野菊の小径、黄泉の通い路


少女は薄い青紫の花模様の着物姿で

黒髪をゆい上げているほっそりとした

頸筋くびすじは消え入りそうにはかなげにみえる


けれどしっかりとしてかしこ

しっかりとした意思のある

たおやかでつよい心を持つ少女



木造校舎の二階の廊下から

少し奥まった大きな部屋で

何かの会合のがおこなわれ

葬式に似たお香の匂い漂う


黒い羽織袴で大柄な白髭の男

裏めいた組織の首領とか黒幕

少女は不正罪悪の糾明をする

大笑してうけがわれほっとした



向こうを歩いてゆく若い女性

赤い花柄の着物姿の美しい人

かつて先生だったかたと気づく


孤児院のような寺子屋みたい

そんなところで教えてくれていた

りんとしてながらやさしい先生


懐かしくて切なく

慕わしく泣きたく

感謝と気おくれ


彼女に伝えたい

おくりたい言葉

ためらいおそれ


過去に幼い子だった自分

現在いまの自分とを比べると

怖くてしかたないけれど


勇気をだし歌う

演じるいつわり

込めるまごころ


おしえてもらったこと

かぼそくふるえる声で

けれどこころを込めて



薄青い紫がかった花

野菊の咲いてる小徑こみち

風に揺れてる草のみち


どんな歌だったかは

おぼえてられなかった

そのかわり浮かぶ歌


黄泉のかよ、野の小徑こみち

不安と嬉しさ込めながら

胸をふるわせ、私は歌おう




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瑠璃色硝子な人魚姫への追憶~そこはかとなくガールズラブっぽいあえかな想いを綴る3つの詩 壺中天 @kotyuuten

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