全員消して!

@mabudati

全員消して!

俺は売れっ子漫画家だ。

読み切りの漫画を賞に出したら金賞を取り、そのまま連載開始。

順調に進み、今では王道バトル漫画として雑誌の看板とまで上り詰めた。

しかし、俺の作品に出てくる人気キャラクターを作中で殺したらそのキャラクターを好きだという人たちが一斉に自殺をしだしてしまった。

売れっ子なのでアンチは多かったが今回はその比ではなかった。

そして楽しくてやっていた漫画も手につかなくなっってしまった。



俺は今、家で友達とテレビを見ている。

「この子かわいくね、やりてえよな。」

「ああ……」

俺は三角座りをしてうずくまっている。

「―――まあ、そんなこともあるって、ちょっと休め。」

「ああ……」

「どうしたんだよ。高校の時にお前の漫画をクラスで晒されて笑いものにされても、もっと面白いもんを描いてやるって逆に意気込んでたじゃん。お前はそんなんじゃないだろ。」

「うるさいなあ。お前に何がわかるんだよ。」

俺は頭をかきむしりながら友達を睨みつける。

「え、ごめん。えーと。女!女抱けば忘れられるって!」

友達がそう言った後、沈黙が流れて俺はあることを思いついた。

「じゃあさお前とヤらせろよ。俺どっちもイケんだよ。」

「ええ!?」

俺は友達が驚いてることを気にも留めず、友達を押さえつける。

「はあ!?何言ってんだよ!俺ら男同士だろ!なあ気持ち悪いって!」

俺は覆いかぶさって顔を近づけたとき、友達は俺を押し返した。

「お前、まじやばいって。」

そう言い、友達は家から出ていった。

「ううう……」

俺はただうずくまっている。

自分のせいで大勢死んだ。

その上、友達を傷つけてしまった。

死にたくなる。

そんなとき目の前に悪魔が現れた。

そいつは筋骨隆々で角が生えてて歯がむき出しで俺が思うような悪魔だった。

「貴様、つらいか?願いを一つ叶えてやろう。」

「なんで?」

「面白いものを見せてもらったからな。」

「じゃあ全員消して!」

「全員?」

「そう!全員!俺以外の全員!」

「わかった。その願い、叶えた。」

そう言って、悪魔は光りながら消えていった。

俺は悪魔が言ったことは本当か確かめるためにSNSを開いた。

ずっと見続ける。

5分経っても一切更新されない。

俺は気になって外に出た。

人通りが少ないと言っても多少は人がいる道に人の気配がしない。

家を見ても人が住んでる気配がしない。

コンビニに行ってみる。

店員も客も誰もいない。

「ははは!本当に誰もいない!」

俺は喜んで店のものを勝手に食べたり雑誌を読んだりした。

その時に自分の漫画が目に入ったが見て見ぬふりをした。

次は渋谷のスクランブル交差点に行くことにした。

少し遠いので電車に乗ろうとしたが動いていなかった。

仕方なく自転車に乗って行くことにした。

俺は鼻歌を歌いながら自転車を漕ぐ。

「よっしゃー!」

何にも縛られない、誰からも縛られないそんな高揚感を感じたせいでつい叫んでしまった。

スクランブル交差点についた。

やはり人っ子一人いない。

車もないし工事の音も聞こえない。

それでも信号は動いている。

電気がまだ生きてるのか悪魔のおかげかはわからない。

試しに俺は全裸になることにした。

「うおおー!」

スクランブル交差点で全裸になることなど生きているうちで決してできることではない。

「いっちに!いっちに!」

そのままスクランブル交差点を行進していると興奮してきた。

なのでスクランブル交差点のど真ん中で自慰をすることにした。

ケツにコンクリートの熱を感じ、数字の看板を見ながらイった。

「ふう……」

今まで以上に気持ち良かった。

地面に白い液体を残しながら広告を眺めている。

そんなとき目の前に天使が現れた。

その人はとても美しく神々しくて俺が思うような天使だった。

そして布を1枚着ているだけで、πが見えそうな格好だった。

「今、幸せですか?1つだけ願いを叶えて差し上げます」

「おう……」

「あの大丈夫ですか?」

「ああでもちょっと待って。」

俺は天使の姿を見ながらもう一度自慰を始めた。

「ええ…」

天使はめちゃめちゃ引いていた。

二度目にも関わらず一度目と同じスピードかつ快感で心地よかった。

すこし呆けた後、気を取り戻した。

「あ、すみません美しかったもので。」

「まあ、良いでしょう。あなたは様々な人に希望や感動を与えました。なので願いを叶えて差し上げます。」

「でもそれで悲しんだ人がいますよね。」

「ええ、でもそれ以上に人々を救った数の方が多い。死んだ人間は現実と空想の区別もつかない人たちです。そんな人のこと気にしていたらきりがありません。」

「でも俺が殺した。」

「少し聞いてもいいですか?」

天使は真面目な顔で俺に聞いた。

「はい。」

「なんで漫画を描こうと思ったんです?」

「楽しいから」

「ではなぜ漫画を続けたのですか?」

「みんなが喜んでくれるから。」

「そうですよね。ですがあなたは自分のために、そして自分がやりたいから漫画を描いているのです。元々、私利私欲のために描いていて、それで勝手に人間は死んだんです。自己責任じゃないですか?ただの事故です!」

「そうなのか?」

「ええ!人間が死ぬのは悲しいですが、それはできる限りなくしていきましょう!それよりもあなたはあなたのために生きることが大事なのです。」

そうだった。

俺は俺のために漫画を描いていた。

俺のせいで大勢死んだ。

それで漫画が描けなくなっても描きたくないわけじゃない。

それに俺の漫画を楽しんでくれる人たちが大勢いた。

その人たちに俺の漫画を読んでほしい。

「それで願いは何にします?」

「みんながいなくなる前に戻してほしい。」

「わかりました。戻しましょう!」

そう言い、天使は光りながら消えた。

俺は気がつくと家の中で居た。

ちょうど悪魔が消えた時間ぐらいだ。

俺は気になって外を見ると通行人が歩いているのが見えた。

コンビニにも行くことにした。

客が4人いて店員が1人いる。

嬉しくなって出入り口に立っていたら店員に声をかけられたので自分の漫画が載っている雑誌を手に取り会計をしてすぐに家に帰った。

家に帰った後は漫画を読み、漫画を描いた。

8時間くらいずっと描き続けた。

手が痛いなと感じつつも描いた。

描き終わった頃にドアが開く音がした。

そこには俺が犯そうとした友達が立っていた。

「なあ、ちょっと考えたんだけどさ。いいよ。」

「何が?」

「犯されてもいいよ」

俺はあのときのことを思い出した。

冷静になった今は申し訳ない気持ちでいっぱいだが、今はそんな気は一切ない。

「あー!あのときはごめん!でももう大丈夫!」

「はあ?俺、勇気出したのに。」

友達は床にヘタれこんでがっかりした。

「それよりもこれ読んで!」

「なにこれ?」

「次の話!」

「おう、ちょっと読んでみる。」

俺は友達が読んでいるの姿を眺めている。

10分ほど経って友達が顔を上げた。

「どうだった?」

「悪魔とか天使とかよくわかんないけど」

「けど?」

「おもしろかった。」

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