第3話
「まさか宇宙人に神罰が効かないなんて」
千波は地に膝をつき打ちひしがれてしまった。そんなに落ち込むと思わず、慌てて慰める。
「奴らの弱点が分かればどうにかなるかもしれないぞ。そう落ち込むでない。それに彼奴らは人々だけでなく神々の怒りも買っているのだからな」
「でも、他の神様はもう……」
「御神体がなくなって一時的に高天原へ帰っただけだ。そこで恨みの一撃を準備しているのであろう。家を追い出され信者を殺された恨みは凄いぞ」
とは言ったものの、多少の自然災害ならビクともしない宇宙人たちだ。巻き込まれたこっちが先にやられてしまうかもしれない。そんな心配はおくびにも出さず、ワシは不敵に笑って見せた。
千波はワシの言うことを信じ、安心して眠くなってしまったようだ。木の根に座り込み、肩を貸してやるとすぐに寝息をたてはじめた。ワシに会うまでまともな飯にもありつけず、ろくに睡眠もとらず宇宙人から逃げ回っていたのだろう。こんな幼い身で大変な事だ。
小さな寝息を聴きながら、ワシは宇宙人たちをどう滅するか考えた。木々の隙間から、奴らが動き回っているのがわかる。どうやら二足歩行のほうが、動かない4つ足を守るように巡回しているようだ。
「4つ足は家畜か?」
確信があった。昼間のときから、二足歩行の宇宙人は4つ足に対して数が少なく、そして4つ足を囲うような位置にいた。残った瓦礫を取り除いたりして、4つ足が動きやすいように地面を整えていた。人工物を取り壊し、植物は残す。奴ら、まさか地球を農場にするつもりなのか。
日が登りだんだんと暖かくなってくると、千波が伸びをして起き出した。
「おはようございます」
「おはよう。よく眠れたようだな」
照れくさそうな、しかしスッキリした顔で挨拶を交わした。権能を使って探した芋と、食べられる草を渡す。
「神様がいれば食べ物に困らないね」
「それはこの森を作った人の子たちに感謝するのじゃ。飢饉の時この森の植物を食べて生き延びられるようにとせっせと植えておった」
そばに立つスダジイの木を撫でる。この木も時期が来れば食べられる実をつける。随分大きくなったものだ。
「千波、今日は場所を変えるぞ」
千波が驚いてせっかく探した芋を取り落とす。
「でもこの森からでたら、あいつら真っ先に僕たちを潰しにかかるよ」
久しぶりに安全地帯を手に入れたのだ。そこから出たくないのは重々承知だが、この小さな森でずっと暮らすわけにもいかない。そしてワシには策があった。
「大丈夫だ。見ていろ」
ワシは森の端から、1歩外へ出た。日差しが明るく照らし、周りには4つ足宇宙人がうろうろしている。千波は森の端で立ち尽くし、顔が青くなっている。
「神様!」
「みてみろ千波。君の神様は守護の範囲を広げることに成功したぞ!」
悲鳴に近い千波の声をかき消すように声を出す。震える千波は周りを見渡し、宇宙人たちが日のもとに投げ出されたワシを見て反応しないことに目を白黒させた。そして少しの恐怖を顔に残したまま、恐る恐るこちらへむかってくる。そして私のそばまできても宇宙人たちがこちらに反応しないのを見て、やっと緊張が解けた。
「心配させないでくださいよ!」
「千波が寝ている間に、守護の範囲を広げてみたのじゃ」
あまり怖がらせるつもりは無かったのだが、結果的にそうなってしまったようだ。
神の嵐に差別は無い。もし神罰が下るのなら、この場所では巻き込まれるのが目に見えていた。だから他の場所へ逃げる道を作る必要があった。千波が寝ている間に、ワシはどこまで守護を広げられるか試してみた。手を握り、変わってしまった地形を思い浮かべ、強く念じる。それは徐々に広がり、宇宙人たちを避け道を作った。今や我々は何里も離れた山まで行ける。
「これで世界を取り戻そうじゃないか」
「先に言ってからそういう事はしてくださいよ!」
カッコつけて言ってみたが、千波は目を真っ赤にしてワシの肩をバシバシ叩くだけであった。
唐突な信仰が重すぎる! 北路 さうす @compost
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