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人はそれほど多くない夕前の入場口を
越えたあたりでで私と彼は一旦別れた。
右側が男性用、左が女性用。
然程、混雑な時期を垣間見て
イルミネーションへ訪れた。
燦々たる光が既に疎に見え、
目のやり場に困るほど、
その多くがメイン・スポットである。
噴水のような飛沫は光と混ざり合い、
親密な関係を表していた。
それはこの場に多く訪れる恋人同士と
似たものがある。少々準備を整えて、
有意義と安心を兼ね揃えたデートへ
駆り出した。彼にお待たせと云い、
メイン・ゲートを潜り抜けた。そこはまるで、世界中の電気を集めたような光を放ち、
神秘的な空間を創り出している。
この場所は多くの娯楽施設があり、
アトラクションなども有る。
購入したチケットで全て済んでしまうように、一番値段がするチケットを購入したので、
早速、すべての光が灯る前にアトラクションに乗ることにした。
彼を追いかけるように私は擦り寄る。
パーク内を見渡せども、
其れなりの人数である。
普段の休日に比べてもその比は一目瞭然。
目の前にあるのは小型のジェットコースター。いわゆる子供向けの
然程高さのないアトラクションである。
がだがたがたと軋むような音に加え、
身体に重力がかかる。それは多くの力を持ち、上から滑り落ちるように流れていく。
一瞬にして体が浮くような体感を覚えた。
それから、ウォークスルー・アトラクションへ訪れる。そこは、色んな思考を使わねば
脱出することができないようなアトラクションである。
十数分悩んだのちにリタイアをした。
かなり難しかった。その時には周りは誰もおらず、私たちのみだった。
その風景を見て、中々味わえないと
特別な思いに感じた。
私は時刻を確認するため自身の携帯を覗く。
すると、こんな通知が現れた。
【Yourtagがあなたの近くで見つかりました】
Yourtagとは大手電子メーカーが製作する
最新鋭の管理システムを駆使した商品である。
卵のような形をした小型のアイテム。
それを自身のスマートフォンに通信を
繋げればなくした物の位置が解る。
便利であるが、裏腹に危険性も生じる。
Yourtagを使ったストーキング行為が
稀に起こるようだ。
実際被害者も多いらしい。
少し気味が悪い、私は持ち合わせていない。
その為、慣れない文字の羅列が
急に目の前に現れた。
私は彼にそのことを伝えた。
「何かあり次第、動こう」と彼はいった。
私は痼のようなほんの少しの不安に
駆られたまま、
イルミネーションを眺めていた。
そこで撮影スポットがあり、
アルバイトであろうか、
青年がそこに待機している。
私たちは頼んでみることにした。
背景には無数の光があり、
非現実にも見える写真を700円で購入した。
記念品である。
このイルミネーションでは
多くの撮影スポットがあり、
その後に乗ったリフトでも
撮影スポットがあった。記念ということで、
リフトに乗っている私たちの写真も購入した。パークの頂上付近でも私たちは散策するように辺りをまわり、それはそれは幸福感に包まれた。
頂上付近も一時間弱か過ごし、
私たちはリフトで再び下へと降りた。
その帰り際のことである。
私は更けた景色、一面が光り輝く景色を写真に収めようとしていると、
再び通知が現れたのだ。
『Yourtagがあなたと共に移動しています』
それから私は一人暮らしの家へと帰る。
お風呂に入り、寝る準備を整えていると
そのことを思い出したのだ。
あれなんだったんだろう。
そう思い、検索窓にそのことを書いた。
一番上にヒットしたのはストーカー被害という言葉が混じるサイトだった。
気味が悪いな、と身慄いをする。
音を鳴らす、という項目のボタンがある。
そのボタンを押せばYourtagが近くにある。
生唾を飲み込み、それを押そうと試みる。
しかしながらその恐怖心に耐えかね、
躊躇してしまう。
もし、何らかの拍子にそれが
私のどこかにあったとすればそれは恐ろしい。
仮にストーカー目的ではなく、
偶然だったらどうしようなどと
頭に浮かんでくる。どうするべきなのか。
私はその拍子にボタンを押した。
しばらくすると沈黙に包まれた部屋から
か細い機械音が流れ始めた。
ある。
私は全身に冷気を感じた。
自分の持ち歩いてた鞄の中にそれがある。
私は検索したそのサイトを下部まで確認した。
8m以内におり、20分以上行動を共にしないと、通知は来ません。
私は再び青ざめた。
ということは、アトラクションの中でも
リフトの近くにも相手がいたということ。
絶対警察に通報した方がいいと
解決案の箇所に書いており、
余計に不安を煽られる。
頭を抱えつつ、思い当たるものを探す。
そうだ、写真。
私は乱すように鞄の中身を取り出す。
2枚の写真。最初に通知が来たのは、
ウォークスルー・アトラクションを出た後
すぐだ。
ということは写真に印字されている
17:38から数分前。
最後に通知が現れたのは
あの写真を撮った時である。
その写真を確認する為に
スマートフォンを動かす。
20:53に撮られたものだった。となると、
3時間行動を共にしていたということだ。
今日だけでいくつもの写真を撮った。
私は嫌な予感がした。
もしかすると、
写真に写っているかもしれない。
もう日付が回ってしまう頃、
私は恐る恐る目を凝らした。
まずは青年に撮ってもらった写真。
違和感はない、いや、あった。
写真の左上にカメラ目線の誰かがいる。
確かな身の震えに堪えながら
もう一枚のリフトの写真を見た。
一見違和感がない。しかしながら画面の上部、私たちの後ろのリフトに
見覚えのある顔があった。
先ほどの写真と同一人物だった。
私は言葉にならぬ恐怖心のまま、
自らのスマートフォンで撮ったものも
確認しようとした。念の為だ。
頭が真っ白になった。おそらく100枚近くの
写真を撮ったのだが、その6割方、
彼は写っている。
彼の後ろ姿を撮った写真、
なんの変哲もない風景の写真。
それらに見切れたように映る彼。
しどろもどろな状態でスマートフォンを
床に落とした。音のしないその部屋に
ある音が聞こえた。
こんこんこん、何かを叩く音。
それは玄関の方から音がする。
再び、こんこんと。私は曖昧模糊した足取りで玄関の方へと足を進めた。
徐々に音が近づいている。
ドアスコープに目をやった時、絶句する。
写真に映る彼が部屋にまで訪れに来たとは。
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