ファミレス殺人【検索】

ライターという仕事を

生業にしてからどれくらい経っただろう。

私は割と早い段階でフリーランスとなり、

こうしてファミレスでものを書く場合が多い。

今日もひたすらにパソコンに向き合い、

少量の小腹を満たす程度の食事と

ドリンクバーを片手に文字を

書き続けるのだが、ある不穏に気がついたのはたった今のことである。

向かい側の席、3人の集団、

主婦と見られる女性が一人、

白髪の混じる男性と、若い男。

二度見てもそれは家族に見えない。

異様ではある。

まあ、そんなことは横目に私はひたすら

自らの思いをキーボードに叩きつけるのだ。

いややはり気になる。

少し作業が滞ってきたことを裏目に、

その会話を文字に起こそうと思った。

主婦が女、白髪の男性が男、

若い男が若い男とする。

以下がその会話内容である。


女「鈍いね、アレで締め殺せなかったの?」

男「あれはタイミング悪かったんだ、

ただもうバラしたよ」

女「ねえ、あんたはどうなのよ。

仕入れたの?」

若い男「それがまあ、通んなくて」

女「何やってんのよ、まったく」

男「まあ、落ち着いて、ね」

女「落ち着いてらんないわよ」

若い男「ただ、ひとつ、面白い方法を」

女「なによ、面白い方法?」

若い男「自殺に見せかけるんですよ」

男「ほうほう、で、どんな風に」

若い男「簡単ですよ、私に任せてください」

女「あんたしくじったでしょ?

任せられないわ」

男「まあ、まあ。誰にも失敗は」

女「仕方ないって?」

男「そう言ってるわけじゃ」

若い男「ほら、こうやって被すんですよ」

男「どんな風に」

若い男「覆うように被せるんです。

そしたら、案外早いうちに効果が得られると」

女「あんた、じゃあやってみなさいよ」

男「じゃあ。仮にこの店にいる

誰かでやってみて」

若い男「ええ、分かりました。ただし、

後片付けは一緒にやってもらいますからね」

女「いいわよ、やってみて」

男「誰にしようかね」

若い男「決めていいですよ」

女「あ、じゃあ手前の帽子かぶって

パソコン弄ってる男」

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お探しのページは見つかりませんでした 雛形 絢尊 @kensonhina

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