、昼食を済ませてから、前に使っていたスマホを鞄に詰めて、車で10分ほど走ったところにある警察署に向かった。
僕は、受付の人に簡単にどうして来たのかを説明したら、刑事課の方へ案内された。
"狭い会議室"のような部屋に案内されて、そこで簡潔に何があったのかを説明し、証拠のスマホを警察官に手渡した。
「ありがとうございます。スマホの中を機械で確認してもよろしいでしょうか?」
「はい」
元からそのつもりで来たんだ。断る理由なんてない。
「それでは、しばらくお待ちください」
そう言って警察官は部屋から出ていった。
送信は取り消されてしまったが、普通のメールに送られてきたメッセージだから、データベース上にはまだ残っているだろう。
ガチャ
ドアの開く音と共に先程の警察官が戻ってきた。
「調べてみた結果。あなたの言っていた通り、証拠が見つかりました。これを元に日向 遥高の元へ捜査に向かいます」
「ありがとうございます」
「何か分かったら電話させてもらいます」
「分かりました」
第2関門も突破だ。
「日向 遥高は注意深いので、操作の際には気おつけてください」
「分かりました。心得ておきます」
「それでは、僕は帰らせてもらうよ」
よし。これでいい。
※
(冬美の靴箱に紙を入れた1週間後)
僕は、騒がしい教室から逃げるように、体育館と校舎を繋ぐ渡り廊下に来ていた。
やはりここは静かでいい。
以前来た時は青柳くんがいたせいで静かさを満喫することは出来なかった。
しかし、今日は静かだ。良かった。
そう思っていたその時────
「未だに冬美は俺が好意もなしに付き合っていることには気づいていません」
「はい。────はい!」
嘘だろ……!
まだ別れてないのか!?
こうなったら、電話の相手を探るしかない。
「そうです。───せてもらいますよ?」
なにを話してるんだ……?
少し離れているから聞こえにくい。
僕は、恐る恐る青柳くんに近づいた。
バキバキッ
やってしまった……!
「誰だ!」
僕は、足音を消すことを諦めて走ってその場から逃げた。
後ろから青柳くんが追ってきているのが分かる。
青柳くんは確か、スポーツは抜群だったはず……。
このままだと追いつかれてしまう。
僕は、すぐ目の前にあった角を曲がり、その先にあった教室に入った。
そのすぐ5秒ほど経ったときに青柳くんが廊下を走り去っていった。
「(あ、危なかった……)」
青柳くんにバレたら黒幕がもっと探りにくくなってしまう……。
とりあえず、青柳くんについてクラスの人達に聞いて回ろうか。
そういえば、この頃龍生がなにかしているという話は聞かないな。
やはり青柳くんの電話相手が龍生……。
ってことはないか!
変なことを考えるのは辞めておこう……。
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