матрёшка,Петрушка 雪と氷のマトリョーシカ、死に踊るペトルーシュカ
彼女の名前はタチヤーナ・ニコラエヴナ・ドルゴラプチェヴァ。
私がその上長でありはしたが、
私と会う
小柄でもなく大柄でもなくて強く
男女問わずいかなる姿にも為り変われた。
欧米は
世界の情勢は予断を許さず、
休むことなく暗躍し続けた。
はたしてそれがただしかったのかどうか。
もはやいまとなっては分からなくなった。
何もかもすべて
我らは
思想も信仰も
ただ憎悪を
権力と猜疑にとり
我が祖国にて支配の座に就いた。
男の名はピョートル・ヴィッサリオノヴィチ・ジュガシヴィリ。
対立した私は解任されて拘束、
収容施設の爆破炎上。
私達は
軍用の単車製造だったらしい。
細長い工場左側通路の窓際。
漆黒の
それは撃ち落とされた
薄っすらと白く
木枯しの吹き
枯葉を踏む
猫背気味の貧相な姿は、
死神のようだなと想う。
副官であった
「どうか、逃げてください。
彼女とかかわり合うことは、
あなたのためになりません」
私は亡命をくわだてる、
せめて
けれど………
「命じられる
もう、どれだけ
いまその
ただそれだけの
だから…
ひそりと静かで
やさしい
「死ぬ……死ぬつもりなの」
胸ぐらを
「この
たぶん人の心なんてない。
だから
ただ
ずっと
黒い前髪が垂れかかり、
猫目石の瞳を
「お願い、
生きて人民をたすけて」
歩み去ろうとするその背。
「ターニャ、あんたの
きっと綺麗な孔雀石なんだわ」
私が叫ぶと
ほんの
立てつづけな側近暗殺に、
いたるところの反乱暴動。
炎の背後で踊る
誰をも信じられぬ
クレムリンの奥に閉じ込もった。
脳髄に
心臓を切り刻む恐怖に
☁ ☁ ☁
闇色な暗い
厳重な警備が
兵はすべて殺し
☁ ☁ ☂
ふと男は目覚めた、
余りにも静寂な故。
遠い通路からの足音に、
硬い軍靴の重さはない。
それは小さな子供が、
濡れそぼった裸足で、
歩いているような…。
扉がノックされる。
拳銃を手にし
応答なく解錠の音。
掛金が外れて落る。
ゆっくりと扉が…。
拳銃を乱射する。
乱射、乱射する。
硝煙の匂いが、
闇に立ち込め、
弾の空になった銃の音。
ゆっくりとゆっくりと…、
扉が…開いてゆく…………。
☁ ☂ ☽
いつのまに月を
窓に
黒髪だけを身に
髪の分かれめから
少し
薄い微かな乳房、
淡く色づく乳首。
内腿の薄い皮膚に、
透けて視える静脈。
白い小鳩のように幻めいて、
華奢な
黒ずみべたつく
扉向こうに
暗闇から
にもかかわらず……、
それらに入り混じる、
その自我を
官能の
肉 ……果肉
聖体礼儀
血と肉
……
……
少女の股間の
顔を
☁ ☁ ☼
ようやく一夜が明け、
異変を察したらしい。
兵士達が踏み込んだとき、
少女と一晩中踊らされた、
形をとどめていなかった。
わずかばかりの肉片と骨片、
喰い千切られた臓器の
弓のように笑った。
あっさりと囚われた。
凌辱拷問を受けた
その場で兵士達が全員自殺。
凌辱と処刑の映像記録だけが残されて、
暗殺の事実は隠蔽された。
いつか、私の前に姿を見せ…………。
………………………………いつか。
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