目が覚めたらスターリン!?
テンユウ
第0話 起きたらスターリン
「大粛清のデバフを最短で解除しなければ……何処だここ?」
モスクワ、偉大なるレーニンとの別れ、かつてのライバル頭の悪いトロツキー、ゲーム
目が見えた瞬間、何もかもが違って見えた。 見覚えのない天井、そして重厚な木造の家具に囲まれた部屋。 どこかの古びたホテルの一室かと思ったが、違う——この空気はまるで20世紀初頭のヨーロッパだ。金具のついた古風なドアノブ、ろうそくの匂いがほんのり
「夢か?それにしてはリアルな寒さ。」
鏡を探し視点を左右に、部屋の片隅に古ぼけた姿見鏡に映った男の顔は……自分が知っている物ではなかった。
「もしかして……スターリン?」
驚愕とともに、記憶が一瞬で駆け巡る。 20世紀の独裁者として鉄の権威で名を馳せたスターリン。
彼の顔が、今の自分に映っている。
ああ、気づいてしまった——私は転生してしまったのだ、ヨシフ・スターリンその人に。
「どうする、俺はどうすれば良い。」
口から出るのはグルジアなまりのロシア語、俺の疑念や不安など知らないであろう忠実な部下たちが私の元に報告に来る。
何もなかったかのように振る舞い、記憶に従い執務を行いスターリンとしての、書記長としての役割を果たしていく。
スターリンとして生きる日々を思い出す、戦争終え勝利の栄光に浸り、五カ年計画を、五カ年計画?
私の過去の記憶が少しずつ頭の中で蘇り始める。かつて彼が下した命令、その命令が招いた死と数々の数々が。
「ああ…私は、同じ道を歩むことなどできるはずがない」
ただ、私が理想とする平和は、スターリンの周囲にいる人物たちにとっては「弱さ」に映るかもしれない、彼の側近はトロツキーとの政争に勝ち抜いた野心家どもだ、あれらを前に油断などすれば……
「違うな、私の部下で私の側近だ、それに本当に実現してしまえば良い、出来るはずだ地上の楽園(ガチ)ソビエトをそうとなれば情報集めだ。」
ルンルンで資料を確認する私を、奇妙な目で眺めるのは未来の右腕ヴァチェスラフ・モロトフ君。
ほぉ(新経済政策/ネップ/NEP)部分的に市場経済を容認、資本主義が優れてるのかと思ったら、農家の人にやる気出させて農地広げさせてるだけで耕す土地が無くなればそれまでじゃん。
「君たしかウクライナ共産党の書記の妻がいたね、ちょっとウクライナ視察を計画しててね。」
「了解しました準備します。ネップの成果を視察されるので?」
「ん~、ネップはね、失敗、いや五カ年計画はまだ早いな、ソ連承認のために自由経済をアピールしないといけないし、党による学術的指導を名目にしよう。」
農薬と肥料の大量生産始めようか、ウクライナだと堆肥って作っているのかな?麦穂の堆肥化とか行われてなかったらちょっとキレるよ私、未来知識の出番だよね、トラクターとかコンバインとか組み立てちゃう?
「……」
自分の知らない一面だ、スターリンの心酔者ヴァチェスラフ・モロトフはそう判断した。グルジアなまりと普段の丁寧なロシア語が混ざり話し方が独特になっている。
故に観察に費やした。
「成程将来の右腕になるわけだ、」モロトフの前で思った事をそのまま言ってしまった、それに取り乱すことなく貪欲に次の発言を待つ、信じても良いのだろうか?
「まあとにかく、緑肥作物の栽培や心土破砕から順に指導しないとね。農家の方々には指導を受けて農業を行う事に慣れてもらいたい、君と奥さんにはそれを円滑に進める手伝いをして欲しい。」
ネップとは、現物税を支払った残りの穀物を自由に売れると言うものだ。
労働者の雇用、商取引が認められた。
地主みたいな厄介なのが増えるだけ、けれどノウハウがない政党が農業を行っても失敗する。
故の党の指導、農家は党の指導者を通して雇った労働者を指導する形にした、農家のノウハウを吸収しつつ、未来知識を混ぜた農業を行う。
同時に商工業の商取引も認めた、人を雇う規模の物には党の指導を挟めば許可する。
これで史実の様に小規模商工業者(ネップマン)や農村の自営農民(クラーク)が力を持っても、ノウハウを得た指導者による大資本の公営企業で対抗出来るし、未来技術も布教出来るだろう。
「指導を行う党員には、将来的に大規模農場や工場の運営を行ってもらうと話して真面目にやらせる様に、失敗したら命が危ないから教えてもらう姿勢で指導しろ位は言ってくれ。」
「は、了解しました。」
第一次五カ年計画を始めるまでは、これで延命を図る。
目が覚めたらスターリン!? テンユウ @03tu20
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