追放ざまぁに復讐を!~無能メンバーを追放したらパーティが崩壊。実はこれ最近流行りの集団悪質詐欺でした。俺たち被害者の会はこいつらとその裏にいる黒幕を絶対に許さない~
世界乃希望
第1話 無能を追放する
「おい、リーダー。さっきの魔獣が咥えてたこの剣。マジックアイテムなんじゃないか。これは高く売れるぜ」
「でかした。だけどまだ汚れが少ないから最近このダンジョンで死んだ冒険者の遺品かもな。ギルドに帰ったら一応報告はしておこう」
「真面目だね、ソウさんは。そんなことせずに黙って貰っちゃえばいいのに」
太古の昔から世界中の点在するダンジョンと呼ばれる自然の迷宮。ここには多くの魔獣や宝物が存在し、あまたの冒険者がこの資源を求めて冒険をしてきた。
俺がリーダーを務めるこのパーティも今日はダンジョンで戦闘と探索に勤しんでいた。今は先ほど倒した魔獣の群れから戦利品を漁っているところだ。
ダンジョンの中の地形はダンジョンごとでも違うが、同ダンジョンの中でもフロアごとにまた特色が違っていて、洞窟っぽいフロアもあれば森っぽいフロアもある。なぜこんなものが自然に存在するのかはよく分からない。
俺たちは薄暗い遺跡のようなフロアで狼の死体を漁っている。魔獣の体内にある魔石という石を取り出すのだ。これが町のギルドで高く換金してもらえる。
戦士のアダンも治癒師のランバーもよく働いてくれている。
「皆さん早くしてくださいよ。いつまでこんな暗いところにいるつもりですか」
だがこの魔法使いソットは別だ。いつもこういった雑用は俺たちに丸投げをして、自分は見張りをするとかいって傍で突っ立っているだけ。
「…ああ、すまねえ」
「もうすぐ終わるからね」
「…」
最初はソットのこの態度が原因で何度も衝突してきたが、最近ではもう誰も注意しなくなっている。何度言ってもソットは「自分は悪くない」の一点張りで話の折り合いがつかないので、もうみんな諦めてしまっている。
1か月前に頭を下げられてパーティに入れた時はもっと人当たりがよさそうな青年だったのだが。
いや、やはりパーティリーダーとして俺がしっかり指導するべきだな。
「おいソット。お前も言い訳ばかりしてないで、少しは手伝うんだ」
「あ、あっちに魔物の群れがいますね。ちょっと見てきます」
俺の話を聞き終わる前にソットが突然走り出した。
「おい待て!ソット!一人で勝手に動くな」
俺が指示を出しても返事は返ってこない。
「ったく。リーダーの指示に従えってあれほど言ってんのに」
「とにかく今は彼を追おうか」
独断で遺跡の奥に走っていったソットを俺たち3人は助けに行った。そこではソットが虎の魔獣4体に囲まれていた。ソットはその場で動かずに固まっているようだ。
「まずいぞリーダー。一人一体ずついけるか」
「ソットが心配だ。俺は奥の2体をやるから他を2人で頼む」
「「了解」」
アダンとランバーがそれぞれ斧と槍を構えて虎に突っ込んでいく。俺も腰から剣を抜くと炎を纏わせて虎に挑む。
「ソット!大丈夫か。危ないから下がってろ」
「おー、やる気満々ですねぇ。僕なら大丈夫だったのに」
軽口を叩いているがとても大丈夫な状況ではなかっただろう。俺たちを心配させないように配慮してくれているのだろうか。
ともかく今は目の前の魔獣に集中しよう。
・・・
後日。俺たちが拠点にしている街の冒険者ギルドの一画にて。
「なんですかソウさん。急に大切な話って」
「ああ、来てくれたか…」
俺とアダンとランバーが横並びで座っているベンチの正面の席にソットが座った。10分の遅刻だが、その注意はもういい。
俺は意を決してソットに宣告する。
「ソット。悪いが今日限りでお前はこのパーティをやめてもらう」
「…?え、なんでですか!僕が何かやらかしましたか」
この期に及んで自分の過ちを反省して謝罪するということもないらしい。
「お前は独断で勝手に動くし、指示も聞かない。今まではそれでもなんとかなったが、最近潜りはじめた高難度のダンジョンではそういったことが命取りになる。現に昨日の虎の魔獣との戦いでアダンは片目を失い、ランバーは脚を折って退却に支障も出た」
ソットが招いたあの状況によって俺たちは危うく命まで落とすところだったのだ。ランバーの足はダンジョンの外に出てから治癒魔法で治すことができたが、アダンの目は元には戻らなかった。
これ以上こいつのわがままな態度に付き合っているわけにはいかない。
リーダーである俺にはアダンやランバーの命も守る義務があるのだから。
「それは2人が出しゃばりすぎたから怪我したってだけでしょ。僕がいつ助けてほしいと言いましたか」
「言いたいことはそれだけか。お前はいつもそうだ。口だけ達者で具体的に何かをするわけでもない。昨日の戦闘でお前は具体的に何をやってたんだ」
「それは魔法でいろいろやってましたよ。僕のおかげで2人はその程度の怪我で済んだと言っても過言ではないです。むしろ2人には僕に感謝してほしいくらいですよ」
「もういい。黙れ!」
俺はソットの態度につい怒鳴ってしまった。先ほどまで楽し気な雰囲気に満ちていたギルド内が一瞬静まり返り、俺たちに注目が集まる。
「リーダー…」
「ソウさんがこんな声を荒げるなんて」
両サイドに座る2人も珍しく怒っている俺に驚いている様子だ。
「このパーティにお前みたいな足手まといの居場所はない!さっさと出ていけ!」
自分の鼓動が早くなり、顔が熱くなるのを感じる。自分を助けてくれた仲間が大けがをしたというのに、それに対して感謝も謝罪もない。こんなのは仲間じゃない。
ソットは目を見開いてしばらく沈黙した後に席を立ってギルドの外へ歩き出した。
「分かりました。1か月だけでしたがありがとうございました…」
「ああ」
俺はこれ以上こいつにかける言葉が見当たらなかった。俺の横を通り過ぎるソットの顔を見ているだけしかできなかった。
「あとで後悔してももう遅いですよ…」
最後にソットが呟いた。負け惜しみか。
今まで散々パーティの足を引っ張っていた奴を追い出して、なぜ後悔するというのだろう。
「なんだったんだろうな、あいつは」
「大きい街だと人が多いから変わった人もいるさ。まあ気を取り直して、また3人で頑張っていこうよ」
「…そうだな。パーティは3人になったが、またこれから実績を増やして名声を高めていこう」
ランバーの発言を受けて俺は気持ちを切り替えて今日の探索に行くことにした。
だがこの俺たちのパーティは次の冒険で壊滅することになる。
追放ざまぁに復讐を!~無能メンバーを追放したらパーティが崩壊。実はこれ最近流行りの集団悪質詐欺でした。俺たち被害者の会はこいつらとその裏にいる黒幕を絶対に許さない~ 世界乃希望 @ninjin_otoko
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